ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。
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遅くなりましたが、冬コミ参戦します。
スペースは
12月29日(土) 東R-23a『玉造屋バキューン』
です。
今回の新刊はコピー誌『否! 妖怪はあまり変態じゃないです』です。
秋の関西コミティアで出した『巫女さんはパンツが般若で狂った世界を救う』や、他の既刊も持ち込みますので、よろしければお越しください。
以下、『否! 妖怪はあまり変態じゃないです』の予告編になります。
いつもの如く、冒頭部分の公開です。
■あらすじ
深夜の廃病院を訪れていた彼は、そこで偶然、妖怪の会議に出くわし、巻き込まれてしまう。
「妖怪が性犯罪とか猥褻容疑で捕まらないようにする会議ー!」
はたして、彼は無事生きて帰ることができるのか!?
なんだか、そんな妖怪コメディ。
スペースは
12月29日(土) 東R-23a『玉造屋バキューン』
です。
今回の新刊はコピー誌『否! 妖怪はあまり変態じゃないです』です。
秋の関西コミティアで出した『巫女さんはパンツが般若で狂った世界を救う』や、他の既刊も持ち込みますので、よろしければお越しください。
以下、『否! 妖怪はあまり変態じゃないです』の予告編になります。
いつもの如く、冒頭部分の公開です。
■あらすじ
深夜の廃病院を訪れていた彼は、そこで偶然、妖怪の会議に出くわし、巻き込まれてしまう。
「妖怪が性犯罪とか猥褻容疑で捕まらないようにする会議ー!」
はたして、彼は無事生きて帰ることができるのか!?
なんだか、そんな妖怪コメディ。
■予告編
大学の研究の一環……と言えば、聞こえはいいのだけど、半ば趣味のフィールドワークと言う方が多分正しい。
都市伝説の舞台探訪。
要するに、ただの怪奇スポット巡り。
ボクは某市の郊外にある廃ビルを訪れていた。
もともとは病院だったという、定番だが、曰く付きの建物だ。
敷地が広すぎるせいで、人家は遠く、人の気配もない。
どこからか差し込む月明かりが、埃の溜まった床を照らしていた。
ボクの足音だけが薄闇の中に響く。
普通、こういう廃病院にありがちな噂は、幽霊が出るとか、そういうものだ。
たくさんの人の死を見送ってきた建物なのだから、それが妥当だとも思う。
だけど、この廃病院にまつわる噂は、少し違っていた。
人でも、動物でもない妙な生き物を見た。
それらが人の言葉を話しているのを聞いた。
曖昧な話ながらも、他の廃病院とは少し違う傾向にある。
だから、ボクは興味を持って、ここに来た。
実際のところ、怪現象なんて起こるはずはない。
幽霊も見たことがないのだから、信じることができるはずもなし。
ただ、他の場所と、この病院で、伝わってくる話が違うのはどういうことなんだろうか?
その原因を見つけることができれば、都市伝説が構築されるメカニズムを解くための助けになるんじゃないか。
そんなことを思いつつ、ボクは足を止めた。
「来るなら、女の子と来たかった」
ボクは溜息をつく。
「なんで、一人で来たんだろ。誰か誘えば……。いや、『廃病院行こうぜ!』は、誘い文句として、ないなー」
とはいえ、憧れてしまう。
こんなところに、女の子と二人で来る。
この病院に伝わる都市伝説を思い出してしまって、かすかな物音に慄く彼女はボクの手を握る。
『……今だけだから』そう言って、潤んだ瞳でボクを見上げる。
『ふふ。こういうところ、初めてかい?』
ボクが余裕をもって返せば、彼女の胸はキュンと鳴る。
自然と近づく唇と唇……そして!
「あー。彼女欲しいなー」
特にいいところもなく、女の子に嫌われるわけじゃないけど、イイ友達以上にはなれない。
他の連中に彼女ができても、ボクにはそんな浮いた話なんて、欠片もない。
「どうして、ボクはこんなところに一人で来てるんだ。何がしたいんだよ」
要するに趣味なんだけど。
なんで、一人で夜中の廃病院攻めてるんだろ……。
昔から妖怪なんかが好きで、妖怪図鑑を読み込んで、気づけばこんなことになっている。
妖怪図鑑が人生の役に立つのか?
