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ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。 ここでは、主に商業活動、同人活動の宣伝を行っております。
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 ライトノベルをガリガリと書かせていただいている身の上です。

メールはtamazo☆carrot.ocn.ne.jpまで。(SPAM対策で@を☆に変更しています。@に直してお送りください) 
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5月19日の関西コミティアに参加します。

スペースはN-10『玉造屋バキューン』です。

今回の新刊はコピー誌『巫女が殺しにやって来る』です。
内容はだいたいタイトルのとおりです。
巫女が殺しに来る日常系。

お暇でしたら、ぜひぜひお立ち寄りください。

以下、本編冒頭部抜粋の予告編になります。


■あらすじ
倉井幸也(くらいこうや)が夕飯を食べていると、
いきなり巫女さんがやって来た。
「「こんばんは。あの……お前を殺す!」
思わず夕飯を吹きそうになったが、巫女さん――日比谷渚(ひびやなぎさ)は、
俄然、殺す気満々。
殺されないために、幸也の口先だけの戦いが始まる!
そんな日常系です。多分。

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■予告編
「こんばんは。あの……お前を殺す!」
 家で夕飯を食べていたら、いきなりそんな声がして、カップラーメンを盛大に吹きそうになった。
というか、麺がちょっと鼻に入った。
 ハシを置いて、振り向いてみれば、そこに女の子がいた。
 癖ひとつないまっすぐな長い黒髪が印象的な子だった。
 しかも、巫女さんだ。
 汚れひとつない白衣と、目に鮮やかな赤い袴が、清楚な印象の彼女には似合っている……と、ボクは思う。
 その子は曇りのない目でボクを見つめていた。
 引き締めた唇は健康的に赤い。
 ただ、足元は草履をはいたままの土足だ。
 夕方、掃除したばかりの廊下には足跡が目立つ。
「……今、何て?」
「は、はい! えっとですね……! 殺しに来ました!」
 そう言うと、彼女は手にしたレンガをブンブンと振る。
「そう……お前を、殺す!」
 たっぷりの溜めをとって言われた。
「は、はあ」
 ボクはちょっと悩んだ。
 いつの間にか家にに上り込んでいたこの子と、面識はなくて、いきなり殺される謂れもない。
 まあ、普通に考えてタチの悪い冗談だろう。
でも、冗談で言ってるにしては、この子、顔が本気だ。
不退転の覚悟を感じる。
あと、不法侵入だし。そもそも、レンガ持ってる。
「じゃ、じゃあ、御理解いただけたところで……殺しますね」
「いや、ちょっと待って」
 レンガ手にしたまま部屋に入ってこようとするので、慌てて止めた。
「……? 何ですか?」
「えっと……。勘違いがあると困るから、念のため訊きたいんだけど……。殺すって、誰を?
ボクを?」
「はい。倉井幸也さん。あなたを殺しにきました。間違いないです」
 間違いないらしい。
「……倉井幸也さんですよね? わたし、間違ってないですね?」
 だけど、自信はなさそうだった。
「あ、うん。間違いない」
 しまった。
 他人だと言えばよかった。
 だけど、反射的に応えてしまってからでは遅い。
「よかったー」
 巫女さんがホッと胸を撫で下ろす。
 和服は胸の膨らみが出にくい。だけど、彼女の胸元には確かな膨らみがある。
 つまりは、彼女はけっこう大きな胸をしているのではないだろうか?
もはやボクの意識は現実逃避を始めていた。
