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ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。 ここでは、主に商業活動、同人活動の宣伝を行っております。
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 ライトノベルをガリガリと書かせていただいている身の上です。

メールはtamazo☆carrot.ocn.ne.jpまで。(SPAM対策で@を☆に変更しています。@に直してお送りください) 
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関西コミティア35に参加します。
スペース情報は以下のとおり。

10月18日(日)関西コミティア35
H-55 玉造屋バキューン

新刊は短編コピー誌『ド外道巫女 五番勝負!』です。
「起きたら巫女になっていた」というネタを起点として、『VERSUS』と『ハトよめ』と『トランスフォーマー(スチールシティ)』をリスペクトした話にしよう混ぜてみたら、巫女VSゾイドになっていたような話です。
自分で言ってて意味がわからないですが、本当に、だいたいそんな感じです。

そんなわけで、いつものように冒頭部分を予告編として掲載します。
もし、お暇でしたら、当日、お会いしましょうー!

■あらすじ
主人公、自称テラさんは殺された! と思った次の瞬間、目を開けると、巫女になっていた。
そこへ襲いかかる巨大な鋼鉄の獣、機妖。とりあえず、テラさんは策を弄してそれを撃退する。
自分の置かれた状況が理解できないままながら、テラさんは、自分を殺したはずの機妖たちを叩き壊すべく、旅立つ。ある目的のために……。

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■予告編

 腕が、脚が、ひきちぎられる。

 鋼の肉体は痛みを感じない。ただ、損傷という事実として、自らの五体が引き裂かれていることを知るだけだ。

 だから、悲鳴は上がらない。

代わりに、彼の身体は鋼の軋みと、破壊の音を断末魔の声として放つ。

鉄を軽々と握り潰す右腕が、全てを貫く閃光を放つ左手が、大地すら溶かす高温を繰り出す右脚が、触れたものを内部から震わせ、粉砕する左脚が、ことごとく切断され、奪われ、そして、叩きつけられた刃が首に食い込むのを、彼は確かに感じた。

さらに、切り離された頭が叩き壊される。

人工知能が収められた頭部が機能を停止したことで意識が途絶えた。

人の手で作られた兵器が、死ねばどうなるのか?

彼が最期に考えたのは、そんなことだった。

 

   ◆ ◆ ◆

 

「うぎゃあっ!! 死んだーっ!!

 起き上がると同時に絶叫した彼女の眼前に、吹き飛ばされてきた瓦礫が突き刺さった。

 その衝撃に、彼女は身を跳ねさせ、後ずさる。

 眼前にはたびかなさる攻撃を受け、破壊され、荒廃しきった町並みと、崩れたビル群が広がる。

「な、なんだ……? 夢か? 夢だったのかよ。ぶっ殺されたと思ったのは夢で……。いや、マシンってー奴は夢を見るのか? ああ、見てたっけか? 記憶整理的なそんな……」

 ブツブツと呟く彼女の頭に、舞い上がっていた土埃が落ちてきた。

 それを鬱陶しそうに払いのけ、立ち上がろうとしながら、彼女は動きを止めた。

 彼女の目は先程目の前に落ちた巨大な瓦礫に釘付けになっている。

 それは太い鉄柱の破片だった。塗装されている部分はともかく、折れた断面はやけに滑らかで、鏡のように目の前のものを映し出している。

 そこに映し出されている者を見て、少女は目を瞬かせた。

 鏡の中には、立ち上がろうとする途中の半端な姿勢で、一人の少女が立っていた。

 崩れたビル群と、割れ砕けたアスファルトには似つかわしくない、時代錯誤甚だしい、白い和服を着込み、赤い袴をはいた鏡の中の少女は、目を見開き、鏡の前に立つ者に見入っている。長い黒髪が落ちてくる土埃で汚れていた。

「巫女……って言ったか? こういうのって」

 少女が映し出された自分の姿を凝視して呟いた。

 彼女が右手を上げると、鏡の中でも、巫女は左手を上げた。

 彼女が左手を上げると、鏡の中でも、巫女は右手を上げた。

 彼女が自分の顔に手を当てると、鏡の中でも巫女が顔に手を当てる。ぬめる感触に掌を見れば、指先が切れて、白い掌と頬を血が汚していた。もちろん、鏡の向うの巫女も同じだ。

「なんで、俺が巫女になってんだーっ!?

