ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。
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告知、遅くなりましたが、
5月13日(日)の『関西コミティア40』参加します。
スペースは
H-18 玉造屋バキューン
になります。
新刊はコピー誌
『ライフハックによって、現実と想像の境界を超越せし、空想部活動 それすなわち、LOVE(ラ部)』
ええ! 長文タイトルです!
今、コピペしつつ、使い勝手悪いなー! と後悔していますが、それはそれ!
既刊『ライフハッカー真』と同じく、ライフハックを扱ったお話ですが、
一般的ライフハックとは別物なので怒られます。
お暇な方はぜひぜひお越しください。
なお、今回、冬コミの新刊だった『悪いな! この巫女はゴリラなんだ』は、
品切れとなっており、ありません。申し訳ありません。
以下、今回の新刊のあらすじ、冒頭部分抜粋の予告編になります。
ご覧いただければ幸いです。
■あらすじ
「ハーレムとかできると思ってたんだけどなー」
そんなことを言いながら、高校生活を無為に過ごしていたボクは、
先輩――部長に、ある部活に誘われる。
『LOVE(ラ部)』という謎の部活。
ボクが部室に入った途端、ハーレム状態になった上、
触手まで現れる。
『LOVE』とは? そして、部長の言うライフハックとは?
多分、ラブコメっぽい短編です。
5月13日(日)の『関西コミティア40』参加します。
スペースは
H-18 玉造屋バキューン
になります。
新刊はコピー誌
『ライフハックによって、現実と想像の境界を超越せし、空想部活動 それすなわち、LOVE(ラ部)』
ええ! 長文タイトルです!
今、コピペしつつ、使い勝手悪いなー! と後悔していますが、それはそれ!
既刊『ライフハッカー真』と同じく、ライフハックを扱ったお話ですが、
一般的ライフハックとは別物なので怒られます。
お暇な方はぜひぜひお越しください。
なお、今回、冬コミの新刊だった『悪いな! この巫女はゴリラなんだ』は、
品切れとなっており、ありません。申し訳ありません。
以下、今回の新刊のあらすじ、冒頭部分抜粋の予告編になります。
ご覧いただければ幸いです。
■あらすじ
「ハーレムとかできると思ってたんだけどなー」
そんなことを言いながら、高校生活を無為に過ごしていたボクは、
先輩――部長に、ある部活に誘われる。
『LOVE(ラ部)』という謎の部活。
ボクが部室に入った途端、ハーレム状態になった上、
触手まで現れる。
『LOVE』とは? そして、部長の言うライフハックとは?
多分、ラブコメっぽい短編です。
■予告篇
「ハーレムとかできると思ってたんだけどなー」
なんて、本気で思ってるわけもないことを、ボクはしみじみ呟いた。
高校に入学したところで、何人もの女の子が突然、ボクのことを好きになってしまって、囲まれて、女の子同士でボクの奪い合いをしたり、家に押しかけられたり、人気のない体育倉庫で迫られたり、なんかわけありの子だったり、毎日が大変で、ボクはいつも文句ばかり言うけど、本当はちょっと嬉しかったりとか……。
そんなこと起きるはずもなかった。
中学の頃、友達がほとんどいなくて、女の子ともまともに話したことなんてなくて、学校とか行くの嫌もだったボクが、高校に入って唐突にモテたりとか、あるはずない。
高校に入ったら、何か変わる。
そういうのが、妄想の産物だって、痛感したというか、当たり前のことに気づいただけだった。
先月まで、その中学生だったんだし、こんな短期間で何か変わるわけがない。
「はぁ……」
そんな春先の放課後、ボクは何をするでもなく、学校の中庭のベンチに座って、溜息をついていた。
まっすぐ家に帰ればいいんだけど、帰ったところで何もすることはないし、でも、部活とかは大変そうで入る気にもならない。
遠くから聞こえる体育会系の部活のかけ声を聞いて、そんなことを思う。
そもそも、部活に入ったところで、運動神経も芸術センスもないボクが、すごいことできるわけないし、女の子にモテるわけもないんだ。
別に、女の子にモテるために部活するわけじゃないだろうけど、でも、モテたいし。
「帰ろ」
ボクは鞄を提げて立ち上がった。
「君、ちょっといい?」
聞こえた声に、ボクは首を向けた。
女の子の声だったので、一瞬期待したけど、よく考えたら、ボクに話しかけてくれる女の子なんて、クラスにもいない。
意識し過ぎて、全然関係ない声に反応しちゃったみたいでバツが悪い。
ボクはそっと顔を背けると、たまたまそっちを見ただけなんだよー……と、いうふりをして、そのまま立ち去ろうとする。
「君、君。そこの君」
「え?」
ボクはもう一度、声の方を見た。
「そうそう。君、君」
その女の子は頷いた。
「君に用事があったんだ」
女の子は言う。
でも、ボクは応えることができなかった。
その子はかわいかった。
腰にまで届くんじゃないかという長くてまっすぐな黒髪。
光なんて全部吸い込んでしまいそうなほど黒い髪なのに、太陽の光にかすかに煌いている。
細い銀のフレームの眼鏡の下には、切れ長の黒い瞳がある。
理性的な雰囲気の瞳には、なんだか自信に満ちあふれた輝きが宿っている。
その子が近づいてくる。
スカートが揺れて、黒いストッキングで包まれたふとももがかすかに見えた。
セーラー服の襟元のラインと校章が赤いことに気づく。
それはその子が、一年上の先輩、二年生だということを示している。
あぁ……その子とか言っちゃダメだ。先輩だ。
「ねえ、君」
いつの間にか、先輩がボクの傍にいた。
すらりとしているから、背が高いと思っていたけど、身長はボクよりも低い。
眼鏡の下の目がボクを上目使いに見上げている。
「は、はい。ボクで……ボクでいいんでしょうか?」
そう言うと、先輩はクスリと笑った。
どこか冷たく見えてしまうほどに整った顔つきをしているのに、笑うとかわいい。年齢が一気に下がったみたいにも見える。
先輩にこんなこと思ったら、失礼にもほどがあるけど。
「うん。そう」
「え、えっと……」
ボクはしどろもどろになる。
かっこ悪いけど、女の子とこんなに近くで話したことなんて、幼稚園以来なんだから、しかたない。
「君、うちの部に興味ないか?」
「部? クラブですか?」
「そうだよ」
先輩が頷いたので、ボクは先輩をマジマジと見る。
先輩が着ているものは、セーラー服だ。何かの部活のユニフォームじゃない。
特に変わった道具も持っていない。
「クラブって、何の部活なんですか? ボク、あまりそういうのは……」
だって、ボクには特技はないし、才能もない。
「君の願いをかなえられる。そんなクラブだよ」
「願い?」
ボクの願い?
