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ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。 ここでは、主に商業活動、同人活動の宣伝を行っております。
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 ライトノベルをガリガリと書かせていただいている身の上です。

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ということで、今回も『関西コミティア38』参加します!

新刊の製作は順調に進行中……なので、スペース情報と、
新刊の予告編、掲載します。


5月15日(日)

K-35 玉造屋バキューン

新刊は短編コピー誌、『キャラ作ってんじゃねえよ!!』

ラブコメです!
わりと変化球やほとんどテロ状態のラブコメが多いうちの小説ですが、
今回は正真正銘、ラブコメになってると思います。

例によって、以下に予告編を掲載していますので、
気に入っていただけた方はぜひぜひお越しくださいませー。


■あらすじ

冷たく、そして、美しい……。
噂のお嬢様、南蔵院耶麻(なんぞういん・やま)はある日、
後輩の少年に告白される。
冷たくあしらい、彼に試練を課す耶麻。

……しかし、実のところ、耶麻はそういうキャラを作っているだけだった。
彼女の幼馴染、桜岡半蔵(さくらおか・はんぞう)が、
とばっちりを受けて、色々がんばったりするラブコメ短編!

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■予告編

「待ってくれ! だ、大事な話がある!」
小林鉄人(こばやし・てつと)は彼女の前に立ちふさがった。
短く刈った髪とそれに見合う精悍な顔つき。
しかし、まだ高校一年生ということもあり、少し幼さを残した彼の顔には緊張の色が濃い。
ブラウスの襟元や半袖の袖口からは、鍛えられていることがわかる身体が覗く。身長こそ高くないものの、引き締まった彼の身体は今、ガクガクと震えていた。
真夏が近い今、寒さに震えるわけはない。
鉄人は空手の試合でも、そのへんの不良相手の喧嘩でも、怯えたことなどなかった。
そんな彼が今、自分でも理解できない極度の緊張と、噴き上がってくる諸々の感情に、崩れ落ちそうなほどに身を震わせていた。
武者震いではない。
「あなたは誰?」
鉄人の前に立つ少女が言った。
腰にまで届くほど長い髪は、月のない夜のように暗黒い。初夏の太陽の下でも一切、煌めかない髪は、光全てを吸い込んでいるかのようだと、鉄人は思った。
綺麗に揃えた前髪の下、細く形よい眉がまっすぐに伸びる。
その顔はまるで美術品のように整っている。しかし、表情はなく、冷たい印象すら受ける。
髪と同じ黒い瞳に、鉄人の顔は映っていない。漆黒の瞳は、畏怖を覚えるほどに強い意志を宿しているように、鉄人は感じざるをえなかった。
「私に何か用?」
彼女、南蔵院耶麻(なんぞういん・やま)が赤く艶やかな唇で告げる。
耶麻は鉄人よりも背が高い。高校三年生だというだけではなく、単純に、男性にも負けないほどの長身だ。
加えて、夏服のブラウスの上からでも、そのプロポーションがあまりに恵まれていることがよくわかる。
組んだ腕の上で、胸の膨らみがその存在感を露わにしている。しかし、腰は細く引き締まり、長いスカートからはすらりとした足が伸びていた。
