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ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。 ここでは、主に商業活動、同人活動の宣伝を行っております。
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八薙玉造
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 ライトノベルをガリガリと書かせていただいている身の上です。

メールはtamazo☆carrot.ocn.ne.jpまで。(SPAM対策で@を☆に変更しています。@に直してお送りください) 
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巫女さんが安易に人を殺めるライトノベルを書くサークル『玉造屋バキューンです』
(最近考えた名乗り)

コミケ92に参加します。
8月13日(日) 東P-33a『玉造屋バキューン』です。

新刊は短編『巫女さんを見るボクの欲望と、ボクを見る巫女さんの欲望』
あらすじは後述しますが、表紙に表示をつけているとおり、それなりに性的だったり、グロテスクだったりする表現があります。
そのあたりが大丈夫な方にはきっとおもしろいと思います!

以下にあらすじと、序盤を収録した予告編を掲載しますので、おもしろそうだと思っていただけたら、ぜひぜひお越しください!

■あらすじ
蒼太朗と、巫女の千世は仲睦まじいカップル。
若干ピュア過ぎる微笑ましいお付き合いをする二人。
しかし、蒼太朗は千世を殺したいという欲望を秘めていた!
そんな秘密を秘めた蒼太朗と、まだ手を繋いだことしかない彼女――千世のただならぬ関係を描くお話!


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■予告編

 この物語はフィクションです。
 実在の団体、人物、宗教、心情とは一切関係ありません。

 
「あ、あぁぁ……」
 白い喉から、今にも途切れてしまいそうなか細い声が漏れる。
 乱れて胸元が大きく開いた巫女の白衣と、肌着である襦袢はぐっしょりと濡れていた。ふたつの膨らみを巫女装束によく似合う、飾りけの少ない薄桃色の下着が辛うじて隠している。
 組み敷かれた身体を捩って、彼女は甘く吐息する。
 その香りを鼻孔で味わいながら、唇を湿らせて突き出された彼女の舌に舌を絡める。唇を重ねて白い歯も歯茎も貪る。
「……ん、ふ、んん」
 粘質の水音が鳴る。舌が絡み合うたびに響く。
 汗の酸味と呼吸の甘さ、唾液独特の香りが混じり合うことで、空気は粘り気すら帯びていく。
「どう、して……」
 彼女の声がかすれる。
 唾液に混じる苦い味わいと、鼻を突く鉄錆に似た匂い。
 唇を離せば、舌と舌の間に引く糸は赤い。
 立ち込める鉄錆の香りの中で、襦袢を濡らす赤い液体がじわじわと広がっていく。巫女装束の白衣もまた赤く染まり始めていた。
 白衣と襦袢と下着、その下にある真っ白な肌。日焼けもしていないそこに刃物が刺さっている。根本までしっかりと刺さっているナイフは血の光沢でぬるりと輝いていた。裂かれた皮膚から鼓動のたびにあふれる血潮は周囲を汚し続けている。
 ナイフの柄にもう一度手をかければ、細くも引き締まった身体はビクビクと悶えた。
「まだ死なないで。お願いだから」
 思わず懇願した。死んでしまえば、何もかも止まってしまう。
 物足りない。もう少しだった。
 身体の奥深くからこみ上げてくる熱くて甘い疼きは今にもあふれてしまいそうだ。
「う……」
 彼女の血に濡れた自分の唇を噛んで、畳の上に爪先を突っ張って堪える。
 まだ、もう少し――。
「もっと、その顔が見たい」
 深く息を吸い込む。血と汗と涙が混然一体となった香りが肺を満たしていく。身体が震える。
「匂いも、姿も、声も」
 ナイフをグッと押し込んで引く。ブチブチという感触。
「――っ! あ、あーっ」
 首を左右に振り、黒髪を乱し、もう声にすらならない声を上げて唇の端から血と涎の泡を垂れ流す。
「あぁ……」と想いが吐息となった。
 この一瞬のために生きている。そのためなら、何もかも投げ捨てても構わないし、どんな努力だってしてみせる。
 歓喜を逃さないように唇を噛みしめたまま、さらにナイフを蠢かせた。
 
