忍者ブログ
ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。 ここでは、主に商業活動、同人活動の宣伝を行っております。
twitter
プロフィール
HN:
八薙玉造
性別:
男性
自己紹介:
 ライトノベルをガリガリと書かせていただいている身の上です。

メールはtamazo☆carrot.ocn.ne.jpまで。(SPAM対策で@を☆に変更しています。@に直してお送りください) 
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ブログ内検索
最新TB
カウンター
忍者アナライズ
[404] [403] [402] [401] [400] [399] [398] [397] [396] [395] [394]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



10月14日の関西コミティアに参加します。

スペースはB-26『玉造屋バキューン』です。

今回は珍しくオフセットの新刊を用意しました。

『巫女さんはパンツが般若で狂った世界を救う』

長文タイトルっていうか、なんだかわからないよ!
そんな話です。
なお、健全極まりないのでご安心ください。

以下、今回の新刊のあらすじと、冒頭部分抜粋の予告編となっております。


■あらすじ
箸野草也(はしの・そうや)は、ある夜、神社の境内に、
クラスメイトの潟城桃(かたしろ・もも)を見かける。
彼女は巫女装束を着ていた。
そして袴をまくりあげて、パンツを露出。
そのパンツには赤い般若が描かれていた!
草也と桃の奇妙な関係が始まる気がする!


拍手


■予告編

 ボク――箸野草也が、路地裏から、坂の上にある神社の境内を見上げると、夜闇の中、街灯りにかすかに浮かび上がる木々の下に、巫女さんがいた。
 白い着物に、赤い袴のコントラストが鮮烈に目に飛び込んで来る。
 巫女さんは袴の裾を握っていた。
 彼女はそのまま、袴をたくし上げ始める。
 白衣と一緒に袴がまくり上げられるにつれて、白くて細い脚がどんどん露わになっていく。
 ゆるやかな曲線を描く腿のあたりまで、袴が上がる。
 両の腿の付け根に白い色彩が見えた。見えてしまった。
 それはもちろん、袴と一緒にめくれた白衣の白色とは違う。
「パ、パンツ……いや、ショーツ? つまり、パンツ」
 ボクは口走った。
 袴をたくし上げた巫女さんのパンツが目に焼きつく。
 その色は白衣と同じ、だけど、煌くような光沢を持つ白色。
 汚れひとつないパンツの、その清らかさにボクの胸は高鳴る。
 暗闇の中、街灯の光がそのパンツをくっきりと映し出す。
 だけど、そんなパンツの真ん中に般若がいた。
 眉間に刻まれた皺と、ギラギラと輝く目。
 裂けた口から覗く牙にも似た歯と、赤みがかった肌。
 そして、何よりも、額から伸びる二本の角。
 それは、能面の般若にそっくりな……というよりも、般若そのものだった。
 そんなものが、巫女さんのパンツの真ん中にデカデカと描かれていた。
 描かれていた?
 自分の言葉に違和感がある。本当に絵なんだろうか?
 なんだか立体的に見えるほど、リアルな般若がそこにいる。
 そして、ボクは気づいていた。
 坂の上にある神社の境内に一人佇んで、袴をたくし上げて、何故か般若が描かれているパンツを見せてしまっているのは、モモさん――潟城桃さんだってことに。
 潟城桃。モモさん。
 それはボクの憧れの人だ。
 そんな彼女が、恥ずかしそうに目を閉じて、頬を赤く染めて、ほんの少し身体を震わせながら、だけど、袴をたくし上げて、その般若、いや、パンツを高い場所から晒している。
 落ち着くんだ。
 ボクは自分に念じた。
 いくらなんでも、何が起きてるのか、ボクにはさっぱりわからない。
 こういう時はまず深呼吸だ。
「うっ」
 思いきり息を吸い込んだら、吐くのを忘れて過呼吸に陥りそうになった。
 ダメだ。
 やっぱり精神的な問題を、肉体的な手法で解決しようなんて、その考えが甘いんだ。
 落ち着くんだ。そう、落ち着く。
 そのためには、ちょっと状況を整理するしかない。
 般若のパンツをはいた巫女のモモさんが、パンツを公開せざるをえない。その理由を考えるには、モモさんがいつもしていたことが、きっとヒントになる。
 かわいい顔を羞恥に染めたモモさんを見て、ボクはいつものモモさんを思い出す。