あまりにも完璧で、常人からかけ離れた美貌に、鉄人は喉の奥が乾いて貼りつくような感覚を覚える。
「い、いや、その、俺……ですね……」
喋り方を忘れてしまったかのように、口ごもる鉄人を、耶麻はそのあたりにあるゴミでも見るような、冷たい目で見下ろしていた。
「お、俺、会ったことあります。その、話したことはないんですけど。南蔵院さんに……」
鉄人のかすれた声に、耶麻の周りにいた女生徒たちがクスクスと笑う。
耶麻の取り巻きなのだろう少女たちは「それ、会ったうちに入らないわよ」「南蔵院さんの邪魔しないでよ」と、口々に鉄人を嘲笑った。
「南蔵院さん。この子、一年の小林鉄人です。空手が強いらしいですけど、南蔵院さんと話そうなんて、そんな身の程知らずな……」
少女の言葉を遮り、耶麻の手がすっと横に伸びる。
それだけの動きに、取り巻きの女生徒たちは自然と言葉を止めた。
「聞くわ」
「あ、ああ……」
耶麻の言葉に、鉄人は辛うじて応えた。
言葉にしなければならない。
萎縮する我が身を叱咤し、鉄人はもう一度口を開く。
「南蔵院さん。俺と……俺と、一対一で話をしてください。お願いです」
鉄人は辛うじて、耶麻の目を見詰めて言った。
彼の言葉に、耶麻の唇が小さな吐息を漏らす。
どこか物憂げな、その仕草だけで絵になる。鉄人は見惚れてしまっていた。
取り巻きたちが声を上げようとしたのを、彼女は一瞥で制し、鉄人に背を向ける。
「いいわ。いらっしゃい」
「は、はい!」
取り巻きとは違い、膝下まであるスカートを揺らし、歩き出す耶麻に、鉄人はついて歩く。
耶麻と鉄人という組み合わせに、あるいは耶麻の姿に、廊下を行く生徒たちが振り返るが、彼女は気にも留めない。
耶麻と鉄人はそのまま、校舎の裏に出た。
放課後ということもあり、そこには二人のほか、誰もいない。
立ち止まると、耶麻は鉄人の方に向き直る。
二人の間に、沈黙が降りた。
部活のかけ声や、まだ学校に残っている生徒たちの談笑が遠くから聞こえてくる。
耶麻は腕を組んだまま、鉄人の言葉を待っていた。その顔には何の表情も浮かんでいない。
「あ、あの。南蔵院さん。お、俺、俺は……!」
鉄人は息をするのも苦しかった。
心臓が激しく打ち鳴り、眩暈すら覚える。
それでも、彼は自分の言葉を待つ耶麻のために、自分の想いを伝えるために、勇気を振り絞った。
「南蔵院さんのこと、す、好きなんです! す、好きで……その、あれです。好きだから……」
「……そう」
鉄人の言葉にならない言葉に、耶麻はただ一言、そう呟いた。
彼女は眉ひとつ動かすことなく、鉄人を見下ろしていた。
沈黙の後、彼女の唇の端がかすかに動いた。
「あなたが、私に相応しい男だと。あなたはそう言うの?」
「い、いや! 相応しいかどうかなんて……。お、俺は! でも、好きなのは、絶対に誰にも負けなくて!」
「負けない?」
「そ、そう。誰にも負けない! 俺はあんたに惚れてたんです! 綺麗で、なんか、こう……他のうるさい女たちと違ってて……! 遠くから見てたけど、でも、こうして話とかしてみたかったんです! だから、俺は……!」
「そう」
一言そう呟くと、耶麻は鉄人に背を向けた。
「な、南蔵院さん!」
「証明してみせて」
言い残すと、彼女は鉄人を振り向きもせずに歩き出していた。
「証明?」
「あなたが私に相応しい男だと。私を好きだと言うなら、証明してみせなさい」
「お、俺……!」
鉄人が応えることができぬ間に、彼女は校舎の中へ歩み去ろうとしていた。
長い黒髪が校舎の影に消えていく。
「俺、やるよ! やってやるよ! 絶対に、認めさせてやる!」
鉄人の叫びに、耶麻の返事はなかった。