 いや、死を目前としたからこそ、生殖本能が頭をもたげたと、そう考えることはできまいか?
 そんなことを思ったが、どうでもいいし、それどころじゃない。
「えっと……。何で? ボク、何か殺されるようなことしたの?」
 それも巫女さんに。
 とりあえず、訊かずにはいられない。
「はい。倉井さんは、邪悪な神に憑かれています。もう、殺すしかないんで、殺します。人類のために」
「邪悪な神……。それに、人類のためか……」
 ボクは腕を組んで考える。
「ところで、殺すって、どうやって?」
 巫女さんが握ってるレンガをマジマジと見てしまうのは、しかたのないところだ。
「素手です! 武器は持ちません。空手です! 巫女ゆえの空手!」
「ああ、空手」
 巫女さんんがチョップを素振りしたら、ビシュッ! ビシュッ! と、風を切るような音がする。
 尋常じゃない。
素人目にわかるほどの空手の達人だ。
 それが巫女と関係あるのかどうかは皆目見当がつかない。
「あ、でも。レンガも使います」
「武器は持たないんじゃないの?」
「場合によっては武器も用います。そう……手に触れるもの全てが凶器なんです」
 握りしめたレンガをブンブン振る。
 当たると色々割れそうだ。
「じゃあ、使命なんで殺しますね」
「いや、待って。まだ質問は終わってない」
「で、でも、殺さないと。早く殺さないと!」
 ボクを殺したくてウズウズしているのか、巫女さんは落ちつかない。
「君、名前は? ボクの名前は知ってたみたいだけど」
「そう言えば、自己紹介していなかったですね。失礼しました。日比谷渚です。よろしくお願いします」
 丁寧に、深々と、その巫女さん――渚ちゃんは頭を下げた。
 とても綺麗なお辞儀で見惚れそうになる。
 巫女さんは礼儀作法をきちんと教わると聞く。
 そう考えると、美しいお辞儀ができる彼女が、殺し屋じゃなくて、巫女さんだということは間違いないと思う。
 多分。
「渚ちゃんか。イイ名前だね」
「え、あ……!? ありがとうございます」
 渚ちゃんは頬を赤くして、顔を伏せた。
「で、でも、殺しますから! 褒められても、殺しますから!」
「そんなことより、改めてだけど、倉井幸也だよ」
「はい! これから、よろしくお願いします。そして、さようならだ! です」
「ところで、渚ちゃん。巫女さんみたいだけど、いつもこういうことしてるの?」
「こういうこと?」
「その……殺すとか、殺さないとか」
「そうですね。使命です。邪神に憑かれた人はもう助からないので、とにかく殺します」
「お仕事なの?」
「そうですね」
「ふーん」
 ボクは首を傾げる。
「いくつ?」
「え? 十六歳ですけど……」
「ボクと同い年か……。学校とかは?」
「高校生です」
「同い年なんだから、高校生だってのはわかるよ。ちゃんと行ってるのかどうか気になって」
 ボクは腕を組んで考えつつ、言葉を選ぶ。
「えっと……。十六にもなって恥ずかしくない?」
「いきなりなんなんですか!?」
「いや、殺すとか殺さないとか」
「殺しますよ! 本当に殺すために来たんです! 何かをこじらせた人見る目でこっち見るのやめてくださいよ!」
ビシュッ! ビシュッ! と、空手チョップが唸る。
「学校でもそうなの?」
「学校では殺すとか言いませんよ! おかしいでしょ!?」
「おかしいんだ」
「もしかして、嘘だと思っているんじゃないですか? わたしが趣味で、こんなことしようとしているとか。普通はもっと怖がったりするもんですよ。恐れおののいてくれないと、変ですよ!」
「え? 怖がらせたかったの? ボクが怯えるの見て、喜びたかったの?」
「いえ……。そういうわけでもないんですけど」
「それにしても、殺すにしても、こういうのはないんじゃない?」
「こういうの?」
 渚ちゃんは不思議そうな顔をした。
「だって、なんか、いきなりじゃないか。そもそも、家に上がる時に、挨拶もなかったよね。ボク、ご飯食べてたところだったんだけど」