「うん。ハーレム作りたいんだろ」
「え、はい。そうですけど……って、えぇぇっ!?」
思わず声が出た。
「聞かれてた! ボクの妄想ダダ漏れの独り言聞かれちゃってた!」
「うん。聞いたよ。君の妄想ダダ漏れの独り言」
「う、うわ……。い、いや、あれはちょっとした冗談というか、あの……。違うんです」
顔が耳まで熱くなってきた。
ボクは多分、今、真っ赤な顔をしてる。
「かなえられるよ。君の願い。一緒に来て」
そう言うと、先輩はボクの手を握った。
ボクの喉から変な息が漏れた。
女の子がボクの手を握ってる。
先輩の手は柔らかくて、スベスベしてて、暖かいのに、ほんの少しだけ冷たくも感じる。
何も考えることができなくなって、ボクはそのまま引きずられていく。
気づけば、ボクは東校舎の部活塔――四階にある文化系のクラブの部室が並んでいるところ――にやって来ていた。
「ここだよ。私は部長なんだ」
そう言うと、先輩――部長は目の前のドアに手をかけていた。
「え、えっと……」
鉄のドアにはボール紙が貼ってあった。
そこにはマジックで文字とイラストが描いてある。
『LOVE(ラ部)』
かわいいウサギのイラストの横に、そんな文字が書いてあった。やけにデキがいい。
いいんだけど……。
「……何のクラブなんですか?」
なんだかいかがわしそう。
「うーん」
部長は困ったように眉を下げた。
「見ればわかるよ」
そう言うと、部長はボクの手を引いて、部室に入った。
こんな気持ちいい手で引っ張られて逆らえるはずもなく、ボクもあとに続く。
部室に入ると、部長が振り向いた。
ボクの胸がドキッと鳴る。
こちらを見る部長の目が、眼鏡の下の瞳が潤んでいる。
白い頬が赤く染まっていた。
「ずっとね。君を待っていたんだ」
部長の唇がそう言った。
吐息がほんの少しだけボクの頬を撫でる。
部長の顔がやけに近い。ほとんど抱きつくように密着している。
ボクの胸に何かが当たる。
それは部長の胸だ。
もちろん制服越しだけど、部長の胸の膨らみがボクに触れていた。
こうして近くで見ると、ほっそりとしているのに部長の胸は……。
「せ、先輩……。ボ、ボクは……」
「部長、ずるい」
別の女の子の声がした。
ふわりとしたミドルショートの髪が印象的で、小柄な子だった。
でも、彼女も襟のラインが赤い。二年の先輩だ。
小さな先輩がトコトコとボクの方に駆け寄ってくる。
「ふふふ。副部長。嫉妬かい?」
部長が妖艶に微笑む。
副部長と呼ばれた先輩は頬をかわいく膨らませた。
「自信はないけど……。でも、嫉妬だと思う」
応えると、副部長はボクのすぐ傍に立つ。
副部長の頭はボクの胸よりも低いところにある。本当に小さくてかわいらしい。
先輩なんだけど。
「えっと……」
「わたしも待ってた」
そう言うと、小さな先輩は取り出したクッキーを口にくわえた。
「どうぞ」
そんなことを言いながら、クッキーをくわえた顔をボクの方へ突き出す。
一生懸命背伸びして、恥ずかしそうに目を閉じる。
「え? え?」
何? 食べていいの?
君ごと!?
そんなことを思ったけど、言えるわけもない。
でも、これって、そういう……。
「ちょっともう、遅いわよ!」
また別の声がした。
なんか巫女装束の女の子がいる。
ここ学校なのに、巫女装束を着てる!?