 潟城桃さん。
 ボクと彼女は高校で同じクラスだ。
 黒い髪はくせひとつなくまっすぐで、腰に届くほどに長い。
 どこか儚げで清楚な印象を受ける彼女だけど、小さなことでもよく笑う明るさも併せ持っている。
 つまりは、一言で言うと、かわいい。
 人付き合いもよくて、よく喋って、みんなの真ん中にいる。
 勉強はできるし、体育の成績までいい。
 欠点なんて見当たらないのに、それを誇ることもない、そんな女の子だ。
 彼女の声が聞こえれば、ボクは自然に姿を目で追ってしまう。
 そんな彼女は、誰にでも話しかける気さくさも持っていた。それはもう、男女問わず、分け隔てない。

 ある日、ボクは授業でさっぱりわからないところがあって、授業が終わったあとも教科書を眺めていた。
 別に勉強熱心なわけじゃないけど、どこがわからないのかわからないという、変なツボに入ってしまったというか……ちょっとムキになってた気もする。
 ともかく、考えてみるものの、目の前にある数式が返事をくれるわけもない。
 しかたないので、面倒くさがられそうだけど、放課後にでも、先生に聞きにいってみようか。
 そんなことを思って、教科書を閉じようとしていた。
「箸野くん」
 かけられた声を他人と間違えるはずはなかった。
「潟城さん?」
 間違えるわけはなかったけど、言葉に疑問符がついてしまう。
 教科書と睨み合っていたボクのすぐ傍に、潟城桃さんがいた。
「どうしたの? 大丈夫」
 不安げに眉を下げて、潟城さんが身を屈める。
 長い黒髪がボクの近くで揺れると、なんだかよくわからないほど甘い香りがした。
 多分、シャンプーとか、そういうのだ。
 ボクは思わず身を強張らせる。
「い、いや。なんでもないよ。ただ……」
 ボクは苦笑する。
 潟城さんにこんなことを言うのは恥かしい。
「ちょっと、さっきの問題がわからなくて」
「えっと……。これ、難しいよね。わたしも考え込んじゃった」
 潟城さんも苦笑いする。
 そのまま彼女は、ボクに顔を近づける。
 潟城さんの顔がすぐ目の前にある。
 ボクはさらに緊張する。
 ゴクリと唾を飲む込もうとしたけど、舌は乾いてしまっていた。
 だけど、潟城さん本人はそんなこと気にした様子もない。
「あのね。ここを、Xに代入する形で考えればいいと思うよ。そしたら、他もわかってこない」
「え、えっと……」
 潟城さんに見惚れていたことに気づかれないように、一生懸命、脳を回転させる。
 言われたとおりにすると、それだけで他の式をどう動かせばいいのかがわかってくる。
「そっか! なるほど。ありがとう。潟城さん」
「どういたしまして。わたしも授業中、ウンウン言ってたから、つい口を出しちゃった。よけいなお世話でゴメンね」
 潟城さんは、申し訳なさそうに手を合わせると、身を離した。
 それだけのことがやけに寂しい。
 手を振って去って行く潟城さんの背中から、ボクは目を離すことができなかった。

 他にも、こんなことがあった。
「いや、ほんとにさ。あの映画、おもしろかったけど、ゼウスの奴はどうにかした方がいいよね」
「もとを辿れば、ゼウスが悪いもんな。アレスが不憫でならんぜ。なんでゼウスの奴、殴るの!?」
「だよね。でも、そこがおもしろいけど。ゼウス、自分には優し過ぎるとか」
 と、ボクたちは休み時間、昨日、テレビで観た映画の話をしていた。
 ギリシア神話をモチーフにしつつも、大胆解釈したアクション映画だ。多分。
 名作というわけじゃなくて、おもしろいけど、本当にそれでいいの!? まあ、いいけど!
 という、なんとも言えない感想を抱く映画だった。まあ、いいけど。
「ゼウスがさ。ちゃんと手を打っておけば、あんなことにならなかったよね。他の神々もすごく巻き添えもらってるし」
 と、話してると、ボクたちの後ろで「プッ」と、誰かが噴き出すのが聞こえた。
「それ、昨日の映画のお話?」
 不意に声をかけられて、ボクは驚いた。
 さっき噴き出したのは、潟城さんだったんだ。
「潟城さん、昨日のアレ観たんだ?」
 ボクだけでなく、友達も驚いていた。
 思い返せば拷問シーン多過ぎるとか、残酷なシーンもある映画だったから、清楚な印象の潟城さんが観ていたなんて、ちょっと意外過ぎた。
「うん。観たよ。わたし、映画観るの好きなんだ。色々観るんだよ」
 潟城さんはニコニコしている。
 本当に映画が好きなんだと、ボクは思った。
「ゼウス、かっこよかったよね。ちょっとエキゾチックなのがステキだった」
「うん。珍しいキャラクターだと思った。でも、かっこよかったら、ポカが許されるかって言うと、許されないと、ボクは思うけど」
「そうだよね。でも、わたし、そういうところ含めて、昨日の映画、大好きだなー」
 潟城さんは制服の胸元を抱くようにして、本当に嬉しそうに言った。
 そして、彼女は思い出したように、ポンと手を叩く。
「昨日の映画観たなら、ギリシア神話繋がりで、あれも観てない? 最近、続編もやってた方」
「ああ! 見た見た! 昔の映画のリメイクが一作目のやつな」
 思わず友達が喰いついた。
「あっちのゼウスも困った人だよね」
「ゼウスは神話の段階で困った人だからなー」
 そんな感じで、ボクたちは、映画の話なのか、ギリシア神話の話、ゼウスほんとろくでもないという話なのかもわからない感じで、そのまま盛り上がってしまった。
 潟城さんの意外なところを見ることができて、ボクは舞い上がって、何か色々言った気がするけど、あまり覚えてない。
 変なこと言ってなかったかな……。
 ゼウス、孕ませ過ぎ! とか、口走ってた気はするけど、教室で言うには……。
 いや、この話はこれ以上思い出すのはよそう。

