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ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。 ここでは、主に商業活動、同人活動の宣伝を行っております。
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 ライトノベルをガリガリと書かせていただいている身の上です。

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続けての宣伝になるのですが、関西コミティア34参加します。

5月24日(日)
B-28『玉造屋バキューン』

新刊に、短編コピー誌『熊殺しの恋を応援しよう!』を用意しております。

そんなわけで、原稿が完成しましたので、予告編掲載します。
短編では、変化球というか、普段やらないことをやってみることが多いのですが、
今回は特に黒い部分が作用しちゃって、どういう風に読まれるんだろう……なお話です。

ぱっと見、いつもどおりっぽいですが!

■あらすじ
熊子はかわいい。
少し大きめの眼鏡が似合う、大人しそうな女の子だ。
ただし、一子相伝、一撃必殺の必殺拳を使うので、ツキノワグマぐらいなら瞬殺可能だ。
そんな熊子がある日、神妙な顔で、俺のもとへやってきた。
それは、熊子の恋愛相談だった!

どこまで本気かわからない、ラブコメのような気がする短編。

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■予告編

熊子はかわいい。だから、舐めたい。
 名前はベヤーだが、見た目はまるで違う。

少し大きめの眼鏡が似合う、見るからに大人しそうな女の子だ。

熊と言うにはあまりに小柄な彼女は、実際、性格も穏やかで、声を荒げることも、変な方向に興奮しない限り、あまりない。

 腰にまで届く長い黒髪が、清楚な印象に拍車をかけていた。

 ただし、高校生三年生にして、一子相伝、一撃必殺の必殺拳が特技なので、ツキノワグマぐらいなら秒殺する。

 例え話だが、うちの近所は田舎なので、猪がよく出る。

 そんな時、俺たち、普通の人間ならどうするか? 

 せいぜい刺激しないようにして、向こうから逃げてくれるのを待つか、ゆっくりと後退して距離をとっていくか、危険を覚悟で一目散に逃げ出す……そんなところだろう。

時々、クワを振り回す爺さんもいるけど、それは数少ない例外だ。

 だけど、熊子は違う。

 迷わず踏み込み、拳を放つ。時々、蹴りのこともある。

 その夜、熊子の家では、夕飯のメニューがボタン鍋に変更になる。

 挙句、うちの近所は田舎なので、山を歩けば熊に出会うこともある。

 当然、熊子は強く踏み込み、激しく拳を叩き込む。時々、ハイキックのこともある。

「おいしいのって、熊の掌だった? どう食べたらいいかわかる?」

 目を輝かせてそんなことを言い始めた熊子だが、その時の俺が、これは密漁じゃないかと、ヒヤヒヤしていたことは言うまでもない。

 

   ◆ ◆ ◆

 

 そんな熊子がやけに真剣な顔をして、俺の前にいた。

 何か言いたそうにしているが、ふんぎりがつかないのが、「うーん」「ふーむー」と、変な声で鳴いている。モジモジと指を合わせている仕草がなかなかかわいい。

「あの……。あのね」

 意を決したのか、熊子が話し始めた。 

 昼休みの屋上にはあまり人がいない。とはいえ、解放されていることをいいことに、俺たちと同じく四月の青空を眺めながら、弁当でも食べようというピクニック気分の奴らが多少いるので、それを気にしてか、熊子は声を潜めていた。

 誰かが聞き耳を立てていないか、周囲をうかがってから、深呼吸する。

 多分、今、気配とかで、この屋上に何人の人間がいて、どんな行動をしているか読みきったに違いない。

「うー。えっと……」

「既に十分ぐらいそんな状態なんだが。昼休み終わるまでに、ちゃんと話せるのか?」

「うう……。そうなんだけど。でも、むー」

 熊子の顔が赤くなった。頬だけでなく、耳まで朱に染まっている。

 きっと、恋愛の相談だ。

「お、男の子と知り合いになるのって、どうすればいいのかな?」

「いや、俺、俺。知り合い、俺」

 両手を回して自己主張しつつも、本当に恋愛相談だったので、少々ビックリしていた。癪なので、そんな表情、顔には出してあげない。

「あ、うん。そうなんだけど、そうじゃなくて。確かに知り合いというか、友達だけど、でも、違うの」

 熊子もまた両手をバタバタと振り回して否定する。

「うん。まあ、だいたいわかった」

 二人して手をバタバタしていると、パントマイムのようなので、とりあえず、俺は頷いた。

「得意の必殺拳で爆殺したい奴がいる。血と皮だけのズタ袋にしたい奴がいる。どうしても、殺さなきゃいけない憎い奴がいる! そうだろう?」

「違う!? 爆殺したいのは、今、君だから! むしろ」

 熊子が拳を握ったので、俺は距離を開けつつ「すいません。違います」と、素直に謝罪した。

 あの拳が触れたが最後、気とかそういうものの作用で、人体は内部から崩壊、粉々に吹っ飛んだりすることもある。

「……まあ、マジメな話だとすると。つまり、好きな奴でもできちゃったのか」

「……っ!?

 ビクンと背中を跳ねさせると、熊子は俺の言葉を誰かが聞いていなかったか、周囲をうかがい。それから、自分の唇に人差し指を当てて、「シーッ!」「シーッ!」と、声を潜めるように言った。

 顔面真っ赤で、そんなことをする姿があまりにかわい過ぎる。

 舐めたい。

 かわいいものを見たら、舐めたくなる。それが俺の性癖だ。

 でも、舐めたのが指とかだとしても、必殺されるので、我慢する。

「じゃあ、告白しちゃえばいいんじゃね?」

 小さな声で言うと、熊子はまたブルブルと震えた。

 鼻血でも出しそうなぐらいに顔が赤い。

 出したら舐めるしかねえと思ったが、まだ出ない。

「……で、で、できないよ。だって、ほら、わたし、ちゃんとした面識とかもないから。その……男の子と」

 本当に恥ずかしそうに両手で顔を覆う。

 ますます舐めたい。しかし、隙だらけに見えても、俺は既に必殺拳の射程内にいるのだ。

 命か? 舐めるか?