 叫び、今度こそ立ち上がった彼女は、続けざまの爆音と、吹きつける爆風にあおられ、危うく転げそうになる。黒髪が乱れ舞った。

「なんだ? どうなってやがる? もう、全てにおいて!」

 顔を手でかばいながら、風が吹きつける方へ目をやる。

 燃え盛る炎と、崩れゆくビルを背に、一頭の巨大な獣がいた。全身が金属でできた異形の四足獣だ。

 その身体を形作るものは、鉄の塊と機械だった。装甲車から引き剥がしたような無骨な鉄の装甲の隙間から、精密機器から抉り取ったような電子部品が覗いている。

 分厚い金属の装甲と、いくつもの機械部品が生物の臓器のように複雑に絡み合い、牙を持ち、四本の脚で身体を支える、犬に似た姿をそこに作り出していた。

 ただし、鉄の犬は、本物とは違い、傍らに転がり炎を噴き上げる大型のトラック以上の巨体を持っていた。

 それがビルと家屋の入り混じった町並みを薙ぎ倒し、車を弾き飛ばし、跳び回ってはしゃいでいる。

 鉄の獣が暴れるたび、地面が揺れ、巫女装束の少女はよろめく。

 その時、続けざまの爆音が鳴り響いた。

獣が崩した瓦礫の影から爆音が上がった。

炎を噴出し、飛び出した数発のロケット弾が、鉄犬の胴を真横から叩く。

 直撃に、鉄の装甲が吹き飛び、鉄の犬がよろめいた。

 血のように赤く輝いていた目のひとつが罅割れ、砕け散る。

しかし、脇腹の装甲を剥がれ、内部までを黒く焦がしながらも、獣は倒れなかった。

 瓦礫に向けて、大きく口を開く。その口腔から獣自身の頭程もある機関砲がせり出す。その砲身だけで、人間の身体よりも長く太い。

 機関砲がその砲身を高速で回転させ、火を放つ。

 コンクリートと鉄板の瓦礫が軽々と穿たれ、悲鳴が上がった。

 その影に隠れていた人間たちが慌てて逃げ出していく。

「あーっはっはっ! 人間如きがあっしに勝てるとか、ありえねえでやんす! 身の程を知るでやんすよー!」

 間の抜けた声を上げ、獣は銃を撃ち続ける。振り回される砲身はでたらめに町並みを叩き壊し、瓦礫を撃ち抜き、それを見詰めていた巫女装束の少女のもとへも届いた。

「ぐ、ぐあぁぁぁっ!? あっぶねえ! なんてことしやがんだ、クソがっ!」

 彼女はとっさに、全力で真横へ跳び、ゴロゴロと転がった。

さっきまで彼女が立っていた場所を銃撃が通り過ぎていく。地面に穿たれた何十もの傷跡は、そのひとつひとつが彼女の拳よりも大きい。

「畜生! 無茶苦茶するもんだな! ケダモノが!」

 倒れた彼女のもとに、一人の男が走ってきた。

 小銃を片手に握り、防弾ジャケットを着込んだ髭面の男だ。

 彼の目が、服についた埃を払い、唾を吐いている巫女を捉えた。

「お前! まだこんなとこで……。だから、馬鹿なこと言ってる場合じゃなかっただろ!」

 髭面の男は、いきなり少女を怒鳴りつける。

「何の話だ? つか、このありさまはなんなんだっ! こっちが聞きてえよ!」

 少女は装束の袖をつまみ、男へ見せつけながら、怒鳴り返した。

「そのありさまは、お前がやったことだろ!? イタコだとか、魂寄せとか……。そんな、のんきなこと言ってる場合じゃないって、俺は何度も言っただろうが!」

「……何だそりゃ?」

「ひゃーっほう! あっしの天才! あっしの策士!」

 それはそれとして、大気を震わせる大声で、鋼の犬が吼えていた。

「まさに漁夫の利ってやつでやんす。恐い恐いテラーは死んで、あいつをやった奴らも傷だらけで逃げ帰って……。今がチャンス! お前ら人間は、あっしにはかなわないんでやんすから、さっさと食い物差し出すでやんすよ! 出さなくても、好きなだけいただくでやんすけどっひょー!」

 言いつつ、足元の瓦礫に頭を突っ込むと、そこに埋もれた鉄くずをガリガリとかじり始めた。

「なんだ、あいつ! なんで、あんな懇切丁寧にハイエナ自慢さらしてやがる! つか、俺が死んだってのは、どういうこった!?