とはいえ、なんとなく雰囲気から先輩だと思う。
そんな巫女先輩はミドルショートの黒髪をかき上げると、腕を組んで、見下ろすような強気の目を、ボクに向ける。
「きょ、今日はあたしとデートの約束でしょ!? これでも、その……楽しみにしてたんだからね! そっちも楽しみだったわよね!?」
そう言うと、巫女先輩はプイと顔を背けた。
その頬が赤くなってるのがなんだかかわいい。
「ねえ、ねえ」
また別の方から声がする。
部室の奥には、黒いドレスみたいな服を着た女の子……いや、あれは、多分、ゴシックロリータとか、そういうファッションかな。
そういう服の女の子――堂々としてるから、多分、先輩――がいた。
だから、ここ学校なのに、なんでこの人もあんな恰好してるんだろ。
ゴシックロリータ――ゴスロリの先輩は、椅子に座ったまま、ツインテールの黒髪を揺らしながら、ボクの方を見る。
「このゲームね。クリアできないの。手伝ってほしいなー」
甘えるように言うと、ゴスロリ先輩は、自分の隣に置いた椅子をポンポンと叩く。
椅子が密着してる。座ったりしたら、身体がぴったりくっついて、ゲームどころじゃなくなってしまいそうだ。
「ふふ」と、部長が微笑む。
「早く食べて」クッキーをくわえた副部長が言って、「デート! するの!? しないの!? してよ!!」と、巫女先輩が恥ずかしそうに身を震わせた。「早く手伝ってほしいよー。死ぬよー。死んじゃうよー」と、ゴスロリ先輩がわがまま言う子供みたいに椅子を叩いている。
……これ、ハーレムだ。
ハーレムだっ!!
ボクが日夜夢見てた、ハーレムだ!!
「やれやれ。しょうがない子たちだな。ボクの身体はひとつしかないんだよ」
ボクは部長の腰に手を回すと、そのまま、副部長がくわえたクッキーを口移しに奪った。
おっと、ちょっと唇触れちゃった。
そして、そのまま、部長をお姫様だっこで抱き上げる。
「き、君……。少し恥ずかしいんだが」
「照れてる部長、かわいいよ」
「え……」
ボクが言うと、部長は何か言おうとして言えないまま、うつむいてしまう。
頬を赤らめてかわいい子だ。
ボクは部長を横抱きにしたまま、ゴスロリ先輩の横に腰かけた。
肘どころか、胸も触れちゃいそうに密着してる。
「よーし。こんなゲーム、ボクが2秒でクリアしてやるよ。ははは! 敵は死ぬ」
「あたしは! あたしとのデートは!」
後ろから巫女先輩の声がしたので、ボクは振り向いてウィンクする。
「焦るなよ。ゲーム、クリアしたらさ。みんなで、ボクの家に来ないか?」
「あ、あんたの家に!?」
「今日さ……。うち、親いないんだ」
「行く! 行くわよ! イッてあげるわよー!」
巫女先輩がいきなり後ろから抱きついてきた。
「む……」と、部長が横抱きにされたままボクの首に腕を絡める。
副部長やゴスロリ先輩も抱きついてきた。
「おいおい、よせよ。よせよ。焦り過ぎだぜ。こんなところで。ハハハハ! ハハハハハ!」
パチン! と、指が鳴る音がした。
「あ、え?」
ボクは『LOVE』の部室にいた。
そこは多分、部室としてはごくごく普通の部室なんだと思う。
そこそこの大きさの部屋に、教室のものと同じ机や椅子がいくつか置いていて、本棚がある。
ボクがさっきまで見ていたゲーム機なんかはなくて、抱きついていた女の子の姿もない。
あ、いや。女の子はいる。
小柄な副部長も、どういうわけか学校なのに巫女装束の先輩や、ゴスロリの先輩もいる。
でも、みんな離れてボクを見てるだけだ。
「え、あれ? 今、何が……?」
幻でも見た? でも、ちょっと幻にしては生々しかった上に、お昼からそういう幻見るのはちょっと末期的な気がする。
「うん。論より証拠。もうひとつ見せようか。イケるか?」
「ええ。イケるわよ。部長」
部長の言葉に、巫女装束の先輩が頷いた。
唐突に部屋が暗くなる。
蛍光灯が切れてしまったのか、部室は闇に包まれていいた。
窓から差し込んでくるかすかな星明りだけが、この小さな空間を照らしている。
ピチャピチャと水音がした。
生臭い匂いと共に、部屋の湿度が急に増したようで、肌にじっとりとしたものを感じる。
「……んっ」
ボクの足元から声がした。
鼻にかかるような甘い声。
目を落とせば、そこには部長がいた。
眼鏡の奥で潤んだ瞳がボクを見上げている。
「はぁぁ……」
濡れた唇から悩ましい吐息が漏れた。
凛々しい印象だった表情が今は緩んでいた。
部長の身体をねっとりとしたものが這っている。
触手だった。
白濁した粘液を糸引かせて、制服の上を這いずるそれは、タコやイカのものというよりは、ミミズに似た醜悪なものだった。
触手が蠢くたびに粘るような水音が鳴る。
生臭い匂いが立ち込める。
「あ、あっ」
部長の喉から苦しげなのか、気持ちよさげなのかわからない声がする。
触手は一本だけじゃなかった。
ぐったりとして横たわる部長の身体に、触手が何本も何本も巻きつき、その自由を奪って這い回っている。
顔を這いずる触手が眼鏡を粘液で汚す。
絡みついた触手が脚を這い登って、ストッキングの黒い薄布を汚しながら破り、その中に入り込む。
「や……そこはダメ」
スカートの内に何本もの触手が入り込んでいく。
だけど、部長は言葉とは裏腹に抵抗を見せない。