 今はまだ命を選ぼう。

「で、それは誰なんだ?」

「え、いや、そ、それは。それはね……」

 戸惑いながら、熊子は視線を泳がせる。

「……言えないよ」

 恥ずかしそうだが、まんざらでもない顔で言う。

「それじゃ、相談に乗りようもないだろ」

「だって、恥ずかしいから……。とても……」

 うつむいた熊子の背中が震えていた。

「……わたしが死ぬか、あの人が死ぬか……」

「まあ、待て。とりあえず、話をしよう」

 あまりに思い詰めたことを言うので、焦って止めた。

 熊子が顔を上げた。目尻には涙が滲んでいるが、その表情は輝いている。

 いくらなんでも現金だが、かわいいのでしかたない。涙も舐めたい。

「とりあえず、告白とかは後回しで、知り合いになりたいわけだな。交流を深めるというか、まずは友達から始めるというか……」

 どこかで、友達から始まると、一生友達だとか、夢のない話を聞いたことがあるが、そんなものは個人差だろう。

事実かもしれないが、夢がなさ過ぎて嫌いだ。そんなこと言い出した奴は死ねばいい。

「そうそう。わたし、まだ、ほとんど話したことがないから。少しでも、お話できる時間が増えたら、それだけで嬉しいなーって」

「謙虚だなあ」

 言いつつも、なんだかんだで、その後、付き合えたらいいと思ってるんだろう。

 そうでなければおかしい。まあ、わざわざそんなこと口に出して言わないけど。

「そうだな。じゃあ、とりあえず、自然に話ができる状態に持ち込もうぜ」

 具体的に提案してみた。

「自然に?」

「そう。例えば、同じクラスなら、一緒に帰ろうって誘うとか」

「……う、噂とかになると恥ずかしい」

 いや、仲良くし始めたら、普通、噂とかになるだろ。

そうツッコミたかったが、本当に恥ずかしそうな仕草が舐めたかったので、あえてまた口にしない。

 何かの間違いで必殺されると困る。

「じゃあ、そうだなあ……。誘うのが恥ずかしいなら、帰り道で偶然を装って会ってみるとかどうだろう? 「あれ? 熊夫(仮)君。今、帰りなの? 帰る方向同じなんだね。せっかくだから、途中まで一緒に帰らない?」とか」

「声色とか作らなくていいよ……」

 迫真の演技に冷たい対応をされた。

「いいと思うけど……。でも、恥ずかしいのとは別で、それ、ダメなんだ」

 熊子が深いため息をつく。

「なんで?」

「帰る方向違うの。家、全然逆方向で。わたしだって、あの人が家出る時間や、帰る時間やルートも、三日に一度は帰り道にガリガリくん買うってことも、ゲーセンに寄り道すること多いけど、格闘ゲームの腕前が凄くて、一度ゲームのシステム把握すると、平均でも八人以上は抜くようになるとか、でも、そういうの慣れ過ぎてるからかな? ちょっと飽きっぽいところがあるみたい。ガリガリくんはいつもソーダ味なのに、変だよね? 雑誌、何買うかも、ちゃんと見たよ。……えっちな雑誌は体操服特集だった。やっぱり、ちょっと変だよね?」

「変だな」

 熊子が。

「それ、明らかにストーキングだよな?」

「だ、だって……。我慢できなかったから」

「……まあ、俺は別にいいけど。やっぱり、気配とか消すから、見つからないのか?」

「さあ? 必殺拳のおかげなのかなあ?」

 時に、悪の限りを尽くす政府の重鎮を暗殺することもある、必殺拳の使い手だ。

 暗殺に比べれば、ストーキングもいたしかたないのかもしれない。まあ、つけてるだけで、まだ、迷惑にはなっていないはずだから。

「ところで、そいつ、同じクラスの奴なのか?」

「ええっ!? ど、どうして!?

 熊子が焦った声を上げた。

 別に当てずっぽうでも、カマをかけたわけでもない。

 熊子は、さっきから、チラチラと視線を逸らしている。

 その先を追うと、うちのクラスの窓が見えたのだ。

 屋上からでも、窓際に何人か生徒たちの姿が見える。

 そこに、男前というか、顔のいい奴も混ざっているのだから、ああ、そいつなのかなあとか、思ったりもするのはしかたない。

「同じクラスだけど……。でも、それ以上は言えない……。迷惑とか、かけちゃうのやだから」

 ストーキングは迷惑行為だと言いたかったが、我慢した。

「しかしまあ……。そこまで相手の行動パターン掴んでるなら、一緒に帰ろうって話じゃなくても、学校の外で、一人でいる時に会うのはどうだろう?」

 いつもと違う道を通っていることなど、買物でも、寄り道でも、なんとでも言い訳はできる。

「……そっか。そうだね。そんな手があるの、わたし、気づかなかったよ」

 熊子は心底感心した顔で頷いていた。

 熊も一撃で殴り殺し、戦いにおいてはどのような駆け引きもこなす熊子だが、恋は盲目とはまさにこのことか。

 眼鏡がずり落ちそうになっているのにも気づかず、しきりに頷いている熊子をたいへん舐めたく思った。

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