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ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。 ここでは、主に商業活動、同人活動の宣伝を行っております。
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 ライトノベルをガリガリと書かせていただいている身の上です。

メールはtamazo☆carrot.ocn.ne.jpまで。(SPAM対策で@を☆に変更しています。@に直してお送りください) 
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関西コミティア39参加します!

ということで、本文が仕上がったので、予告編の掲載などなど。

10月16日(日)
J-24 玉造屋バキューン

新刊は短編コピー誌『三十路が死ぬ時! 宇宙は爆発する!』です。

タイトルのままの話です!
多分、ジャンルはラブコメですが、違うと言われれば頷くしかない。
既刊各種も持ち込んでいますので、よろしくお願いします。

以下、例によって予告編になります。

■あらすじ
天宮鈴鹿は、謎の敵、ヨミの侵攻を防ぐ役割、サイノカミに就く31歳である。
しかし、彼女は戦いに疲れていた。
どちらかと言えば三十路との戦いに。

そんな彼女は、ある日、自分のあとを継ぐ素質を持つ少年を見つけてしまった!
やや必死気味の三十路ヒロインのお話です。

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■予告編

 二十代前半には疲れが溜まりやすくなり、徹夜が辛くなる。体力の回復も遅い。
二十代半ばから後半にかけては、少し油断しただけで、お腹に肉がついてしまうようになった。運動しても全然落ちてくれない。
 三十路に入れば、ついにお肌の曲がり角がやって来る。顔を洗っただけで、あるいは、空気が乾燥してきたことを敏感に察して、肌が突っ張る。二十代の頃と比べて、少し見ればわかってしまうほど、肌には潤いがない。
 そして、友達にも、親にも、「もう若くないんだから!」と言われるようになる。
「それはお前もだろ!」と、言い返したくなるものの、相手は既に結婚して、家庭を持っているので、言い返しても説得力はなくて、むしろ、気を使ってお見合い話なんか持って来られたりすると、「余計なお世話だ! 爆発しろ!」と、言いたくなる。
 でも、言えずに愛想笑い。
 そんな三十路、天宮鈴鹿(三十一歳)は戦っていた。
 年齢以外の敵と。
「ああもう! 爆発してよ!」
 薄茶色の髪をなびかせて、彼女は空を見上げた。
 眼鏡を通して見える夜空は新月だ。月は闇に消え、空には星明りが瞬くのみ。
 その星空を引き裂いて、巨大な蛇がうねっていた。
 数本を束ねた蛇体は、立ち並ぶ東京都心の高層ビルよりも、太く長い。
 ありえない存在が空にいた。
 何もない空間を破り、月のない空よりも暗い何処かから姿を現したそれは、大きくのたうちながら、鈴鹿へと降って来る。
 蛇のようだが、目も鼻もなかった。牙の並ぶ赤黒い口腔だけが大きく開き、鈴鹿を食らおうと襲いかかる。
 鈴鹿は地を蹴り、夜空を舞う。
 大きく舞い上がった彼女の白い衣がはためく。
 鈴鹿が着ているものは、白衣と赤い袴、どことなく巫女を彷彿とさせる衣装だった。
 しかし、その袴は短く、ミニスカートのようで、白衣は袖のないノースリーブだ。