   ◆ ◆ ◆
 
 九州、宇佐神宮を総本宮として、全国に四万社が存在する八幡宮。
 都内にある八幡宮の一社が、この渋木八幡宮だった。
 規模は神社としては中規模程度だと思う。つまりは街角にある神社よりは大きな敷地の神社という感じだ。
 白壁に囲まれた境内を、ボクは鳥居の傍から眺める。
 夕方の境内は夕焼けに優しく照らされている。都内にしては高い建物がない周囲の環境と相まって、やけのどかな光景に見えた。それを見るスーツ姿のボクはどう見えるんだろう? 見た目どおりの会社帰りの二十代に見えるだろうか?
 汗で少しずり落ちていた眼鏡を押し上げ、いつものように、鳥居に向かって一礼する。
 それから鳥居を潜って境内に足を踏み入れる。
 拝殿へ続く石畳と周囲に敷かれた玉砂利はいつもと何も変わらない。
 まず鳥居のすぐそばにある手水舎に向かう。
 小さな屋根の下では、竜の飾りが口から水を流し、水盆に新しく清らかな水を溜め続けていた。
「蒼太朗くん」
 ボクの名前を呼ぶ声に振り返った。
 一人の巫女さんがそこに立っている。
 長く伸ばした黒髪。水引で結った髪の先端だけは少しクセがある。
 こちらを見る瞳はやや勝気な印象だけど、その奥の感情にも、口元に浮かべる微笑にも柔らかで優しげな雰囲気があった。
 少し小柄な彼女には、夏の夕日にほのかに染まった巫女装束がよく似合っている。
「こんばんは。千世さん」
 思わずボクも微笑んでしまう。
「こんばんは……には、少し早いかもね。でも、こんばんは」
 巫女さん――千世さんははにかみで返してくれた。
 夕日を仰ぐ。
 時刻は午後五時過ぎ。冬はともかく、夏の場合、夜の挨拶には気が早い。
「待ち合わせの時間にも少し早かったね。出張のほう、午前の仕事は早く終わったし、直帰できたからそのまま来ちゃったんだ」
 手にしていた紙袋を千世さんに見せる。
「おみやげもあるよ」
「嬉しい」
 千世さんは目を細める。大人だが、素直なその姿はどこか子どもっぽくもある。そんなアンバランスさも千世さんらしい。
「あ、でも。ゴメンなさい。わたしのほうはまだお仕事があるから」
 千世さんは両手でダンボール箱を抱えていた。神社に届いた荷物らしい。
 巫女装束には似合わないけど、そういう作業だってある。
「ううん。いいんだ。早くこっちに着いたから、先に寄っただけで」
 鳥居の向こう、街へ目をやる。
「いつもの喫茶店で本でも読んで待ってるから。帰りの新幹線で読んでたけど、いいところで止まっちゃって。だから、気にしないで。仕事が終わってから、ゆっくり来てくれればいいから」
「うん。ありがとう」
 千世さんは手にしていたダンボールを持ち直す。少し重いものらしい。
「手伝おうか?」
「残念。部外者にはお願いできないの」
 冗談めかして言う。
「残念だ。それじゃ」
「ええ。また後で」
 顔を見合わせ、互いに頬を綻ばせる。
 むず痒いような妙な心地。なんとなく照れる。
 千世さんはペコリと会釈すると、重そうなダンボールを抱えて社務所のほうに去って行った。
 ボクはボクで、途中だった手水を続ける。
 手水舎に備えられている柄杓を右手で持つ。
 竜の口から流れる水を柄杓に溜めると、まずは左手を洗う。
 それから柄杓を左手に持ち替えて右手を洗い、柄杓はまた右手に。
 左手に水をそそぐと、それで口を漱ぐ。続けて口をつけた左手をもう一度洗い流す。
 最後は柄杓を立てることで、残っていた水を流して柄杓自体を清める。
 参拝の前に自らを清める。かつては禊として川や池で穢れを落とした。その役割を果たすのが手水舎だ。