 ともかく、そんなことがあった次の週、先月の話だけど、ボクは二日ほど高校を休んでしまった。
 何か事故に巻き込まれたりしたわけじゃなくて、単純に、初夏だってことで油断して、窓全開で、お腹出して寝てたら、寝冷えしたというだけの話だ。
 身体がダルかったのに、気のせいだと思って、夜更かしまでしたので、完全にこじらせた。
 そんなわけで、しかたなく学校を休んで寝込んでいると、お見舞いに来てくれた人がいた。
 気の利く友達がいたんだなーと思いながら、ドアをノックする音に、ベッドから身を起こして「どうぞ、入って」と言う。
「お邪魔します」
 聞こえてきたのは、予想外に女の子の声だった。
 母さんの声でも、姉さんの声でもない。
 え? 誰? 誰が来たの?
 混乱してるうちに、制服姿の女の子が部屋に入って来た。
 ボクと同じ高校の制服、セーラー服を着た黒髪の女の子だ。
「ゴメンね。いきなり来ちゃって。迷惑かもしれないけど、ちょっとだけ我慢してね」
 形のいい眉を申し訳なさそうに下げて、目を細めて微笑んでいるのは、ボクと同じクラスの女の子、潟城桃さんだった。
 実際のところ、声を聞いた時点で、潟城さんだとは思ったけど、潟城さんがお見舞いに来てくれるなんてファンタジー過ぎるので、ありえないと思ってた。
 でも、目の前には、確かに潟城さんがいる。
「え……? 潟城さん。なんで?」
「えっと……。わたしね。箸野くんと、家が近いの。だから、学校のプリント、色々あるから、まとめて持ってきたの」
 そう言って、潟城さんは、クリアファイルに挟んだプリントをボクに差し出した。
「わ、わざわざありがとう」
 応えながら、ボクは自分の部屋が散らかったままだということに気づく。
 うわっ!? どうしよう!? ああいう本とか、出したままじゃなかったっけ!?
 チラチラと部屋の中を見回す。
 幸い、あの手の本とかは、母さんが入ってくることを考えて、熱で苦しみながらも、秘密の隠し場所に放り込んでおいたので、事なきをえた。昨日のボクを心より褒める。
 でも、散らかってることは散らかってるので、恥ずかしい。
「ゴメン。すぐ、片づけるよ。こんな部屋で、ゴメン」
 言いながら、ベッドを這い出す。
「え? い、いいよ!? 風邪ひいてるんだから」
 潟城さんは慌てて首を振る。
「それに、散らかってないと思うよ。わたし、男の子の部屋入ったことって今までないから、わからないけど、多分、わたしの部屋の方がものがいっぱいで……。あ、でも、片づけてるんだよ? 片づけてもきれいになってくれないだけで、えっと……」
 潟城さんは恥かしそうにうつむいてしまった。
「あ、そ、そうなんだ」
 ボクはパジャマ姿のまま立ち尽くす。
 ボクの部屋に女の子がいる。
しかも、それは潟城さんだ。
その事実に、なんか熱が上がってきそうだった。
 頭が熱いのは、風邪のせいなのか、緊張のせいなのかわからない。
 こんなパジャマ姿なんて、ボクの方が恥ずかしい。
 汗臭くないかな。それに、お昼から歯を磨いてない。
 どうする? いや、なんかいやらしい意味じゃなくて、普通に喋って、口が匂ったりしたら嫌だし。
「そうだ。箸野くん」
「は、はい!」
 ボクは思わず背筋を伸ばした。
 そうしてるうちに、潟城さんは鞄の中をゴソゴソと漁って、何かを取り出した。
「あのね、これ」
 そう言って、潟城さんは、ルーズリーフを数枚差し出す。
 そこには細かく文字が描き込まれている。
ところどころ、蛍光ペンで強調された部分が鮮やかだ。
「箸野くんが休んでたところの授業。黒板の書き取りをちょっとだけアレンジしてるんだけど……」
「え? それ、ボクのために?」