むしろ、その頬は紅潮して、喜んでいるようにも思える。
ボクはゴクリと唾を飲み込んだ。
水音はいくつもいくつも鳴っていた。
毒々しい色合いの触手がうねうねと床の上でのたうっている。
床自体が、むしろ、部屋自体が触手に変わってしまったかのようだった。
触手に捕らえられているのは、部長だけじゃない。
「食べないで、食べないで……」
虚ろな目で、小柄な副部長が繰り返している。
副部長の小さな身体の半分は触手の海の中に沈んでいた。その中がどうなっているのかはわからない。
身体を這い登って、全身を引き摺りこもうとする触手が、セーラー服の中に入り込んでいる。
柔らかそうな髪は粘液でベタベタになって見る影もない。
だけど、副部長も抵抗する様子はなかった。
先輩の横では、ゴスロリ先輩が、うっとりとした表情を浮かべていた。
「はぁ……はぁっ、あぁん」
目を閉じ、おとがいを上げて、黒いツインテールを力なく垂らした、ゴスロリ先輩のスカートの中に触手が群がっている。
不思議なことにそれ以外を汚そうとはしていない。
スカートだけが盛り上がっていた。
うずくまって、フルフルと身体を震わせているゴスロリ先輩のスカートの中で、いくつもの触手が激しく蠢く。
「はぁぁぁぁ、あぁぁっ」
身体がブルリと一際大きく震える。
ボクはそんな光景に見惚れていた。
触手に囚われた部長たちから目を離せず、ボクはその姿に、声に目を奪われていた。
ボクは気づいた。
手の中に一冊の本がある。
大きな辞典ほどもあるその本は、表紙が革で作られた古い装丁の本だった。
ああ、そうだ。
この触手を喚んだのは、ボクだったんだ。
そのことを思い出す。
「部長がぐったりしてるから、もっと激しくしてあげてよ」
ボクが命令すると、部長の身体にまとわりつく触手が服の中へ入り込んでいく。
「あ、あぁぁ! ダメ、こんな、ダメェ」
ぐったりしていた部長が嬉しそうな声を上げた。
「やめろ! やめなさい!」
別の声が聞こえて、ボクは顔を上げる。
そこには巫女装束の先輩がいた。
ミドルショートの黒髪を白く濁った粘液で汚された巫女先輩は、触手に手足を絡めとられて十字架に張りつけられるかのような姿で捕らえられていた。
ボクはそんな巫女先輩を嘲るように笑う。
「くそっ! あたしだけが……退魔師のあたしだけが、これをどうにかできるのに! なのに、こんな」
「こんな……なんだよ」
ボクは触手に命じた。
同時に触手たちが一斉に巫女先輩に群がる。
「や、やだ! いやっ! やめて! こんな、こんなにたくさんにされたら……」
「気持ちよくなっちゃうって?」
「そ、そんなことない! あたしが負けるはずなんて」
「じゃあ、試してみようよ」
触手が緋袴に絡みつき、隙間という隙間から潜り込んでいく。
白衣の袖からも触手が何本も潜り込んで、胸元を盛り上げた。
「ひぁぁっ! ダ、ダメ。こんな……」
その口も触手が塞いだ。
綺麗な唇から白い粘液があふれ出る。
さっきまで抵抗の意思を示していた強気な目がたちまち曇っていく。
「んんん、んんー、んんー」
「ハハハ! 何を言ってるかわからないな! もっと飲ませてあげるよ! ハハハハハ!」
触手の海に飲まれていく巫女装束を見て、ボクは笑った。
笑い続けていた。
パチンッ! と、指が鳴る。
「はっ!?」
ボクは声を上げた。
思わず周囲を見回す。
そこはやっぱり何も変わらない部室だった。
触手もなければ、あられもない姿の部長たちもいない。
水音も聞こえず、湿った空気も消えていた。
ボクの前には少し前と同じように、部長が立っていて、他の先輩たちもそれぞれ同じ場所にいる。
「ふぅ……」
巫女先輩だけが少し頬を赤らめて、深く息を吐いていた。
「今の……。ボクはいったい、何を……」
「つまりは、今のが私たちの部活だ」
部長は眼鏡を押し上げて笑みを浮かべた。
「い、いや、よくわからないです。本当によくわからないです」
「ライフハック。知ってるかな?」
「え、えっと……。少し前にはやった情報用語とかじゃなかったですか? 効率よく仕事を進める方法とか、そういうのだったと思うんですけど……」
「それはひとつの使い方だ。でも、私たちは別の意味で使う」
「別の意味?」
部長は深く頷いた。
「現実を想像で改竄する方法。それがライフハック。そして、それを為せる者をライフハッカーと言う」
「初耳です」
「そうかもしれないな。でも、今、君はそれを見た」
「現実を想像で改竄する……」
「そう。私たちの想像によって、世界を創造し、現実を改竄する。主軸の想像に、他の者の想像が絡み合い、生まれるのはまぎれもなく新しい世界」
部長は誰にというわけでもなく、力強く頷いた。
「そして、私たちは『ライフハックによって、現実と想像の境界を超越せし空想部活』。つまりは、略して『ラ部』さ。それは愛にも通じるので、通称『LOVE』」
「ライフハック……つまり、愛……」
他の先輩たちは部長の言葉に頷いていた。
「でも、LOVEはこじつけ」
小柄な副部長が苦笑すると、部長はコホンと咳払いしいて眼鏡を上げ直した。
「そうなんですか……。でも、全然わかりません」
ボクは言った。
まったくもって、何が起きたのかさっぱりわからない。