「何言ってんだ! どうもこうもない! 奴はまぎれもないハイエナだ。畜生……! だが、テラーがやられた以上、あんな奴相手でも、逃げるしかない。機械がまともに動かせるなら、話は別なんだが」

 言いつつ、武装した男は懐から赤と青の配線が目立つ、小さな機械を取り出した。

「この爆弾ぐらいなら……。せめて、一矢報いてやる。ぶっ飛ばしてやるぜ……!」

「盛り上がってるとこ悪いが、とにかく、状況を説明しろよ。でないと、俺がお前をぶっ飛ばすしかねえ。俺の、このざまはどういうこった?」

「うるさい! 霊魂だとか、そういうオカルトに付き合ってる暇はない。足止めは俺がやる。だから、お前は……」

「あーっはーっ! テラーもたいしたことなかったでやんすね! あんな無様に負けて死ぬぐらいなら、あっしは土下座を選ぶでやんすけど!」

「うるせえっ!! この死肉漁りの雑魚野郎が! 俺はてめえの顔すら知らねえ!」

 少女の叫びに、死肉漁りの雑魚野郎が顔を向ける。

「……な!? 気づかれただろ!? なんてこと……」

「やかましい! ぶっ飛ばすって言っただろうが!」

 言葉どおり、少女は男の顎を殴り、さらに腹を殴り、屈んだところで後頭部を殴りつけた。

 悲鳴らしい悲鳴も上げることができないまま、男が倒れ伏す。

 その手から小銃を奪い、爆弾を含めたいくつかの道具を手にして、巫女は鉄の獣に背を向けて一目散に逃げ出した。

「うおおっ! 人間如きがあっしを雑魚呼ばわりとは、たいした自信でやんすね! お前が、どれほど無力な存在か教え込んであげるでやんすよ! あっしは人呼んでキバ……」

「黙れ馬鹿! てめえの名前なんぞ、ガキとかそんなんで十分だ! 地獄絵とかで見せてもらったが、キモかったし、それでいいぜ! やーい! ガキー! 下腹膨らんでるー」

 巫女が逃げながらゲタゲタ笑う。

「ガ、ガキ……。殺すしかねえでやんすねっ!!