◆ ◆ ◆

「半蔵―! 半蔵―! はんぞうーっ!!」
惰眠を貪っていた桜岡半蔵(さくらおか・はんぞう)が反射的に身を起こそうとした時には、既にドアを開けて、耶麻が部屋に飛び込んできていた。
部屋の主、半蔵の了承はおろか、ドアのノックすらない。
あげく、彼女は長く綺麗な黒髪を振り乱し、ベッドの上で昼寝していた半蔵の上に着地する。
「おふうっ!」
腹の上に座られて、半蔵の喉から変な息が出た。
「半蔵! 半蔵ー!」
「繰り返すな、アホッ!」
思わず思いきり身を起こすと、耶麻がベッドから転げ落ちた。
半蔵ははっきりと、彼女のパンツを見た。黒だ。レースがあしらわれ、実に雅。
「痛い! 頭打った! 痛いよ、半蔵!」
「うるさい! てめえ! ノックぐらいしろよ! 年頃の男が、なんかえらいことしてたらどうすんだよ!」
パンツを見たことは口にしなかった。
「え、えらいこと?」
整い過ぎている顔に涙を浮かべて、耶麻が上目使いに、半蔵を見上げる。
「説明なんてしてやらん。とにかく、お前は……」
「そんなことより、聞いてよ、半蔵! どうしよう! 私、どうしよう!」
「そんなことって、お前……」
「わ、私……! 私、告白されちゃった!」
鼻と鼻がくっつきそうなほどに詰め寄る耶麻のデコをつかんで、半蔵は距離を離す。
「告白って……。まあ、いいことじゃないのか?」
「そ、それは、いいけど! いいけどね! でも、告白されちゃったの! 小林鉄人って、一年の子に告白されちゃったの!」
「関係ない人間に、フルネーム喋ってやるなよ。そもそも、それと、俺の寝込みを襲うのにどう関係があるんだよ」
「だって、告白されるとか、初めてなんだもん!」
「初めてなのか?」
「そう! 初めてなの! だから、私、どうしたらいいのかわからなくて! それで、半蔵に相談に来たの!」
「俺が何できるんだよ。そもそも、お前……あんなキャラ作ってるから、顔イイのに、全然、告白されないんだろ。なんだ、あの冷たいお嬢様っぽいキャラ。ボクは見るたびに、吹きそうになるんだが」
「吹かないでよ! わ、私も考えがあって、やってるんだから! ああいうキャラ作ってたら、トラブルに巻き込まれなかったりするんじゃないかっ て。あと、こういう告白とかも、きっとないよね? そう思って、確固たる信念でやってるんだから! キャラ作りのために、勉強も体力作りもがんばってるん だから!」
「どっちかと言うと、的外れだ! そもそも、ボクにどうしろって言うんだ! お前への告白なんだろ?」
「そ、それはそうだけど……」
床の上に座り込むと、耶麻はうつむく。
「でも、半蔵、協力してくれてもいいと思うな……。ちょっとだけだから、協力してくれても、バチは当たらないと思うな。だって、私、半蔵のお姉さんみたいなものだし……。お姉さん助けるのって、当然じゃないかなーって」
「血も繋がってなければ、一年しか違わないだろ」
半蔵は、そもそも、ただの幼馴染じゃないかと言おうと思ったが、耶麻が泣きそうな顔で見詰めてくるのでやめた。
困り果てた半蔵は天井を仰いで、頭を掻く。
「まあ……。お前のそういうのは、今に始まったことでもないか」
「うん。今に始まったことじゃないよね」
「褒めてねえよ! 一切、褒めてねえ!」
言いつつも、まさにそのとおりだと、半蔵は溜息をついた。
耶麻は外面がいいというか、極端にキャラを作っている。
だから、学校では、半蔵は耶麻の取り巻きの一人程度に認識されているわけだが、実際はこのとおりだ。
「ボクがなんとかしてやらないと、お前、ほんと、ダメだからなあ」
「うん! 半蔵がいないと、私、ダメなの」
「嬉しそうな顔して言うなよ!」
半蔵がそうつっこんでみても、耶麻はニコニコとしていた。
学校での仏頂面は詐欺にもほどがある。
「じゃあ……。とりあえず、その小林鉄人って奴のこと調べてみるか。なんか、変な奴だったり、危ない奴だったら、困るしな」
「やった! ありがとう、半蔵!」
耶麻は両手を上げて喜ぶと、「あ、そうだ!」と、ポケットをゴソゴソと探り始めた。
中から飴玉がひとつ出てくる。
「あげる」
「やーったー」
半蔵はとりあえず、喜んでみたが、苦虫を噛み潰したと形容できる表情をしていた。
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