 長く白い、しかし、少しだけ水気を失ってしまったと本人が思っている四肢を振り、鈴鹿は夜空に舞い踊る。
 ビル三つ分ほどの距離を軽々と、跳躍した彼女を、牙を打ち鳴らして蛇体が追う。
 高層ビルのような巨体が大地を打ち、そのまま鈴鹿目がけて跳ね上がって来た。
 しかし、巨体が叩きつけられた道路にも、そこを走る車にも、行き交う人々にすら損害はなかった。
 鈴鹿たちの周囲には蚊帳のような幕が張られているようだった。
 それに護られているかのように、あるいは、透けて見える世界は別の空間であるかのように、街も、そこを行く人々も、鈴鹿にも巨大な蛇体にも気づかずに、日常を送り続けている。
「カムズミ。やるわよ。あいつ、爆発させてやる」
「任せよ、サイノカミ」
 鈴鹿の服から、丸い生き物がこぼれ出た。
 犬とも猫ともつかない、生き物としては丸過ぎるそれは、愛らしい外見とは裏腹に、老人のように、しわがれた声を発する。
「カムズミ。神剣トツカ!」
「心得た!」
 カムズミと呼ばれた生き物が、内より輝く。
 同時に空を舞いながら、鈴鹿が掲げた手の中へその光が収束していく。
 まばゆい輝きがひときわ強くなり、弾けた後には、彼女の手の中に、長大な蛇体を上回る光の巨剣が作り上げられていた。
 実際に彼女がつかんでいるわけではないが、光の剣は、鈴鹿の動きに合わせて動く。
 迷うことなく、彼女は蛇体目がけてそれを振り抜いた。
 光の軌跡が走った後、蛇体が易々と寸断され、黒い血を噴き出す。
 巨体のほとんどを失った蛇体に対して、鈴鹿は光の剣を頭上へ構えた。
「ヨミよ、還れ! その棺へ!!」
 そして、夜空を割り砕き、姿を現そうとしている新たな蛇体へと剣を突き込む。
 光の柱が天地を繋ぎ、黒い血潮を撒き散らしながら、ヨミと呼ばれた蛇体は、投じられた光の剣もろともに割れた空の向こうへ消えた。
 同時に、漆黒の世界を覗かせていた夜空は、互いを求め合うように結びつき、もとの星空を取り戻す。
 鈴鹿は道路から歩道へと飛んだ。
 彼女が手を振るえば、周囲を囲んでいた薄布のようなものは消え失せる。
 そして、鈴鹿の身を包んでいた衣装もまた、光の粉となって飛び散った。
 あとに残ったものは、地味な色合いのスーツに身を包んだ天宮鈴鹿(三十一歳)だ。
 タイトスカートに包まれた長い足が、アスファルトを打ち、ヒールが小気味よい音を鳴らした。
 ホッと吐息すると、彼女は、眼鏡を押し上げ、乱れた髪を整える。
 そして、携帯電話を取り出すと、液晶画面に目を落とした。
「……やっぱり、メール来てたわ……。明日は修羅場覚悟しとけって」
 仕事場から届いたメールには、今日、早退したため、仕事が溜まってるという旨が、同僚から親切に送られてきていた。
「オフに仕事のメールしないでよね。ああ、もう……!」
 言いつつ、彼女は歩きだす。
 人々は何事もなく日常を過ごしていた。
 鈴鹿が携帯の時計を見れば、時刻は夜の八時を回り、都心と言えども人通りは少なくなりつつある。
「カムズミー。もう辞めたい」
「ん、んあ? 仕事をか?」
 奇妙な生き物、カムズミの姿はいつの間にか消え失せていた。
 代わりに虚空から、年老いた声が聞こえてくる。
「違うわよ。サイノカミをよ。もうね。私、限界っていう自覚はあるの」
 足を止めぬまま、鈴鹿が背伸びすると、肩や腰がゴリゴリと嫌な音を立てる。
「三十路よ。今日の疲労が二日してから、筋肉痛になる三十路よ。新月でヨミが出るだろうから、明日の仕事量が悲惨なことになるってわかってて、仕 事を早退したのに、残るのは二日後の筋肉痛だけ。ははっ、サイノカミ? この歳で、あの、かわいい衣装でガチの戦闘。お給料は出ないし、誰も私には感謝し ません。何これ? 何の罰ゲーム? なに?」