確かに見てて気持ちいいものだったし、夢のようでもあったけど……。
「最初はみんなそうだ。これから詳しい説明を……」
そう言いかけた部長の言葉を遮るように、チャイムが鳴り響く。
「部長。多分だけど、最終下校時刻」
副部長が言う。
「さすがにあの時間からのライフハック二本連続は時間をかけ過ぎたか」
部長が窓の外に目をやる。
ボクもそれを追った。
「え? もうこんな時間」
窓の外はいつの間にか暗くなっていた。
多分、この部室に入って、二時間は過ぎている。
体感的にはもっと短かった気がするのだけど。
「部長。今日は帰らないと」
「そうだな」
副部長にそう応えると、部長はボクの方を見た。
「そんなわけで、今日はお開きだ。また、明日詳しい話をしよう」
「あ、えっと」
先輩たちがそれぞれ荷物を持って立ち上がる。
帰る前に着替えるのか、部室内で区切られた更衣室に入る人もいた。
「……帰ります」
色々聞きたかったけど、なし崩し的にその日は帰るしかなかった。
◆ ◆ ◆
「来てしまった」
そして、結局、ボクはその次の日の放課後も、『LOVE』の部室の前にいた。
「ハーレムとかできると思ってたんだけどなー」
なんて、本気で思ってるわけもないことを、ボクはしみじみ呟いた。
高校に入学したところで、何人もの女の子が突然、ボクのことを好きになってしまって、囲まれて、女の子同士でボクの奪い合いをしたり、家に押しかけられたり、人気のない体育倉庫で迫られたり、なんかわけありの子だったり、毎日が大変で、ボクはいつも文句ばかり言うけど、本当はちょっと嬉しかったりとか……。
そんなこと起きるはずもなかった。
中学の頃、友達がほとんどいなくて、女の子ともまともに話したことなんてなくて、学校とか行くの嫌もだったボクが、高校に入って唐突にモテたりとか、あるはずない。
高校に入ったら、何か変わる。
そういうのが、妄想の産物だって、痛感したというか、当たり前のことに気づいただけだった。
先月まで、その中学生だったんだし、こんな短期間で何か変わるわけがない。
「はぁ……」
そんな春先の放課後、ボクは何をするでもなく、学校の中庭のベンチに座って、溜息をついていた。
まっすぐ家に帰ればいいんだけど、帰ったところで何もすることはないし、でも、部活とかは大変そうで入る気にもならない。
遠くから聞こえる体育会系の部活のかけ声を聞いて、そんなことを思う。
そもそも、部活に入ったところで、運動神経も芸術センスもないボクが、すごいことできるわけないし、女の子にモテるわけもないんだ。
別に、女の子にモテるために部活するわけじゃないだろうけど、でも、モテたいし。
「帰ろ」
ボクは鞄を提げて立ち上がった。
「君、ちょっといい?」
聞こえた声に、ボクは首を向けた。
女の子の声だったので、一瞬期待したけど、よく考えたら、ボクに話しかけてくれる女の子なんて、クラスにもいない。
意識し過ぎて、全然関係ない声に反応しちゃったみたいでバツが悪い。
ボクはそっと顔を背けると、たまたまそっちを見ただけなんだよー……と、いうふりをして、そのまま立ち去ろうとする。
「君、君。そこの君」
「え?」
ボクはもう一度、声の方を見た。
「そうそう。君、君」
その女の子は頷いた。
「君に用事があったんだ」
女の子は言う。
でも、ボクは応えることができなかった。
その子はかわいかった。
腰にまで届くんじゃないかという長くてまっすぐな黒髪。
光なんて全部吸い込んでしまいそうなほど黒い髪なのに、太陽の光にかすかに煌いている。
細い銀のフレームの眼鏡の下には、切れ長の黒い瞳がある。
理性的な雰囲気の瞳には、なんだか自信に満ちあふれた輝きが宿っている。
その子が近づいてくる。
スカートが揺れて、黒いストッキングで包まれたふとももがかすかに見えた。
セーラー服の襟元のラインと校章が赤いことに気づく。
それはその子が、一年上の先輩、二年生だということを示している。
あぁ……その子とか言っちゃダメだ。先輩だ。
「ねえ、君」
いつの間にか、先輩がボクの傍にいた。
すらりとしているから、背が高いと思っていたけど、身長はボクよりも低い。
眼鏡の下の目がボクを上目使いに見上げている。
「は、はい。ボクで……ボクでいいんでしょうか?」
そう言うと、先輩はクスリと笑った。
どこか冷たく見えてしまうほどに整った顔つきをしているのに、笑うとかわいい。年齢が一気に下がったみたいにも見える。
先輩にこんなこと思ったら、失礼にもほどがあるけど。
「うん。そう」
「え、えっと……」
ボクはしどろもどろになる。
かっこ悪いけど、女の子とこんなに近くで話したことなんて、幼稚園以来なんだから、しかたない。
「君、うちの部に興味ないか?」
「部? クラブですか?」
「そうだよ」
先輩が頷いたので、ボクは先輩をマジマジと見る。
先輩が着ているものは、セーラー服だ。何かの部活のユニフォームじゃない。
特に変わった道具も持っていない。
「クラブって、何の部活なんですか? ボク、あまりそういうのは……」
だって、ボクには特技はないし、才能もない。
「君の願いをかなえられる。そんなクラブだよ」
「願い?」
ボクの願い?