 ガキと命名された獣の口腔から、再び機関砲が滑り出す。

 少女が瓦礫の中に飛び込んだのと、銃弾の嵐が通り過ぎるのは、ほぼ同時だった。

 瓦礫にまぎれ、走りながら、彼女は爆弾を胸元に入れ、手榴弾のついたベルトと、ロープをを腰に巻きつける。全て、殴り倒した男から奪ってきたものだ。

「どこでやんすかー? かくれんぼで遊んで欲しいんでやんすねえ」

 ガキは少女が瓦礫に消えたあたりに適当に発砲し、前脚で建物の残骸を吹き飛ばす。

 きょろきょろと周りを見回した後、機関砲を顕わにしたままの頭を低くし、地面に顔を近づけた。

 その瞬間、瓦礫の合間を縫い、飛び出したロープがガキの頭部にある耳状の突起に巻きつく。

 とっさに上体を起こしたガキの頭を目掛け、縄を伝う形で少女が跳んだ。

 そのまま、ガキの前脚を駆け上がり、首を伝い、顔面に取りつく。

 ガキが首を大きく振った。

 ロープを握ったままの少女の姿が消える。

「あれ? あれれ? このぐらいで吹っ飛んだんでやんすか。ひへっへ」

 耳に残されていたロープを、ガキは前脚の爪で引っかけてちぎった。

「人間は脆くて、大変でやんすねえ」

 そう呟き、頭を上げて歩き出す。

「そろそろ帰るでやんすかねえ。十分、食べるものは食べたでやんすし」

 言いつつ、ガキはしばらく歩く。廃屋や瓦礫の影に何人もの人間が隠れているが、彼らは何もせず、怨嗟のこもった眼差しで巨大な鉄の犬を見送っていた。

「おいおい。待てよ。もうちょっとゆっくりしていけ」

 そのまま、立ち去ろうとしたところで、不意に声がした。さっきまであちこちに潜んでいた人間の姿はもう周囲には見えない。

 ガキが足を止める。

 鉄で作られた顔を器用にゆがめ、周囲を見回す。

「……あれ? どこからでやんすか? 声が……」

「お前の言うとおり、脆くて大変だぜ。人間はな。このぐらいのことで、肩は外れるわ、ぶつけたとこは内出血してやがるわ」

 声はガキの顔からしていた。

ついさっきの戦闘で破られた右目から巫女が身体を乗り出し、手を振る。その上で、コンコンと、目の下の鉄板を叩き、彼女は自分の居場所をガキに知らせた。

「げええっ!? い、いつの間に、そんな……!? もう一度、吹っ飛ばして……!」

 前脚を上げ、さらに身体を大きく振ろうとする。

「まあ、待て。死ぬぜ」

 言うと、彼女は右手に何かのスイッチを掲げた。

「位置的に見えないだろうから、教えてやるが、俺は爆弾のスイッチを持っている。当然、お前の中に仕掛けてきたもののスイッチだ」

「ば、爆弾!?

 そのままの姿勢でガキが止まった。

「そうだ。こいつを押し込めば……ボンッ! だ」

「ひっ!? い、いやば、馬鹿でやんすね! あっしらは機械も金属も取り込めるんでやんすよ! 口から入ったものだけじゃないでやんす! そんなもの、発見次第、取り込んで制御してしまえば……!」

「構わんけど、けっこう繊細な作りだから、取り込み損ねたら、やっぱりボンッ! だぜ? 慌ててやって、できるのかよ?」

 少女が口の端を上げて笑った。

「いくつかでたらめに仕掛けたからな。手榴弾も転がしてきたし。外はともかく、中から吹っ飛ばされたら、お前ら、機妖って化け物でも、無事じゃあすまねえなあ。試してみるか? 俺も吹っ飛ぶかもしれんけど。そして、今、ボタンに指をかけてみてるぜ」

 ボタンには触れないまま、彼女はしれっと言う。

「ひぎいっ! ま、待つっす! 待つでやんす! ひっ! ほんとに、何か仕掛けられてるっ!」

「おいおい。勝手に調べやがったな。じゃあ、ポチ」

「ぎゃー!!

「安心しろ。まだ嘘だ」

「ゴメンなさい! ゴメンなさい! もうしませんっす! 助けて! たしゅけてえっ!」

「いいぜ。俺は寛大だからな」

 あっさり言うと、巫女の少女は、ガキの右目から這い出し、その鼻先に座った。

「ちっ……。ほんと、脆い身体だぜ。なんなんだこりゃあ。しかも、超痛え」

 外れていた肩の関節をはめ込み、痛みに顔をしかめる。

「ゆ、許してくれるでやんすか?」

「おうおう。そう言っただろうが。その代わり、ちょっと仕事をしてもらおうじゃねえか」

「仕事? そいつはいったい……」

 ガキに対面する形で、鼻先にあぐらをかき、巫女の少女は肩にかけていた小銃を、おもむろに投げ捨てる。

「俺のことは……。そうだな。テラー……。いや、こんなんじゃ、迫力不足だから、テラさんと呼べ」

「へ? は、はあ? じゃあ、あっしはキバ……」

「で、ガキよ。お前みたいな臆病者なら、ここらを……この青森城砦の辺りを縄張りにしてやがる機妖どもの居場所はわかってんだろ。そんなハイエナ生活してんだから」

「そりゃあ、まあ……。しかし、それが?」

「一番近い奴でいいから、テラーをぶっ壊した奴のところへ行け。俺がそいつをぶっ潰す」

「そ、そんな!? あっしらが手を出せなかったテラーをぶっ壊すような奴でやんすよ! あっしや、テラさんでも、その……」

「そうか……。言うこと聞いてくれねえと、ボンッ! しかねえんだが」

 言いつつ右手を掲げたテラさんは、今度はきちんとスイッチに指をかけていた。

「ひぎぃっ! あっしはテラさんのしもべでやんすっ!」

 

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