 虚ろな顔で呟く鈴鹿の姿に、道行く人が怪訝な顔をしていたが、彼女は気づきもしない。
「辞めたい。サイノカミ辞めたい。今すぐに」
「待て待て、鈴鹿よ。うぬもわかっとるじゃろ? ヨミを退け続けなければ、この地球はおろか、宇宙さえも砕かれる。アレがそういう存在で、歴代のサイノカミが、人知れず、戦い続けてきたことは、うぬの記憶にも刷り込まれて……」
「宇宙よりも、歴代サイノカミの遺志よりも、三十路の日常生活が大事よ。カムズミ。君は、三カ月に一度、見合い話を持って来られる三十路の気持ち を考えたことがあるの!? せっかくできた彼氏との約束に、サイノカミの役目で行けなくて、たったそれだけのことで別れ告げられた三十路前のあの夜の私の 気持ちを考えたことがあるの!? ば、爆発すればいいのよ、宇宙! 宇宙なんて! ボンよ!」
「待て待て。落ち着くんじゃ。うぬがそんなこと言うと、この宇宙は……。な? うぬも、その……好きじゃろ? 地球。だから……」
「宇宙よりも地球よりも、老後の自分を心配し始める歳なのよ!」
「いや、うぬ、まだイケる。若い。わしとかほら、数万年のサイノカミの意識の集合で……」
「お年寄りは黙ってて」
「お、お年寄り……!?」
「いいわよ。辞めてやるわ」
 眼鏡の下の目を座らせて、彼女は言った。
「わかってるんだから。あとを継ぐ者さえ見つければ、サイノカミ引退できるってことは。そう……そうすれば、私はただの女の子に戻れるのよ。だけど、失われた青春は帰ってこない。……そっか、帰ってこないんだ」
 足を止めて、鈴鹿は電信柱にもたれかかると、そこに爪を立てた。
「がえっでごないぃぃぃぃっ」
「おお……うぬの叫びはまさしく黄泉より響く亡者の呼び声の如し。いや、しかし、現実的な話。サイノカミの資質を持つ者は数少ない」
「がえっで、がえっでごないよぉ、青臭い日々も、切ない胸の鼓動もぉぉぉ。あるのは焦りと打算ばっがりぃぃぃ」
「うぬも知るとおり、先代のサイノカミも、四十まで戦っておった。じゃが……」
「それは知ってるわよ。でも……。ううん。だからこそよ」
 鈴鹿は電柱にもたれかかったままながら、真剣な目で月のない夜空を仰ぎ見た。
「今、引退したいの。普通の人になりたいの。そして、婚活もしたいの。婚活がしたいのよ! もう、絶対、趣味も合わなさそうな人との、形だけのお見合いなんて嫌なのよ! なんで、あんな身のない会話しなきゃいけないの!? 向こうもやる気ないの、見えてるのよ!」
「いや、いいから、うぬはちょっと声を落とさないと、警察呼ばれるぞ?」
 電柱に抱きつくようにしながら、うめく鈴鹿に対して、周囲の人々の視線は至極冷たい。
「あ、いや……。はは。ハンズフリーは、誤解を生むわね」
 独り言を言いながら、携帯電話を出して、もう一度、ポケットに直して、誤魔化した。
「もういいわ。今日は家に帰って、家飲みでも……!?」
 鈴鹿は言葉を止めた。その目つきは鋭く、道路を挟んだ歩道を睨む。
「ぬ? どうしたのじゃ」
「……これは。この気配はもしかして」
 電柱の影に隠れつつ、鈴鹿はその歩道へ視線を走らせる。
 彼女が見詰める先に、一人の少年がいた。
 高校生らしく、学ランを着た彼は、鞄を手にして家路を急いでいるようだった。
「鈴鹿よ。あれは……!」
「そうね。私は運がいいわ。それはもう、途方もなく運がいいわ! 今年の私はきっと、来てるのよ。そう言えば、おみくじも、待ち人来たるだったじゃない!」
 頷くと、鈴鹿は彼を追う形で歩きだす。
「見つけたわ」
 薄く口紅を塗った唇の端が上がった。