否! デカルトでも読んでおけばモテたかな。
そんな後悔を感じていたボクは、ふと、ドアが開いたままの部屋を目にした。
他の場所はたいてい閉まっているのに、ここだけ開いている。
不思議に思って、足を踏み入れる。
そこは広い部屋だった。
会議室なのか、長いテーブルが並んでいて、その周りには椅子がある。
他の部屋のものはたいてい、全て持ち出されてしまっているのに、この部屋だけ、テーブルが残っている。
それ以外にもなんとなく違和感を覚える。
「埃っぽくないんだな。この部屋」
足元を見れば、ここだけ埃が積もっていない。
まるで今もまだ使われているような部屋だった。
「ん?」
なんとなく不気味なものを感じていたボクは、かすかな物音を聞いた。
ボクが入って来た病院の入り口の方から、足音がする。
一つだけじゃない。
そして、やけに不規則というか、同じような足音だけじゃない。
どこか足音が不揃いだ。
「なんだ?」
部屋の入口に佇んで、来た方を見る。
耳を澄ませれば、足音だけじゃなくて、声まで聞こえてくる。
「嫌だな。近所の不良とかかな」
はっきり言って、腕っぷしは強くない。
喧嘩で勝ったこともないし、そんな連中と顔を合わせることもゴメンこうむりたい。
ボクは隠れることができそうな場所を探す。
ちょうどうまい具合に天井の一部が破れていた。さすが廃病院。
テーブルと、部屋の隅のロッカーを伝えば、そこに入り込むことができそうだ。
そこまでする必要があるのか? とは、思ったけど、とりあえず、潜んでみることにした。
こういうのも、女の子と一緒なら、身体が密着して、お互いの体温が伝わって……とかありそうで。いや、そうじゃなくて。
ともかく、ボクは天井裏に入り込んだ。
当たり前だけど、埃臭い。
汚れていい服を着てきたけど、これはひどいことになってる。髪の毛にもなんかついた。
やらなければよかったと思いつつも、こうやって天井裏なんかに潜んでいるとしょうけらという妖怪を思い出す。多分、趣味で妖怪関係の資料を漁り過ぎたせいだ。
しょうけらは、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に描かれた妖怪で、何をするのかはよくわからないけど、天窓から家を覗き込んでいる。
しょうけらの真似をするなら、こんな廃病院で埃臭い屋根裏に潜り込むよりも、どこか女の子の部屋をこっそり覗く方が……。
いやいや、普通に考えて犯罪だ。おまわり呼ばれる。いけない!
そんな葛藤をしてるうちに、足音と声は近づいて来る。
よりにもよって、ボクが天井裏に潜んでいる部屋に、そいつらは入って来た。
「……っ!?」
ボクは思わず声を出しそうになった。
辛うじて口を押えたので、鼻から息が抜けただけで済んだ。
でも、ボクの眼下に、部屋の中に入って来たのは、信じがたいものだった。
しょうけらがどうしたとか考えてる場合じゃなかった。
そこには百鬼夜行もかくやという光景が広がっていた。
部屋に入って来たのは、明らかに自然の動物とは言いがたい……というか、水木しげる大先生が描いていそうな、異形の生き物たちだった。
一言で言えば、本物の妖怪に見える。
子供の頃から妖怪図鑑とゲゲゲの鬼太郎で慣れ親しんだ空想の産物がいた。
一瞬、映画か何かの撮影かと思ったけど、特殊メイクにしては精巧過ぎるし、カメラもない。
ここは水木しげるロードじゃないんだ。
長く伸びた舌は、あんなに自在に動かないし、あの大きな狼みたいな生き物はCGじゃない。
でも、露骨に河童らしいものがいるのには、ちょっと吹き出しそうになった。
河童て。
数こそ多くはないけど、やけに存在感のある妖怪の一群。
そんな連中の中に、ただ一人、人間に見える女の人がいた。
男もののスーツに身を包んだ長い黒髪の女性だ。
彼女は化物たちの中を平然と歩き、そこにあったホワイトボードを背に立つ。
化物たちの方へ振り向いた女性の顔は、笑みこそないけど、綺麗だった。
白い肌が薄闇に浮かぶ。
切れ長の目はゾクゾクするほど蠱惑的だった。
「いつまでその姿でいるつもりだ」
女性が言った。
ボクは目を見開き、何度か瞬きして、そのあと、目を擦ってみた。