 既に冷めてしまったラーメンを差す。
「レンジで温めても、のびた麺はもう元には戻らない……」
「ゴ、ゴメンなさい。でも……」
「一般常識としておかしいよね。無断で家に上がり込んで、食事取ってるところに、殺すとか言ってくるのとか」
「だ、だけど、今まで、こういうふうにですね……。悪神の憑代が、わたしを返り討ちにしようと襲ってくることはあっても、怒られたりなんて……」
「これ、警察に通報されてもおかしくないよね」
 ボクは携帯を手にした。
「え!? ええっ!? 通報するんですか!?」
「うーん。まあ、初めてのことだから、今回はしないけど。でも、よく考えてほしいな」
 ボクは深く息をついた。
「で、でも……。ほら、殺しに来る時って、普通、問答無用ですよね!? 例えば、考えてみてくださいよ。ゴルゴさんが、インターホン鳴らしたりとか、標的がご飯食べてるから待ってあげるとか、そんなシーンないですよ。た、多分……」
「それはそうだけど、漫画と現実を混同するの、よくないと思うな」
 渚ちゃんが「うっ」と、言葉に詰まる。
「そもそも、なんで、ゴルゴを例に出すの? 彼、主人公だけど、殺し屋だから、一般的に言って悪い人だよ。じゃあ、渚ちゃんは悪いことをしに、ここに来たの? 悪い神が憑いているからって言いながら、悪党さながらに、相手の尊厳を踏み躙って殺すの?」
「そ、そんなことは……」
「言い訳するな!!」
 ボクはちゃぶ台をドンと叩く。
「ひっ」
 渚ちゃんが後ずさった。
「口では世のため人のために人を殺すと耳に心地いいお題目を唱えながら、その実、何の礼儀もなく、土足で人の家に上がり込んで、相手の了承も得ずに殺そうとするなんて……」
 ボクは落胆を露わに吐息する。
「なんて恥ずかしい人なんだ……。巫女失格だよ」
「そ、そんな……」
「なんなんだよ。いきなり押しかけて来て、殺すとか殺さないとか! ああ、いいよ!」
 ボクはおもむろに寝そべった。
「殺せばいい! その空手とレンガで、ボクを瞬く間に殺せばいい! ボクの尊厳を踏み躙って、正義の名のもとに、情け容赦なく殺せばいい! 殺せ! 殺せーっ!!」
「あ、あぁ……」
 もう一歩、渚ちゃんが後ずさる。
 うつむいた目が土足で汚した廊下を見る。
 今さら、草履をはいた自分の足を気にしていた。
「ゴ、ゴメンなさい」
 渚ちゃんがうめく。
 その目には涙まで浮かんでいる。
「ゴメンなさい! 確かに、礼儀がなってませんでした」
「まあ、いいけど。でも、謝って、それで、どうするの?」
 ボクは無防備に寝転んだままで尋ねた。
「あ……うぅ……」
「ああ……。謝っただけか。それだけ言って、自己満足して、あとは殺すだけか。いいよ。ボクはもうどっちでもいい」
「か、帰ります」
 かすれた声で、渚ちゃんが言う。
「え? 何? よく聞こえなかったんだけど」
「帰ります! 帰るって、言ったんです! わたしが悪かったです! 間違っていました! 今日はもう帰ります! おじゃましました!」
 叫ぶと、渚ちゃんは、ドタドタと逃げるように帰っていった。
 玄関でピシャリと戸が閉じる音がする。
 ボクは深く息を吐く。
「……正直、漏らすかと思った」
 そろそろと身を乗り出して、廊下の先を見たけど、渚ちゃんはもういない。
 暗い廊下にレンガブロックが転がっていた。
 どうも落としていったらしい。
 ボクの心臓はまだバクバクいっている。
 ちゃぶ台ドンしたあたりから、もうヤケクソのハッタリでしか喋ってなかったけど、うまく誤魔化せたようだ。
「また来たりするのかな……」
 とりあえず、ボクはのびて冷めてしまった、まずいラーメンをきちんと食べた後、念のため、警察に通報しておいた。
 巫女さんを通報するのは初めての経験だった。
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