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入稿完了!
ということで、冬コミの新刊『巫女さんとイチャイチャするだけの話でも別にいいじゃないか!』が、
完成しましたので、予告編掲載しようと思います。
今回は、無事40ページの短編に収めることができました!
スペースの方は、先日も告知しましたが、
12月30日(水曜日) 東地区 "R" ブロック 54a
『玉造屋バキューン』
になります。久々の二日目なので、御注意ください。
そんなわけで、以下、あらすじと予告編になります。
予告編は本編の冒頭部分となりますが、都合により、変更される可能性もありますので、
御了承ください。
……しかし、こんな酷いあらすじ書いたの、初めてだ!
正直、あらすじは必要ない!
タイトルそのままのお話です。
初々しいカップル(彼女は巫女さん)が、初々しく健全に
イチャイチャとします。以上!
■予告編
神社が僕の目に入った。
市内の大きな神社と比較するとそれほどでもないけど、この辺りでは大きめの神社ということもあって、正月なんかに友達と初詣に来たこともある。
僕は下校の道筋を外れ、そこに向かっていた。
鼓動が早くなっているのは、こうして自転車を走らせているからじゃない。
自然と綻びそうになる唇を引き締めようとするけど、やっぱりダメだった。
僕は今、幸せだ。
◆ ◆ ◆
窓から差し込む夕日が教室を鮮やかな赤い色に染めていく。
「あの……。僕、その、迷惑かもしれないけど。でも、気持ちを伝えたくて。だから、えっと、つまり、僕は……いきなりなんだけど。……す、好きなんだ」
そんな中で、僕は告白した。
「君のことが好きなんだ!」
しどろもどろで、要領も得ていなくて、結局、何の装飾もできていない、かっこ悪い告白だった。
僕の好きな子がすぐ目の前にいる。
同い年なのに、少し幼く見える顔が驚きに染まっていた。
大きめの目を丸く見開く。その頬が夕日の色以上に赤くなっていく。
彼女が恥ずかしげにうつむくと、背中に届く黒髪がさらりと揺れた。
小さな唇が何か呟いたけど、よく聞こえない。
うつむいたまま、彼女は上目遣いに僕を見詰める。
黒い瞳が潤んでいる。そんな仕草に、僕の心臓は大きく跳ね上がった。
「……たしも」
もう一度、繰り返された彼女の言葉が辛うじて聞こえた。
「わたしも、ね」
自分の言葉を噛み締めるように、小さな笑みを浮かべて、彼女は言う。
僕は頭に血が昇ってきたみたいで、頬も耳も全てが熱くなってきていた。背筋をゾクリとした何かが駆け抜けて、自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる。
「わたしも、君のこと好きだよ」
はっきりと、彼女はそう言った。
「だから、ありがとう。とても嬉しい……」
「あ、こ、こっちこそ」
正直、振られるんじゃないかと思っていた。
ずっと傍で彼女を見ているだけでもよかったはずが、それだけじゃ我慢できなくなって、胸がいっぱいで、彼女のことしか考えることができなくなって、どうしようもなく、勝算なんて考えずに、こうして告白してしまっただけだった。
「ダ、ダメかと思ってた……。本当に、僕で大丈夫?」
だから、僕はもう何を言っていいのかわからなかった。
考えられる限りで、最良の結果のはずなのに、うろたえてしまっている。
ようやく顔を上げ、そんな僕を見て、彼女はニコリと笑う。
目尻に小さく涙を浮かべて、頬を朱に染めた彼女の表情が、僕の目に焼きつく。
ああ。僕は多分、この日のこの瞬間を忘れることはできないだろう。
そんなことを思った。
◆ ◆ ◆
数日が過ぎたけど、まだ実感は湧かなかった。
僕と、彼女は付き合っている。恋人同士なんだと思っても自信がない。
考えてみれば当たり前のことなんだろうけど、劇的な変化が、向こうから勝手にやってくるわけはなかった。
「的外れだってことはわかってるんだけど……」
自転車を停めた僕の前に、石造りの立派な鳥居がある。
『三沢八幡宮』というのがこの神社の名前で、八幡様とか、八幡とか、近所では適当に呼ばれている。
何のことはない。僕は、神頼みに来ていた。
彼女と仲良くできるように。
僕みたいなのが、愛想をつかされてしまわないように。
そして、何よりも、あの日が夢じゃないように。
実際、神様のことも神社のこともわからないので、恋愛関係を、ここに神頼みに来ているのが正しいのかどうかもわからないのだけど、とにかく、僕は鳥居を潜る。
初詣の時とは違って、人気のない境内はやけに広く感じた。
よく考えれば、僕は参拝の作法とかも全然知らない。
鳥居の傍に手を洗うための水が溜められた石の鉢みたいなものなんかがあるけど、正確にはどう使うものなんだろうか?
そんなことを思いつつも、正月に友達と来た時にやったみたいに、柄杓で水をすくって手を洗う。
間違ったことをしているんじゃないかと心配になって、少しキョロキョロとしてしまった。
ともかく、僕は神様が祭られている建物……本殿? 拝殿? どっちが正しかったか思い出せないけど、とにかく、そこへ歩き出した。
境内の端の方に、板張りの舞台みたいな場所もあるけど、あれはさすがにお参りする場所じゃないだろう。
とりあえず、お賽銭を入れて、鈴を鳴らして、あとは手を合わせるんだということは僕にもわかる。いや、多分……。それでいいんだろうと思う。
小銭を取り出そうと、ポケットを探り、ふと見ると、巫女さんが僕の前を横切っていく。
こんな平日にも巫女さんがいるぐらいの神社だったんだなーと思いながら、怪しい人だと思われないようにと、軽く頭を下げようとした。
そんな中途半端な格好のまま、僕は硬直する。
「「……え?」」
僕と巫女さんは全く同じ声を上げていた。
「どうして、ここに?」
そう尋ねたのは巫女さんだった。
僕も同じことを聞きたかったし、何よりもその顔を見間違えるわけはなかった。
いつも下ろしている黒髪は今、後ろで束ねられている。
見慣れたセーラー服とは違って、着ているものはもちろん、巫女装束だ。汚れひとつない白い着物と、やけに鮮やかな赤い袴が彼女には凄く似合っている。
掃除の途中だったのか、その手には箒とチリトリが握られていた。
「み、巫女さん?」
「え、あ……! うん。み、箕子(みこ)……だけど」
彼女は恥ずかしげに眉を下げた。
「な、名前で呼ばれるのって、ちょっと恥ずかしいね」
そして、はにかんだ。
そういうつもりで言ったわけじゃなかったのだけど、正直に否定するわけにもいかず、僕はうめくことしかできなかった。
ただひとつわかったことがある。
僕の彼女、箕子(みこ)さんは巫女さんだった。