嘘みたいだった。
眼下に見えるものが一変していた。
化物たちの姿は消えていた。
そこにいたのは、妖怪なんかじゃなくて、女の子たちだった。
さっきまで女の子は、スーツの女性だけだと思っていたのに、今、会議室には彼女を含めて六人の女の子がいる。
ボクは何を見ていたんだ……。
自分の目よりも、精神を疑ってしまう。
女の子が妖怪に見えるとか、どんな心理状態なんだ。
女の子と付き合うこともなく二十年以上生きてしまったせいで、女性への苦手意識のあまり、女の子が妖怪に見える病にかかってしまったんだろうか。
ありえる! これがDTの力か……。
いや、ない。ありえない。
また葛藤していると、スーツの女性が口を開いた。
「我々が集まったのは他でもない」
彼女は背後にあるホワイトボードをバン! と叩いた。
他の女の子たちが真剣な顔で、彼女を見る。
「我々は重大な危機に瀕している。そして、それは、個人の力で解決できるほど小さな問題ではない」
彼女の口調は真剣だった。
他の女の子たちも頷いている。
何が起きているのかまだわからないけど、深刻な事態なのは、ボクにも理解できた。
息を殺し、彼女たちをじっと見る。
「では、始める」
スーツの女性が宣言する。
「妖怪が性犯罪とか猥褻容疑で捕まらないようにする会議ー!」
ボクは漫画みたいにズルッと、こけた。
お前ら、何、気にしてるんだよ!?
と、つっこみそうになったけど、それを堪えることができただけ、偉いと思う。
褒めてもらってもいい。
だけど、こけたので穴からずり落ちた。
いつの間にか、身を乗り出していたのもまずかった。
ボクはロッカーにぶつかり、派手な音を立てながら床に叩きつけられた。
痛い。
でも、身体だけじゃなくて、視線も痛かった。
スーツの女性がこっちを見ている。
切れ長の目が細められると、睨まれてるように見える。というか、多分、睨まれている。
他の女の子たちも立ち上がっていた。
「……あなたは?」
低い声で、女性が尋ねる。
「あー。え、えっと」
「もしや……。人間」
ざわりと、声が上がる。
やった! 女の子がみんなボクに注目してる!
喜びたいところだったけど、なんか、そういう状況じゃなかった。
女の子たちから、殺気めいたものまで漂ってくる。
「人間が何故」「今のを聞かれたの?」
そもそも、人のこと見て、人間とか言うのおかしい。
それじゃ、まるで、この娘たちが人間じゃないみたいだ。
いや、確かにボクは百鬼夜行さながらの姿を見ていたのだけど、あれは、きっと気のせいで……。
「や、やだなー。ボク、しょうけらですよ」
とりあえず、言ってみた。
「……なんだ。しょうけらか。しょうけらならしかたないな」
スーツ姿の女の人はあっさり納得した。
他の子たちも、興味をなくしたかのように「なーんだ。しょうけらかー」「それなら、天井裏から覗いててもおかしくない」と、ホワイトボードに視線を戻す。
「早く座れ。始めるぞ」
「は、はい」
言われるままに、ボクは席についた。
大学の研究の一環……と言えば、聞こえはいいのだけど、半ば趣味のフィールドワークと言う方が多分正しい。
都市伝説の舞台探訪。
要するに、ただの怪奇スポット巡り。
ボクは某市の郊外にある廃ビルを訪れていた。
もともとは病院だったという、定番だが、曰く付きの建物だ。
敷地が広すぎるせいで、人家は遠く、人の気配もない。
どこからか差し込む月明かりが、埃の溜まった床を照らしていた。
ボクの足音だけが薄闇の中に響く。
普通、こういう廃病院にありがちな噂は、幽霊が出るとか、そういうものだ。
たくさんの人の死を見送ってきた建物なのだから、それが妥当だとも思う。
だけど、この廃病院にまつわる噂は、少し違っていた。
人でも、動物でもない妙な生き物を見た。
それらが人の言葉を話しているのを聞いた。
曖昧な話ながらも、他の廃病院とは少し違う傾向にある。
だから、ボクは興味を持って、ここに来た。
実際のところ、怪現象なんて起こるはずはない。
幽霊も見たことがないのだから、信じることができるはずもなし。
ただ、他の場所と、この病院で、伝わってくる話が違うのはどういうことなんだろうか?
