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ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。 ここでは、主に商業活動、同人活動の宣伝を行っております。
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 ライトノベルをガリガリと書かせていただいている身の上です。

メールはtamazo☆carrot.ocn.ne.jpまで。(SPAM対策で@を☆に変更しています。@に直してお送りください) 
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入稿はまだですが、できることはできるうちに!
ということで、原稿と表紙が完成したので、夏コミの新刊、予告編公開します。

lifehucker2.jpg










久々の100ページ強の中篇小説で、オフセットとしては、
五年半ぶりに表紙が巫女ではありません(笑)
自分でもビックリ!

また、後日改めて宣伝の書き込みをするとは思いますが、
スペース情報は以下のとおりになります。

8月15日(日) 東フ-23a 『玉造屋バキューン』

新刊 ライフハッカー真

■あらすじ
真(シン)はライフハッカーである。
ライフハッカーとはすなわち、現実を改竄する者。
ライフハッカー真は、彼にだけ見える存在フロイト先生に導かれ、
様々な困難をライフハックし、日々を懸命に生きるのだった!
ラブコメの皮をかぶったもっとアレなナニか中篇!

以下、予告編になります。
とりあえず、本編第一章を掲載していますが、変更などの可能性はありますので、
その旨、御了承ください。
なお、blogの仕様上、1つの書き込みでまとまらなかったので、
続きます。

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■予告編


ライフハック

1.作業を簡便かつ、効率よく行なうための技術群。

2.現実を効率よく生きるための技術。転じて、現実を改竄する 力。



Hack1 ライフ ハッカー 対 鉄拳女子高生

 

 

「ひぃぃぃぃっ! また出た! ライフハッカー! 助け て! 誰か、助けてーっ!!」

「待ってくれ! 俺は何もしない! 何もしないから! 本 当に何もしないから!」

 悲鳴を上げて逃げる彼女を俺は全力で追いかけていた。

 彼女の足が地面を蹴るたびに跳ねる髪は、肩のあたりで無 造作に切られている。揃えられてなどいないけど、それがむしろ、自然 な魅力を生み出しているように思えた。

 振り返った彼女の表情には明らかな怯えすら感じるけど、 今はしかたないのかもしれない。

どこか人を突き放すようなツンとした雰囲気の彼女だが、走ってい るせいで頬が上気した頬には朱の色が落ち、愛らしさすら感じさせられて、俺の胸はわずかに高鳴りを覚えた。

「止まってくれ! 俺は、君と話をしたいだけだ! 何もし ないから!」

「嫌よ! あんた、目が怖い! 本当に怖い! もう、音楽 かけないから! 音量落とすから」

「音楽の問題じゃないんだ! むしろ、君の寂しさを癒して あげたい! さあ!」

「いやあっ!!」

 逃げる彼女が、俺と同じ学校に通っていることはわかって いた。

 だけど、着ている制服は、うちの学校のセーラー服とは違 う。

 汚れひとつない白いブラウスと、その胸元にあしらわれた 赤いリボンが、鮮烈で、瑞々しくも愛らしい印象を与えてくる。黒と赤 のチェックのスカートからは健康的な長い脚が覗いている……というか、走っていると短めのスカートが翻るので、少し目のやり場に困る。

 だが、俺は見詰める。しかたないんだ! 見えそうだか ら!