「う、うん。余計なことかもしれないけど、でも、役に立てばいいなーって」
「ありがたいよ。とても、嬉しい」
 潟城さんの書き取りは丁寧に、見る人のことを意識して書いてくれたことが、ひと目でわかる内容だった。
 パッと見ただけでも、授業の流れがわかる気がする。
 でも、潟城さんはなんで、こんな手間のかかることを……。
 もしかして、潟城さんはボクのことを!? 
 一瞬、そんなことを考えた。だって、お見舞いにも来てくれるんだ。
 い、いや、それはいくらなんでも勘違いで、ほら、潟城さんってかわいいし、気が利く人なのはいつものことだし、いわゆるクラスのマドンナ的な……! それに、家が近いって言ってたし、いや、それ自体がボクに対する好意の表れで……
 やばい! 告白される!
 ボクは二つ返事でOKしちゃう!
「じゃあ、箸野くん。長居したら身体に障ると思うから、もう帰るね」
 そう言うと、潟城さんはペコリと頭を下げた。
 ボクは我に返る。
 そうですね。
「あ、う、うん。ほんとうにありがとう。潟城さん」
「ううん。困った時は助け合いだよ。あ、そうだ。箸野くん」
 言いつつ、潟城さんはなんだか言葉に詰まった。
 その頬がほんの少しだけ赤い気がした。
「なに? 潟城さん」
「え、えっと。あのね。嫌じゃなかったらでいいんだけど、名前で呼んでもらっていい……かな?」
「え、ええっ!?」
「お、大げさな意味はないんだよ!? でも、ほら、同じクラスになって、ずいぶん経つから、もっとフランクな感じがいいかなって、そ、そう思っただけで!」
「そ、そっか! そうだよね!」
 うつむいてしまった潟城さんが、こちらを上目使いにチラリと見る。
「あ……。い、嫌だったらいいんだよ。無理しないで。馴れ馴れしいのとか、嫌いなら、わたし……」
「い、嫌じゃないよ。潟城さ……いや、桃」
「モモッ!?」
「ち、違う! モモさん! モモさんとか、どうかな!」
 呼び捨てとか、危うかった。
 さすがにそれはない。 
 ちゃん付けとかも頭をよぎったけど、それもあまりに馴れ馴れしい。
「う、うん。いいんじゃないかな。あ、ありがとう。わがまま言ってゴメンね」
 潟城桃――モモさんは照れた笑みを浮かべていた。
 ボクもほっぺたが熱かったのは、どう考えても風邪のせいじゃない。
 というか、風邪のこととかもう忘れてた。
「それじゃ、帰るね。箸野くん。また学校で。今日はゆっくり休んでね」
「うん。明日には行けるといいな」
 そのまま、モモさんが部屋を出て行くのを、ボクは見送ろうとして、思わず口を開いた。
「あ、そうだ。モモさん」
「ん? なぁに?」
「ボクのことも、名前で呼んでよ。箸野草也。ソウヤって」
「あ……。そうだね。うん。名前で呼んじゃうよ。ソウヤくん」
 そう言って、モモさんは目を細めた。
「ちょっと照れちゃうね」
 モモさんが小さく舌を出す。
 ただ、呼び方が変わっただけ。
 でも、ボクはモモさんとの仲が深まったみたいで、とても嬉しかった。

 モモさんはボクと親しくしてくれる。
 誰とでも仲がよくて、いつでも楽しそうで、何よりもかわいい。
 そんなモモさんが、ボクは好きだった。
 同じ学年だけど、憧れていた。
 清楚で明るい黒髪の同級生。
 それが潟城桃さんだ。

   ◆ ◆ ◆

 そんなモモさんが、何故か巫女装束を着て、しかも、袴を大きくたくし上げて、そして、そのパンツは般若だった。
 さらされた般若が夜の闇の中に赤く浮かび上がっている。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
忍者ブログ [PR]