   ◆ ◆ ◆

 霧空洋二は困惑していた。
 学校の帰りに寄り道して、帰宅がこんな時間になったのが、まずかったのだろうか?
 そんなことを考えても、状況は変わらない。
「ちょっとだけ。ちょっとだけだからね」
「いや、その……困るんですけど」
 食い下がってくる女性を押しのけようとするが、彼女は容易には離れてくれない。
「大丈夫よ。迷惑はかけないからね。ちょっとだけ。ちょっとだけ、お話を聞いて欲しいな」
「いや、あのキャッチセールスとか、僕、困るんで。高校生なんで」
「あ。ふふふ。違うわよ。キャッチセールスとかじゃないのよ。ああいうのとは違うお話なんだから。だからね。少しだけ、三分だけでいいから、時間もらえないかな? ね? ね?」
 足早に歩いても、彼女はぴったりとくっついて来て離れない。
 心底迷惑そうな顔をしても、その顔に貼りついた笑顔は崩れない。
 彼女は、スーツを着込んだ、明らかにビジネスマン風の女性だった。
 営業スマイルとはいえ、にこやかな笑みを湛えた顔は整っている。どう考えても美人に分類される。近づいて来ると、香水なのか、シャンプーの残り香なのか、いい匂いがするし、タイトスカートから伸びる、黒く薄いストッキングに包まれた脚は美脚と言っていいと、洋二は思う。
 彼女がいない男子高校生として、本当ならもっと話をしたいところだったが、内容が内容だ。
 宗教の勧誘か、何かの販売、あるいはどうでもいいアンケート。
 洋二はそう考え、彼女を振り切ろうとするも、執拗なまでに彼女はついて来る。
「お願い! お願いだから! 三分聞いて、必要ないと思ったら、帰ってもいいから!」
「うぅ……」
 もはや、彼女は必死だった。
 懸命に笑みを浮かべているが、その目に尋常ではない何かが宿っていることは、洋二にもわかる。
 加えて、息が荒く、その必死さに、洋二はつい足を止めてしまった。
「あ、ありがとう! ありがとう! 本当にありがとうね」
「いや、その……。いいですから。とにかく、話聞きますから」
「君、イイ人だね! 本当にイイ人よ! 学校でも、イイ人って言われるんじゃない?」
 彼女は息を切らせたままで、曇りひとつない笑顔を見せた。額には汗が浮き、薄茶色の髪が貼りついている。
 その勢いに、洋二は少し狼狽える。
加えて、「イイ人って、言われてふられたことならある」と、心の内で苛立ちを覚えた。
「えっと。それで、何の用なんですか?」
「それはね! あ、まだ自己紹介してなかったわね。私は天宮鈴鹿って言うの。よろしくね。えっと……」
「あー。えっと、洋二でいいです」
 個人情報を出したくはなかったが、洋二はついつい名乗ってしまった。
 それ以上は絶対に何も言わないと、心の中で決意する。
「よろしくね。洋二くん。あのね。洋二くんにお話というのはね。ちょっとしたお仕事の話なの。興味はない?」
「仕事ですか? いや、だから、僕、まだ高校生ですし。バイトするには、ちょっと時間が……」
「大丈夫! 一カ月にほんの数時間だけ! あなたの都合に合わせることができるの! それに、何よりも、人の役に立つお仕事なの! 君は誰かのために、何かをしたい。大きなことを……そんなこと、考えたことない?」
「どちらかと言えば、あまりない方です」
「そうなんだ。でも、逆に言うと、これはチャンスよね。一カ月にだいたい一回、ほんの少しだけがんばれば、この世界の、宇宙船地球号の、誰かのためになる。そんなお仕事なのよ」
「はあ……」
 洋二はこれまで経験がないほど、胡散臭いものを見る目で、人間を見ていると自覚していた。
「正直な話をするとね。身入りは少ないの。でもね! 人の役に立つっていうのは、それだけで何かに満たれるものよね! 世界はね。愛でできてるの。本当は愛で満たされているのよ。ほら、ここにも愛! そのあたりにも愛!」
 洋二は少しずつ後ずさり始めた。
「どうしたの? 洋二くん。大丈夫よ。今、私は愛の話をしていて、その、ね? 全然、怪しかったりなんてしなくて、洋二くん! 洋二くん!!」
 ものも言わずに、洋二は背を向けて走り出した。
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