 ……と言っても、堅苦しい作法というよりは、ボクのような一般の参拝者にとっては、マナーを守った上で身も心も清らかになって参拝する気分を味わえるありがたい場所という印象だ。
 出張の、旅の穢れを落としたどこか身軽な心地で拝殿に参拝する。
 渋木八幡宮は神様を実際にお祀りした本殿の前に、参拝者がお参りできる拝殿があるという多くの神社と同じ形をしている。
 賽銭箱にお賽銭を入れる。出張の間、トラブルもなかったので、今日は少しだけ奮発して五百円。
 それから、鈴を鳴らして、二礼。気持ちしっかりとおじぎをする。
 二拍手。二度手を打ち、ボクの住所、名前に続けて旅路をお守りいただいたお礼と、いつも願っている事を心の内で告げる。
 最後に一礼。さらに気持ちしっかりおじぎをした。
「ふう」
 清々しい心地で、境内にあるお稲荷様にもお参りする。こちらでも二礼二拍手一礼。
 渋木八幡宮を訪れた時のいつもの参拝を一通り終えたので、参道に戻ってそのまま待ち合わせ場所の喫茶店に向かおうとする。
「千世さんの彼氏さん。本当にマメですよね」
 鳥居を潜ろうとしたあたりでそんな声が聞こえてしまった。
 思わず立ち止まって耳を澄ましてしまう。
「三日に一度は来てくれるじゃないですか。うらやましー」
 社務所のほうで話す声だった。鳥居からだと建物の影になって見えないけど、多分、巫女さん同士が話している。
 千世さんはこの神社唯一の本職の巫女さんだから、喋っているのは助勤の巫女さん。いわゆるバイトの巫女さんだろう。
「もしかして……いや、もしかしなくても、結婚前提ですか?」
 ドキリとする言葉が飛び出た。
「ちょ、ちょっと待って!」
 千世さんが慌てた声を出す。
「いやぁ。寂しくなっちゃいますねー」
「そんなすぐ結婚しないし、結婚しても年齢が大丈夫なら働くわ。うちは結婚退職の決まりないし……」
「でもぉ。その気は、あるんですよね」
 ニシシと続きそうなバイトの子の声。
 千世さんはすぐには応えない。離れているのに戸惑いの吐息が聞こえた気がした。
「……うん」
 消え入りそうな声で言った。
「手も……。繋いだから」
「え? ……じゅ、純過ぎません」
 ボクは思わず自分の掌を見てしまう。
 千世さんと繋いだ掌と、そこに感じた柔らかで少し冷ややかな感触。湿りを感じたのは、ボクの汗だったのか? 千世さんの汗だったのか?
 玉砂利を踏む足音がした。
 社務所から出てきた千世さんと、まだ境内に残ったままだったボクの目が合う。
「「あ……」」
 声が重なる。
 千世さんの顔がひと目でわかるほどに赤くなっていく。
 続けて出てきた助勤の巫女さんは両手で口元を押さえていた。嬉しそう。
 ともかく、ボクの顔は熱い。多分、ボクの顔も千世さんと変わらないほど真っ赤だ。
「ま、まだいたの?」
 千世さんの声は固い。視線は逸らしている。
「お参りしてたから。喫茶店にはこれから……」
 ボクも白々しく腕時計なんか見ている。
「じゃあ、行くよ。待ってる」
「うん。後で」
 明後日の方向を見たまま手を振り合う。
 平静を装って……多分、装うことができてないと思うけど、とにかく境内を出る。
 おそらく閉門の準備をしているらしい神職――宮司さんがいた。
 初老の宮司さんは「こんにちは」と会釈する。ボクも会釈を返す。
 この神社のいわば責任者で、千世さんの上司にあたる人に失礼をするわけにはいかない。しょっちゅうお参りしているので、顔見知りでもある。また来週も会うと思う。
 なので、一生懸命平然とした様子を見せつつ、その場を後にした。
 ひどく照れる。
   ◆ ◆ ◆
 