「うん。ハーレム作りたいんだろ」
「え、はい。そうですけど……って、えぇぇっ!?」
思わず声が出た。
「聞かれてた! ボクの妄想ダダ漏れの独り言聞かれちゃってた!」
「うん。聞いたよ。君の妄想ダダ漏れの独り言」
「う、うわ……。い、いや、あれはちょっとした冗談というか、あの……。違うんです」
顔が耳まで熱くなってきた。
ボクは多分、今、真っ赤な顔をしてる。
「かなえられるよ。君の願い。一緒に来て」
そう言うと、先輩はボクの手を握った。
ボクの喉から変な息が漏れた。
女の子がボクの手を握ってる。
先輩の手は柔らかくて、スベスベしてて、暖かいのに、ほんの少しだけ冷たくも感じる。
何も考えることができなくなって、ボクはそのまま引きずられていく。
気づけば、ボクは東校舎の部活塔――四階にある文化系のクラブの部室が並んでいるところ――にやって来ていた。
「ここだよ。私は部長なんだ」
そう言うと、先輩――部長は目の前のドアに手をかけていた。
「え、えっと……」
鉄のドアにはボール紙が貼ってあった。
そこにはマジックで文字とイラストが描いてある。
『LOVE(ラ部)』
かわいいウサギのイラストの横に、そんな文字が書いてあった。やけにデキがいい。
いいんだけど……。
「……何のクラブなんですか?」
なんだかいかがわしそう。
「うーん」
部長は困ったように眉を下げた。
「見ればわかるよ」
そう言うと、部長はボクの手を引いて、部室に入った。
こんな気持ちいい手で引っ張られて逆らえるはずもなく、ボクもあとに続く。
部室に入ると、部長が振り向いた。
ボクの胸がドキッと鳴る。
こちらを見る部長の目が、眼鏡の下の瞳が潤んでいる。
白い頬が赤く染まっていた。
「ずっとね。君を待っていたんだ」
部長の唇がそう言った。
吐息がほんの少しだけボクの頬を撫でる。
部長の顔がやけに近い。ほとんど抱きつくように密着している。
ボクの胸に何かが当たる。
それは部長の胸だ。
もちろん制服越しだけど、部長の胸の膨らみがボクに触れていた。
こうして近くで見ると、ほっそりとしているのに部長の胸は……。
「せ、先輩……。ボ、ボクは……」
「部長、ずるい」
別の女の子の声がした。
ふわりとしたミドルショートの髪が印象的で、小柄な子だった。
でも、彼女も襟のラインが赤い。二年の先輩だ。
小さな先輩がトコトコとボクの方に駆け寄ってくる。
「ふふふ。副部長。嫉妬かい?」
部長が妖艶に微笑む。
副部長と呼ばれた先輩は頬をかわいく膨らませた。
「自信はないけど……。でも、嫉妬だと思う」
応えると、副部長はボクのすぐ傍に立つ。
副部長の頭はボクの胸よりも低いところにある。本当に小さくてかわいらしい。
先輩なんだけど。
「えっと……」
「わたしも待ってた」
そう言うと、小さな先輩は取り出したクッキーを口にくわえた。
「どうぞ」
そんなことを言いながら、クッキーをくわえた顔をボクの方へ突き出す。
一生懸命背伸びして、恥ずかしそうに目を閉じる。
「え? え?」
何? 食べていいの?
君ごと!?
そんなことを思ったけど、言えるわけもない。
でも、これって、そういう……。
「ちょっともう、遅いわよ!」
また別の声がした。
なんか巫女装束の女の子がいる。
ここ学校なのに、巫女装束を着てる!?
とはいえ、なんとなく雰囲気から先輩だと思う。
そんな巫女先輩はミドルショートの黒髪をかき上げると、腕を組んで、見下ろすような強気の目を、ボクに向ける。
「きょ、今日はあたしとデートの約束でしょ!? これでも、その……楽しみにしてたんだからね! そっちも楽しみだったわよね!?」
そう言うと、巫女先輩はプイと顔を背けた。
その頬が赤くなってるのがなんだかかわいい。
「ねえ、ねえ」
また別の方から声がする。
部室の奥には、黒いドレスみたいな服を着た女の子……いや、あれは、多分、ゴシックロリータとか、そういうファッションかな。
そういう服の女の子――堂々としてるから、多分、先輩――がいた。
だから、ここ学校なのに、なんでこの人もあんな恰好してるんだろ。
ゴシックロリータ――ゴスロリの先輩は、椅子に座ったまま、ツインテールの黒髪を揺らしながら、ボクの方を見る。
「このゲームね。クリアできないの。手伝ってほしいなー」
甘えるように言うと、ゴスロリ先輩は、自分の隣に置いた椅子をポンポンと叩く。
椅子が密着してる。座ったりしたら、身体がぴったりくっついて、ゲームどころじゃなくなってしまいそうだ。
「ふふ」と、部長が微笑む。
「早く食べて」クッキーをくわえた副部長が言って、「デート! するの!? しないの!? してよ!!」と、巫女先輩が恥ずかしそうに身を震わせた。「早く手伝ってほしいよー。死ぬよー。死んじゃうよー」と、ゴスロリ先輩がわがまま言う子供みたいに椅子を叩いている。
……これ、ハーレムだ。
ハーレムだっ!!