その原因を見つけることができれば、都市伝説が構築されるメカニズムを解くための助けになるんじゃないか。
そんなことを思いつつ、ボクは足を止めた。
「来るなら、女の子と来たかった」
ボクは溜息をつく。
「なんで、一人で来たんだろ。誰か誘えば……。いや、『廃病院行こうぜ!』は、誘い文句として、ないなー」
とはいえ、憧れてしまう。
こんなところに、女の子と二人で来る。
この病院に伝わる都市伝説を思い出してしまって、かすかな物音に慄く彼女はボクの手を握る。
『……今だけだから』そう言って、潤んだ瞳でボクを見上げる。
『ふふ。こういうところ、初めてかい?』
ボクが余裕をもって返せば、彼女の胸はキュンと鳴る。
自然と近づく唇と唇……そして!
「あー。彼女欲しいなー」
特にいいところもなく、女の子に嫌われるわけじゃないけど、イイ友達以上にはなれない。
他の連中に彼女ができても、ボクにはそんな浮いた話なんて、欠片もない。
「どうして、ボクはこんなところに一人で来てるんだ。何がしたいんだよ」
要するに趣味なんだけど。
なんで、一人で夜中の廃病院攻めてるんだろ……。
昔から妖怪なんかが好きで、妖怪図鑑を読み込んで、気づけばこんなことになっている。
妖怪図鑑が人生の役に立つのか?
否! デカルトでも読んでおけばモテたかな。
そんな後悔を感じていたボクは、ふと、ドアが開いたままの部屋を目にした。
他の場所はたいてい閉まっているのに、ここだけ開いている。
不思議に思って、足を踏み入れる。
そこは広い部屋だった。
会議室なのか、長いテーブルが並んでいて、その周りには椅子がある。
他の部屋のものはたいてい、全て持ち出されてしまっているのに、この部屋だけ、テーブルが残っている。
それ以外にもなんとなく違和感を覚える。
「埃っぽくないんだな。この部屋」
足元を見れば、ここだけ埃が積もっていない。
まるで今もまだ使われているような部屋だった。
「ん?」
なんとなく不気味なものを感じていたボクは、かすかな物音を聞いた。
ボクが入って来た病院の入り口の方から、足音がする。
一つだけじゃない。
そして、やけに不規則というか、同じような足音だけじゃない。
どこか足音が不揃いだ。
「なんだ?」
部屋の入口に佇んで、来た方を見る。
耳を澄ませれば、足音だけじゃなくて、声まで聞こえてくる。
「嫌だな。近所の不良とかかな」
はっきり言って、腕っぷしは強くない。
喧嘩で勝ったこともないし、そんな連中と顔を合わせることもゴメンこうむりたい。
ボクは隠れることができそうな場所を探す。
ちょうどうまい具合に天井の一部が破れていた。さすが廃病院。
テーブルと、部屋の隅のロッカーを伝えば、そこに入り込むことができそうだ。
そこまでする必要があるのか? とは、思ったけど、とりあえず、潜んでみることにした。
こういうのも、女の子と一緒なら、身体が密着して、お互いの体温が伝わって……とかありそうで。いや、そうじゃなくて。
ともかく、ボクは天井裏に入り込んだ。
当たり前だけど、埃臭い。
汚れていい服を着てきたけど、これはひどいことになってる。髪の毛にもなんかついた。
やらなければよかったと思いつつも、こうやって天井裏なんかに潜んでいるとしょうけらという妖怪を思い出す。多分、趣味で妖怪関係の資料を漁り過ぎたせいだ。
しょうけらは、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に描かれた妖怪で、何をするのかはよくわからないけど、天窓から家を覗き込んでいる。
しょうけらの真似をするなら、こんな廃病院で埃臭い屋根裏に潜り込むよりも、どこか女の子の部屋をこっそり覗く方が……。
いやいや、普通に考えて犯罪だ。おまわり呼ばれる。いけない!