 ともかく、彼女が別の学校の制服を着ているのは、転校生 だから、まだうちの学校の制服がないのだろう。

 彼女は走る。俺は追う。

 受け入れられなくても、諦めるわけにはいかない。

 俺はあの子の心の扉を叩き続ける。

「待てぇぇぇっ!!」

 叫びながら全力疾走する俺と、全速力で逃げる転校生の姿 に、道行く人が驚く。

 その中には登校中の、同じ高校の人間も混ざっている。

「た、助けて!!  山下くん!!」

 その中の一人、多分、顔見知りなんだろう生徒に、彼女は 涙目で駆け寄った。

「うわあっ!?  顔、怖っ!? い、いや、君は……転校生の……!?」

 転校生が声をかけた男子生徒は驚きつつも、俺の方を見 た。どこかで見た顔だから、同じ学年の生徒だろう。

「わわっ!?  君、よりにもよって、ライフハッカーに目をつけられたのか!?」

「あ、あいつ、あの変な生き物、ライフハッカーって、有名 なの!?」

「有名だよ! うちの学校でも、一、二を争うほどにタチが 悪いって……」

「ああ、俺は有名だ。現実の改竄者。真なる現実を見詰める 者。その名はライフハッカー! だから、ほら。俺の手を取って」

 走りながら伸ばした手を、彼女は思い切り払いのけた。

「ぎゃぁぁっ!!  怖いーっ!!」

 そして、助けを求めた生徒も置き去りにして、転校生は再 び走り出す。

「お、落ち着いて。転校生。ライフハッカーの対処法は僕ら も知ってるから、それを教えるから、待って!」

 その後をクラスメイトの生徒が追う。

「待て! 俺は君のために! 君のために来たんだ!!」

「誰も頼んでないーっ!」

「呼ばれずとも、その心が、悲しい胸のうずきが求める限 り、現れる。それがライフハッカーだ!」

 照れ隠しなのか、それとも、俺の手がまだ心に届かないか らか、必死で逃げていく転校生と、それを追うクラスメイトを、俺も 走って追いかける。

「待て、待つんだ! 頼む、待って……げほっ」

 前を走るあの子と、だんだん距離が開いてきた。

 叫びながら走っていたのが仇になったかもしれない。

 心臓が高く打ち鳴り、息が詰まって、足が痺れてくる。

 だけど、俺は諦めない。絶対に諦めない。

 あの子の手を掴んで、そして……。

 その心のドアを開く。俺たちは、分かり合える。助け合え るんだって、それを伝えたい。

「だからっ!!」

 そんな俺の手がいきなり横合いから掴まれた。

「おわっ!?」

 バテかけていたところ、突然のことにバランスを崩して、 足をもつれさせた俺は思い切り転んだ。

 蹴躓いて、身体がグルリと空中で一回転する。

 俺、すげえ! 空中で回転とか、体育の授業でもできたこ とないのに!

 そんなことを考えている間に、そのまま地面に叩きつけら れた。

「ごぶっ!?  え、え、ぐえぇぇ」

 全身が痛くて悶える。一瞬、意識が飛んだ気もする。

 本気でのた打ち回る俺を、見慣れた顔が見下ろしていた。

 手入れが行き届いていることが、見てわかる髪が朝の太陽 にキラキラと輝いている。薄い茶色は染めているものだろうし、波打つ 髪は軽くパーマを当てたものだろうけど、そこには不自然さはなかった。