ボクが日夜夢見てた、ハーレムだ!!
「やれやれ。しょうがない子たちだな。ボクの身体はひとつしかないんだよ」
ボクは部長の腰に手を回すと、そのまま、副部長がくわえたクッキーを口移しに奪った。
おっと、ちょっと唇触れちゃった。
そして、そのまま、部長をお姫様だっこで抱き上げる。
「き、君……。少し恥ずかしいんだが」
「照れてる部長、かわいいよ」
「え……」
ボクが言うと、部長は何か言おうとして言えないまま、うつむいてしまう。
頬を赤らめてかわいい子だ。
ボクは部長を横抱きにしたまま、ゴスロリ先輩の横に腰かけた。
肘どころか、胸も触れちゃいそうに密着してる。
「よーし。こんなゲーム、ボクが2秒でクリアしてやるよ。ははは! 敵は死ぬ」
「あたしは! あたしとのデートは!」
後ろから巫女先輩の声がしたので、ボクは振り向いてウィンクする。
「焦るなよ。ゲーム、クリアしたらさ。みんなで、ボクの家に来ないか?」
「あ、あんたの家に!?」
「今日さ……。うち、親いないんだ」
「行く! 行くわよ! イッてあげるわよー!」
巫女先輩がいきなり後ろから抱きついてきた。
「む……」と、部長が横抱きにされたままボクの首に腕を絡める。
副部長やゴスロリ先輩も抱きついてきた。
「おいおい、よせよ。よせよ。焦り過ぎだぜ。こんなところで。ハハハハ! ハハハハハ!」
パチン! と、指が鳴る音がした。
「あ、え?」
ボクは『LOVE』の部室にいた。
そこは多分、部室としてはごくごく普通の部室なんだと思う。
そこそこの大きさの部屋に、教室のものと同じ机や椅子がいくつか置いていて、本棚がある。
ボクがさっきまで見ていたゲーム機なんかはなくて、抱きついていた女の子の姿もない。
あ、いや。女の子はいる。
小柄な副部長も、どういうわけか学校なのに巫女装束の先輩や、ゴスロリの先輩もいる。
でも、みんな離れてボクを見てるだけだ。
「え、あれ? 今、何が……?」
幻でも見た? でも、ちょっと幻にしては生々しかった上に、お昼からそういう幻見るのはちょっと末期的な気がする。
「うん。論より証拠。もうひとつ見せようか。イケるか?」
「ええ。イケるわよ。部長」
部長の言葉に、巫女装束の先輩が頷いた。
唐突に部屋が暗くなる。
蛍光灯が切れてしまったのか、部室は闇に包まれていいた。
窓から差し込んでくるかすかな星明りだけが、この小さな空間を照らしている。
ピチャピチャと水音がした。
生臭い匂いと共に、部屋の湿度が急に増したようで、肌にじっとりとしたものを感じる。
「……んっ」
ボクの足元から声がした。
鼻にかかるような甘い声。
目を落とせば、そこには部長がいた。
眼鏡の奥で潤んだ瞳がボクを見上げている。
「はぁぁ……」
濡れた唇から悩ましい吐息が漏れた。
凛々しい印象だった表情が今は緩んでいた。
部長の身体をねっとりとしたものが這っている。
触手だった。
白濁した粘液を糸引かせて、制服の上を這いずるそれは、タコやイカのものというよりは、ミミズに似た醜悪なものだった。
触手が蠢くたびに粘るような水音が鳴る。
生臭い匂いが立ち込める。
「あ、あっ」
部長の喉から苦しげなのか、気持ちよさげなのかわからない声がする。
触手は一本だけじゃなかった。
ぐったりとして横たわる部長の身体に、触手が何本も何本も巻きつき、その自由を奪って這い回っている。
顔を這いずる触手が眼鏡を粘液で汚す。
絡みついた触手が脚を這い登って、ストッキングの黒い薄布を汚しながら破り、その中に入り込む。
「や……そこはダメ」
スカートの内に何本もの触手が入り込んでいく。
だけど、部長は言葉とは裏腹に抵抗を見せない。
むしろ、その頬は紅潮して、喜んでいるようにも思える。
ボクはゴクリと唾を飲み込んだ。
水音はいくつもいくつも鳴っていた。
毒々しい色合いの触手がうねうねと床の上でのたうっている。
床自体が、むしろ、部屋自体が触手に変わってしまったかのようだった。
触手に捕らえられているのは、部長だけじゃない。
「食べないで、食べないで……」
虚ろな目で、小柄な副部長が繰り返している。
副部長の小さな身体の半分は触手の海の中に沈んでいた。その中がどうなっているのかはわからない。
身体を這い登って、全身を引き摺りこもうとする触手が、セーラー服の中に入り込んでいる。
柔らかそうな髪は粘液でベタベタになって見る影もない。
だけど、副部長も抵抗する様子はなかった。
先輩の横では、ゴスロリ先輩が、うっとりとした表情を浮かべていた。
「はぁ……はぁっ、あぁん」
目を閉じ、おとがいを上げて、黒いツインテールを力なく垂らした、ゴスロリ先輩のスカートの中に触手が群がっている。
不思議なことにそれ以外を汚そうとはしていない。
スカートだけが盛り上がっていた。
うずくまって、フルフルと身体を震わせているゴスロリ先輩のスカートの中で、いくつもの触手が激しく蠢く。
「はぁぁぁぁ、あぁぁっ」
身体がブルリと一際大きく震える。
ボクはそんな光景に見惚れていた。
触手に囚われた部長たちから目を離せず、ボクはその姿に、声に目を奪われていた。