そんな葛藤をしてるうちに、足音と声は近づいて来る。
よりにもよって、ボクが天井裏に潜んでいる部屋に、そいつらは入って来た。
「……っ!?」
ボクは思わず声を出しそうになった。
辛うじて口を押えたので、鼻から息が抜けただけで済んだ。
でも、ボクの眼下に、部屋の中に入って来たのは、信じがたいものだった。
しょうけらがどうしたとか考えてる場合じゃなかった。
そこには百鬼夜行もかくやという光景が広がっていた。
部屋に入って来たのは、明らかに自然の動物とは言いがたい……というか、水木しげる大先生が描いていそうな、異形の生き物たちだった。
一言で言えば、本物の妖怪に見える。
子供の頃から妖怪図鑑とゲゲゲの鬼太郎で慣れ親しんだ空想の産物がいた。
一瞬、映画か何かの撮影かと思ったけど、特殊メイクにしては精巧過ぎるし、カメラもない。
ここは水木しげるロードじゃないんだ。
長く伸びた舌は、あんなに自在に動かないし、あの大きな狼みたいな生き物はCGじゃない。
でも、露骨に河童らしいものがいるのには、ちょっと吹き出しそうになった。
河童て。
数こそ多くはないけど、やけに存在感のある妖怪の一群。
そんな連中の中に、ただ一人、人間に見える女の人がいた。
男もののスーツに身を包んだ長い黒髪の女性だ。
彼女は化物たちの中を平然と歩き、そこにあったホワイトボードを背に立つ。
化物たちの方へ振り向いた女性の顔は、笑みこそないけど、綺麗だった。
白い肌が薄闇に浮かぶ。
切れ長の目はゾクゾクするほど蠱惑的だった。
「いつまでその姿でいるつもりだ」
女性が言った。
ボクは目を見開き、何度か瞬きして、そのあと、目を擦ってみた。
嘘みたいだった。
眼下に見えるものが一変していた。
化物たちの姿は消えていた。
そこにいたのは、妖怪なんかじゃなくて、女の子たちだった。
さっきまで女の子は、スーツの女性だけだと思っていたのに、今、会議室には彼女を含めて六人の女の子がいる。
ボクは何を見ていたんだ……。
自分の目よりも、精神を疑ってしまう。
女の子が妖怪に見えるとか、どんな心理状態なんだ。
女の子と付き合うこともなく二十年以上生きてしまったせいで、女性への苦手意識のあまり、女の子が妖怪に見える病にかかってしまったんだろうか。
ありえる! これがDTの力か……。
いや、ない。ありえない。
また葛藤していると、スーツの女性が口を開いた。
「我々が集まったのは他でもない」
彼女は背後にあるホワイトボードをバン! と叩いた。
他の女の子たちが真剣な顔で、彼女を見る。
「我々は重大な危機に瀕している。そして、それは、個人の力で解決できるほど小さな問題ではない」
彼女の口調は真剣だった。
他の女の子たちも頷いている。
何が起きているのかまだわからないけど、深刻な事態なのは、ボクにも理解できた。
息を殺し、彼女たちをじっと見る。
「では、始める」
スーツの女性が宣言する。
「妖怪が性犯罪とか猥褻容疑で捕まらないようにする会議ー!」
ボクは漫画みたいにズルッと、こけた。
お前ら、何、気にしてるんだよ!?
と、つっこみそうになったけど、それを堪えることができただけ、偉いと思う。
褒めてもらってもいい。
だけど、こけたので穴からずり落ちた。
いつの間にか、身を乗り出していたのもまずかった。
ボクはロッカーにぶつかり、派手な音を立てながら床に叩きつけられた。
痛い。
でも、身体だけじゃなくて、視線も痛かった。
スーツの女性がこっちを見ている。
切れ長の目が細められると、睨まれてるように見える。というか、多分、睨まれている。
他の女の子たちも立ち上がっていた。
「……あなたは?」
低い声で、女性が尋ねる。
「あー。え、えっと」
「もしや……。人間」
ざわりと、声が上がる。
やった! 女の子がみんなボクに注目してる!
喜びたいところだったけど、なんか、そういう状況じゃなかった。
女の子たちから、殺気めいたものまで漂ってくる。
「人間が何故」「今のを聞かれたの?」
そもそも、人のこと見て、人間とか言うのおかしい。
それじゃ、まるで、この娘たちが人間じゃないみたいだ。
いや、確かにボクは百鬼夜行さながらの姿を見ていたのだけど、あれは、きっと気のせいで……。
「や、やだなー。ボク、しょうけらですよ」
とりあえず、言ってみた。
「……なんだ。しょうけらか。しょうけらならしかたないな」
スーツ姿の女の人はあっさり納得した。
他の子たちも、興味をなくしたかのように「なーんだ。しょうけらかー」「それなら、天井裏から覗いててもおかしくない」と、ホワイトボードに視線を戻す。
「早く座れ。始めるぞ」
「は、はい」
言われるままに、ボクは席についた。
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