 愛想笑いのひとつも浮かべない顔は、俺が言うのもなんだ けど綺麗だ。切れ長の目と、少し細いあご、まっすぐな眉はかわいいと いうよりも、凛々しさすら感じさせる。

「真(シン)、はたから見ていると、ほとんど犯罪だぞ」

「鈴(リン)。ここから見ていると、ほとんど見えそうだ ぞ」

 その子、帆之倉鈴(ほのぐらりん)は、転校生とは違う、 うちの学校本来のセーラー服を着ている。

鈴は俺よりも背が高い。

やや丈を詰めた濃紺のスカートからは、その細くもしなやかな脚が すらりと伸びていた。

そして、もちろん、ローアングルからなら、その中身が見えそうに なる。

「別に構わない」

「構えよ! 恥らっていいんだぜ!? 恥らうべきだろ! がふっ!?」

 勢いよく飛び起きて説教しようとしたが、息が詰まった。

 しまった。バテていて、もう限界だったのを忘れていたと 思ったが、もう遅い。

 うずくまって、吐いた。

 朝食を全部もどした。胃がグルグルなってる。

「朝から酷いものを見せるな」

「……何割かは、鈴のせいだけどな」

 恨みがましく睨むと、鈴が鞄からペットボトルを取り出 し、手渡してくれた。

「悪いな。助かるぜ」

 それで口をすすいで返す。 

「あ! いかん。洗って返すところか!?」

「後で捨てるから、別にいらない」

 もっともなことを言われた。まあ、ハンカチとか、お弁当 箱じゃないしなあ。

「ああ!? し まった! こんなことしてる間に、転校生が行ってしまう!」

 慌てて走り出そうとしたが、もう既にあの転校生の姿は見 えない。

 助けを求めたクラスメイトと一緒に去ってしまったんだろ う。

「いや……でも。これはこれで、結果オーライか」

 もともと、俺がしようとしていたことを考えれば、これで よかったのかもしれない。

 思い直し、満足感を覚えつつ、彼女たちが去った方を見 る。

「一応聞くが。真。お前、何をしていた? 見ている限り、 嫌がる女に粘着して、追いかけ回して怯えさせていたように見えたが」

「それはある意味で合っているが、ある意味では違う。運命 という奴は光と闇の二重奏だ」

「ある意味では合っているのか……。まあ、いつものこと か」

「そう。いつもどおりのライフハックだ」

 胸を張って俺は言う。

 そう、普通に見れば鈴の言うとおりかもしれないけど、俺 の行動にはきちんとした理由がある。

「事の発端は、隣に住んでいる転校生のあの子が、やけに大 きな音量で音楽をかけていたことだ」

「迷惑な女だ。私が精神的に追い込もうか? 死んだ方が幸 せなように」

「ダメだ! それはよくない! お前はすぐそういうことを 言う」

「言うというか、手っ取り早く済まそうと思ってるだけだ。 で、続きは?」

「ああ。だから、俺は抗議に行った。だけど、受け入れても らえなかった。その時、気づいたんだ。もしかして、転校生のあの子は 友達を求めていたんじゃないかと」

「すごい発想だが、いつもどおりだな」

「だから、俺は友達になろうとした。そのためなら、粘着も いとわない。ストーキングだって、やってみせる! まあ、それは大袈 裟過ぎるか?」

「ほとんど実行してたな」

「でも……。あれでよかったのかもしれない。俺に怯えて逃 げ回っていたことが、クラスメイトと話すきっかけになるんだ。これで 孤独から開放されるだろう」

「あの転校生がクラスで浮いているところは合ってるが。お 前の前向きさには、呆れとかを通り越す」

「あまり褒めるなよ。照れるぜ?」

「いいから、もう学校に行こう」

 そう言うと、鈴は俺を置いて歩き出そうとする。

 それに続こうとした時、俺は前から走ってくる巫女を目に した。

 緋色の袴をなびかせ、白衣の袖を揺らして全力疾走してく るのは、もう一度言うがどう見ても巫女だ。

 ただし、その袖も裾も山ごもりでもしてきたかのように擦 り切れ、千切れた生地がバタバタと揺れている。

 色々変わった人間がいるうちの学校と、この町だけど、巫 女装束姿で街中を歩いている人間はそんなに多くない。

しかも、首から大きな数珠をかけ、腰に荒縄を巻きつけた巫女は、 俺の知る限り、ただ一人。

 鈴が舌打ちするのが聞こえた。

「おはよう、嵐山。今日も巫女装束がかわいいな。そのアレ ンジ、まさに生きた神仏習合。似合ってるぜ」

「お!? 真じゃ ねえか! 誰が巫女だ、誰が!? てめえ、本当に殺すぜ!!」

 走っていた足を急停止させると、噛みつくような勢いで叫 ぶ。

その巫女は、これから学校だというのに、女の子にしては長身…… というか、俺よりも背が高い身体を、ある意味、スタイリッシュな巫女装束で包んでいる。

 嵐山という同級生の女の子は、いつだってこうだ。

 ただ、その顔は一般的に想像する巫女とは少し違う気がす る。

 髪は染めているのか、日に焼けているのか、少し茶色が かっている。だけど、鈴のものとは違って、背中まで伸ばした髪はあまり 手入れが行き届いているようには見えず、とこどころ跳ねているし、あからさまに痛んでいるところもある。

 清楚とは程遠い、むしろ、精悍と言っていいんじゃないか と思うほど、頼もしい強気な表情を浮かべた顔なんかは、健康的に日焼 けしていた。

 擦り切れた袖から見える腕には、しなやかな筋肉がついて いるし、顔と同じく、やっぱり日に焼けている。

 境内の掃除がそれほど大変な仕事とは思わなかった。

「だけど、嵐山はそういうところがかわいいと思うぜ」

「うるせえ! 相変わらずなこと言ってると、ぶっ殺す ぞ!」

 嵐山はおもむろに俺の胸倉を掴んだ。

 左手一本、恐ろしい力で持ち上げられ、息が詰まる。

 歯を剥き出し、まなじりを上げ、ギロリと俺を睨む目はま さに野生のゴリラ。いや、かわいいけど! そのギャップがいいけど!

 だけど、本当に息が詰まって、なんか、頭熱くなってき た!