ボクは気づいた。
手の中に一冊の本がある。
大きな辞典ほどもあるその本は、表紙が革で作られた古い装丁の本だった。
ああ、そうだ。
この触手を喚んだのは、ボクだったんだ。
そのことを思い出す。
「部長がぐったりしてるから、もっと激しくしてあげてよ」
ボクが命令すると、部長の身体にまとわりつく触手が服の中へ入り込んでいく。
「あ、あぁぁ! ダメ、こんな、ダメェ」
ぐったりしていた部長が嬉しそうな声を上げた。
「やめろ! やめなさい!」
別の声が聞こえて、ボクは顔を上げる。
そこには巫女装束の先輩がいた。
ミドルショートの黒髪を白く濁った粘液で汚された巫女先輩は、触手に手足を絡めとられて十字架に張りつけられるかのような姿で捕らえられていた。
ボクはそんな巫女先輩を嘲るように笑う。
「くそっ! あたしだけが……退魔師のあたしだけが、これをどうにかできるのに! なのに、こんな」
「こんな……なんだよ」
ボクは触手に命じた。
同時に触手たちが一斉に巫女先輩に群がる。
「や、やだ! いやっ! やめて! こんな、こんなにたくさんにされたら……」
「気持ちよくなっちゃうって?」
「そ、そんなことない! あたしが負けるはずなんて」
「じゃあ、試してみようよ」
触手が緋袴に絡みつき、隙間という隙間から潜り込んでいく。
白衣の袖からも触手が何本も潜り込んで、胸元を盛り上げた。
「ひぁぁっ! ダ、ダメ。こんな……」
その口も触手が塞いだ。
綺麗な唇から白い粘液があふれ出る。
さっきまで抵抗の意思を示していた強気な目がたちまち曇っていく。
「んんん、んんー、んんー」
「ハハハ! 何を言ってるかわからないな! もっと飲ませてあげるよ! ハハハハハ!」
触手の海に飲まれていく巫女装束を見て、ボクは笑った。
笑い続けていた。
パチンッ! と、指が鳴る。
「はっ!?」
ボクは声を上げた。
思わず周囲を見回す。
そこはやっぱり何も変わらない部室だった。
触手もなければ、あられもない姿の部長たちもいない。
水音も聞こえず、湿った空気も消えていた。
ボクの前には少し前と同じように、部長が立っていて、他の先輩たちもそれぞれ同じ場所にいる。
「ふぅ……」
巫女先輩だけが少し頬を赤らめて、深く息を吐いていた。
「今の……。ボクはいったい、何を……」
「つまりは、今のが私たちの部活だ」
部長は眼鏡を押し上げて笑みを浮かべた。
「い、いや、よくわからないです。本当によくわからないです」
「ライフハック。知ってるかな?」
「え、えっと……。少し前にはやった情報用語とかじゃなかったですか? 効率よく仕事を進める方法とか、そういうのだったと思うんですけど……」
「それはひとつの使い方だ。でも、私たちは別の意味で使う」
「別の意味?」
部長は深く頷いた。
「現実を想像で改竄する方法。それがライフハック。そして、それを為せる者をライフハッカーと言う」
「初耳です」
「そうかもしれないな。でも、今、君はそれを見た」
「現実を想像で改竄する……」
「そう。私たちの想像によって、世界を創造し、現実を改竄する。主軸の想像に、他の者の想像が絡み合い、生まれるのはまぎれもなく新しい世界」
部長は誰にというわけでもなく、力強く頷いた。
「そして、私たちは『ライフハックによって、現実と想像の境界を超越せし空想部活』。つまりは、略して『ラ部』さ。それは愛にも通じるので、通称『LOVE』」
「ライフハック……つまり、愛……」
他の先輩たちは部長の言葉に頷いていた。
「でも、LOVEはこじつけ」
小柄な副部長が苦笑すると、部長はコホンと咳払いしいて眼鏡を上げ直した。
「そうなんですか……。でも、全然わかりません」
ボクは言った。
まったくもって、何が起きたのかさっぱりわからない。
確かに見てて気持ちいいものだったし、夢のようでもあったけど……。
「最初はみんなそうだ。これから詳しい説明を……」
そう言いかけた部長の言葉を遮るように、チャイムが鳴り響く。
「部長。多分だけど、最終下校時刻」
副部長が言う。
「さすがにあの時間からのライフハック二本連続は時間をかけ過ぎたか」
部長が窓の外に目をやる。
ボクもそれを追った。
「え? もうこんな時間」
窓の外はいつの間にか暗くなっていた。
多分、この部室に入って、二時間は過ぎている。
体感的にはもっと短かった気がするのだけど。
「部長。今日は帰らないと」
「そうだな」
副部長にそう応えると、部長はボクの方を見た。
「そんなわけで、今日はお開きだ。また、明日詳しい話をしよう」
「あ、えっと」
先輩たちがそれぞれ荷物を持って立ち上がる。
帰る前に着替えるのか、部室内で区切られた更衣室に入る人もいた。
「……帰ります」
色々聞きたかったけど、なし崩し的にその日は帰るしかなかった。
◆ ◆ ◆
「来てしまった」
そして、結局、ボクはその次の日の放課後も、『LOVE』の部室の前にいた。
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