 コンコンと窓を叩く音がする。
 読んでいた本に栞を挟むと、冷めてしまったコーヒーを飲み干しつつ、通りに面した窓に目をやる。
 ボクがいるのは待ち合わせの喫茶店のいつもの席。
 窓の外には千世さんがいた。巫女装束から、長袖のワンピース姿に着替えた彼女は、軽く握った手でガラスをもう一度、コツンと叩く。
 ボクたちはガラスを挟んで笑顔を交わす。それから、ボクも千世さんも目を瞬かせて顔を背けた。
 また額が熱くなってくる。さっきのことを思い出してしまった。
 千世さんも多分同じ……な気がする。
 ともかく、支払いを終えて喫茶店を出た。
 外は徐々に日が沈みつつある。太陽の残滓の中に立つ千世さんは涼しげに目を細める。
「今度こそお疲れ様」
「蒼太朗くんは出張お疲れ様です」
 二人で並んで街へと歩き出す。
 しばらくの間、ボクも千世さんも無言のままだった。
 千世さんがどう考えているのかはわからないけど、ボクのほうはさっきのことでどうしても意識してしまって言葉を切り出しづらい。
 純……! と言われてしまうのか。
 千世さんはどうだろう……と、盗み見る。千世さんも同じくこちらを盗み見していて、思いきり視線が合った。
 ボクはプッと、千世さんはクスリと、二人して噴き出す。
「今日、どこに行こう?」
 ボクが早く帰ることができて、千世さんと会う時のいつもの会話。前もって予定を立てることもあるけど、たいていは行き当たりばったりだ。
「時間の合う映画あるかな? うーん」
 千世さんがスマホで検索する。眉根に皺を寄せているあたり、好みの映画は時間が合わなかったらしい。
「わたしが日曜日空いていれば、蒼太朗くんに無理させることもないんだけど」
「気にしてないよ。ボクはこういうの嫌いじゃないから。むしろ、ボクも忙しくなると会いに来れないけど」
「そういう時は次に会う時がもっと楽しみになるわ。……寂しいけど」
 目的地を決めないまま、家路を急ぐ人やまだ仕事中の人たちを横目にブラブラと行く。
「もし……一緒に住んだりしたら、違うのかな」
 千世さんはポツリと言った。
「違うのかもね」
 まだ想像もできない。だけど、想像したくなる。
 また言葉が途絶えた。
 代わりに手と手が重なっていた。最近、ようやく手を握り合うようになったけど、互いに緊張しているからか、汗が滲んでいる。この汗はボクのものなのか、千世さんのものなのか。入り混じったものなのか。
 肩を抱き寄せたい。そう思った。
 違う。本当はもっと強く求めている。
 隣を歩く普段着の千世さんもきれいでかわいいけど、だけど、一番魅力的なのは巫女装束に袖を通している時の千世さんだ。
 渋木八幡宮、唯一の本職巫女。
 実のところ、マメに渋木八幡宮を訪れているのは、千世さんのあの姿を見たいからだ。
 口に出してしまうと引かれてしまうから、まだ黙っている。バレている気もするけど。
 例えば……巫女装束を着た千世さんを抱き締めたい。
 千世さんが一番きれいなその瞬間をボクに委ねてほしい。身も心も全てをボクに捧げてほしい。
ボクたちの心が最も深いところで繋がるだろうその瞬間、黒い髪を乱して、巫女装束をはだけた千世さんの、まだ実際には見たこともない真っ白な肌に、いつも持ち歩いているナイフを突き立てたい。皮膚を裂いて、肉を抉って、あふれる液体をすすって、もっと奥にあるものへ触れてみたい。吐きそうになるあの鉄錆の匂いにむせながら、できるだけ長い時間をかけて、その体温が失われていくのをじっくりと感じていきたい。
 最後の最後に、ボクはすっかり冷たくなって軽くなった身体をもう一度強く強く抱き締める。幸せな時間が終わってしまったことに咽び泣く。
「蒼太朗くん?」
 千世さんの声に我に返った。
 身体の奥から湧き上がってくる疼きを、笑って誤魔化した。
 こんなこととても口に出すことはできない。軽蔑されると困る。実際にすることができなくなってしまうから。
 幸せそうな千世さんを見て思う。
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