 この嵐山という同級生の巫女はいつもこうだ。

「まさに嵐山……」

 俺は呼吸困難に陥りながらも、とりあえず間近な嵐山の匂 いをかぐ。

 鈴なんかと違って、彼女からは香水のような飾り気ある匂 いはしない。

 髪からは、健康的な汗の匂いと混じり、わずかにシャン プーの残り香がする。

「ああ、これぞ、まさに嵐山。まさに野生の巫女の匂い」

「嗅ぐんじゃねぇぇっ!!」

 嵐山が俺を手放す。

 同時に全力で振りかぶったその右拳が俺の身体の真中に叩 き込まれた。

 肉を打ち、骨を軋ませ、内臓に衝撃が達する。

「おごぺっ!!」

 声にもならない声を上げて吹き飛んだ俺は、そのまま後頭 部をブロック塀に叩きつけ、ずるずると崩れ落ちた。

 意識が飛ぶ。

「はっ!? 気絶 してた!? フロイト先生が、手招きしてた!?」

 戻って来た。

「フロイト先生は故人だからな」

 鈴がポツリと言う。

「違う! フロイト先生はそんな存在じゃない。生や死の概 念では計ることのできない……いや、今、話すべきはフロイト先生の輝 かしい業績と、その真の姿じゃなくて」

 尻の埃を叩いて立ち上がり、俺は自分を殴り飛ばした巫女 にニヤリと笑いかける。

「おはよう。嵐山。今日も相変わらず巫女らしからぬ豪腕」

 そう言って立ち上がろうとして、そのまま膝から崩れ落ち た。

「へへ……。さっきの拳。そうとう効いたぜ。足に力が入ら ない……」

「……悪い。ちょっとやり過ぎた。正直、殺す気でいった」

「だが、そんなもので息の根止められる俺じゃないぜ」

 ガタガタと震える膝。それを堪えながら、ブロック塀を支 えにして、よろよろと立ち上がる。

「……まあいいか。別に殴っても死ぬもんじゃなし。という か、なんで、鈴がこっちにいるんだ? お前、家の方向、真逆だろ?」

「馴れ馴れしく、名前で呼ぶな」

「じゃあ、帆之倉。なんで、こっちにいるんだ? 遠回りだ ろ?」

「お前には関係ない」

「てめえっ!!  下手に出てりゃ、調子に乗りやがって!」

 嵐山が青筋を立てる。

「鈴がこっちに回ってくるのはいつものことじゃないか。な んか、こっちに寄るところあるんだろ?」

 俺が言うと、鈴は素っ気なく頷いた。

「まあ、それなら、それでいいんだが……あぁっ!?」

 嵐山がいきなり声を上げる。

「な、なんだ!?  ビックリした!」

「こんなことしてる場合じゃねえよ! なんか、うちのクラ スの奴が絡まれてるらしい」

「うちのクラスの? 誰が?」

「女子に碓氷(うすい)っているだろ? そいつが絡まれて るって、土田の奴が言ってたんだよ。野郎! 碓氷が連れていかれるの 見ておいて、逃げてきたんだぜ! あの臆病者が! 殺すか!?」

「そうか。じゃあ、真。そろそろ学校に行こう」

「鈴、てめぇっ!!」

「名前で呼ぶなって言ってるのがわからないのか?」

 鈴の胸倉をつかもうと、嵐山が伸ばした手が空を切る。

 鈴は一歩下がり、冷たい目で嵐山を見据えていた。

「鈴も嵐山も喧嘩してる場合か! それなら、俺をそこに案 内してくれ。嵐山。助けに行かないと」

「てめえはそういう時だけは物分りがいいな! ついて来 い!」

 言うと同時に嵐山が駆け出す。

 巫女の彼女が履いているのは、スニーカーではなく、草履 だ。

 それにも関わらず、走る速度は恐ろしく速い。

 それに遅れないように、俺も本気で走る。

「行く必要ないだろ? 同じクラスでも、碓氷とはほとんど 話したことがないはずだ」

 鈴が俺の横に並んで言う。どうでもいいけど、俺は必死で 走ってるのに、鈴は顔色ひとつ変えていない。理不尽だ。

「いいや! 必要はある。同じクラスの奴がそんな目にあっ てるなら助けるだろ。それに……そういう非道をしている奴らにも、俺 はやらなきゃいけないことがあるんだ!」

 溜息をつくだけで、鈴はそれ以上何も言わない。

 だけど、一緒に走ってくれていた。

 鈴はいつもこうだ。まあ、照れ屋なんだな。

「こっちだ! 多分」 

「大雑把だな!」

 嵐山が路地に飛び込み、俺たちもそれに続いた。

 路地の少し奥から、男の怒声と、女の子の怯えて上擦った 声が聞こえてきた。

 幸い正解だったらしい。

 一目見れば理解できてしまう光景が広がっていた。

新刊『ライフハッカー真』予告編②に続く。

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