ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。
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ライトノベルをガリガリと書かせていただいている身の上です。
メールはtamazo☆carrot.ocn.ne.jpまで。(SPAM対策で@を☆に変更しています。@に直してお送りください)
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ちなみに「ブラッディ(血まみれな)」の表記は
昔々、『元祖SDガンダム』のコミックスで見て、「なるほどなー」と
思ったとか、そういう話はどうでもよく。
関西コミティア36に参加します。
スペース情報は以下のとおり。
5月16日(日)関西コミティア36
B-34 玉造屋バキューン
新刊は短編コピー誌『ブラかみ ~ブラッディ(血まみれな)神様の略称~』です。
語呂の悪さとかは、もうどうでもよいのです!
「明るいバイオレンス」と「脊髄反射で書く」を実践してみたら、
だいたい、そういう内容になりました。ラブやんみたいになると思っていた日が、
今は懐かしい……。
最近の作品にはきちんと取り付けている倫理スイッチがOFF状態になっているのも
特徴ですので、ほんと怒られるんじゃないかと戦々恐々です。
ということで、いつもどおり冒頭部分を予告編として掲載します。
もし、お気に召しまして、お暇でしたら、ぜひぜひお越しくださいませ。
■あらすじ
信じれば夢はかなうんだ。
夢物語のような言葉が、案外事実かもしれない。
ロクジがそう信じるきっかけとなったのは、突如、部屋に現れた神を名乗る
少女との出会いがきっかけだった。
腕力をもって、自分が人間ではないことを示した神様――殴子様。
ロクジの縁結びを買って出た彼女だが、それはたいへん血生臭い戦いと、
ロクジの色々な意味での覚醒の始まりだった。
ジャンル的にはラブコメの皮をかぶろうとしたおぞましい何かな短編。
昔々、『元祖SDガンダム』のコミックスで見て、「なるほどなー」と
思ったとか、そういう話はどうでもよく。
関西コミティア36に参加します。
スペース情報は以下のとおり。
5月16日(日)関西コミティア36
B-34 玉造屋バキューン
新刊は短編コピー誌『ブラかみ ~ブラッディ(血まみれな)神様の略称~』です。
語呂の悪さとかは、もうどうでもよいのです!
「明るいバイオレンス」と「脊髄反射で書く」を実践してみたら、
だいたい、そういう内容になりました。ラブやんみたいになると思っていた日が、
今は懐かしい……。
最近の作品にはきちんと取り付けている倫理スイッチがOFF状態になっているのも
特徴ですので、ほんと怒られるんじゃないかと戦々恐々です。
ということで、いつもどおり冒頭部分を予告編として掲載します。
もし、お気に召しまして、お暇でしたら、ぜひぜひお越しくださいませ。
■あらすじ
信じれば夢はかなうんだ。
夢物語のような言葉が、案外事実かもしれない。
ロクジがそう信じるきっかけとなったのは、突如、部屋に現れた神を名乗る
少女との出会いがきっかけだった。
腕力をもって、自分が人間ではないことを示した神様――殴子様。
ロクジの縁結びを買って出た彼女だが、それはたいへん血生臭い戦いと、
ロクジの色々な意味での覚醒の始まりだった。
ジャンル的にはラブコメの皮をかぶろうとしたおぞましい何かな短編。
■予告編
信じれば夢はかなうんだ。
夢物語のような言葉が、案外事実かもしれない。
ロクジがそう考えるきっかけとなったのは、ある日、気づくと部屋の隅に立っていた見知らぬ少女だった。
「だ、誰だ!? いつの間に、そこに?」
「このとおり神だぜ。そして、今しがたここに来たところだ」
長い黒髪を揺らして、その少女は自分を親指で差す。
「ちなみに、セーラー服を着ているのは、お前の趣味に応えたまでだ。私はサービス精神が旺盛なんだ」
「俺の密かな性癖をそこまで知っているなんて、馬鹿な!? 友達にも言ったことないのに」
「初対面の印象が大切だって知ってる私は、ちゃんと黒タイツも履いているぜ」
「しかも、靴はローファー。舐めるように見詰めることしかしたことがなく、靴箱で悪戯しそうになる誘惑にもいつだって打ち勝ってるのに。お前、い や、貴方は本当に神!? 部屋の中で靴はいてるけど」
「そのとおり、私は神様だ」
「ネットの噂の類じゃなかったのか……。願いをかなえるために、神様がやって来る。週刊誌の広告の類みたいな、都合いい話だって思ってたのに」
「はは。だけど、お前は心のどこかでそれを望んで、信じていた。願っていた。だから、私の登場ってわけさ」
「いやいや。でも、常識的に考えて、まだ信じられない。神様じゃなくて、俺のことが好きで好きでしかたなくて、隠密の限りを尽くして侵入した見知 らぬ同級生という線も捨てきれない」
「それは、常識的に考えると、神様が来るよりも、レアなケースじゃないのか?」
「確かに……なんとも言いがたい」
「じゃあ、忍びじゃ……いや、人間如きじゃできないことをやってみせて、私が神様だって、証明してやるよ」
唇の端を上げて笑うと、神様を名乗る少女は床に転がっていた週刊少年ジャンプを手にした。
「ふんぬっ!」
そして、両手で掴み、軽々と縦に引き裂く。
「うわ! その細腕にレスラーの如きパワー!?」
「む。それじゃ、私が神様じゃなくて、レスラーって疑惑も沸くわけか。なら、こうだ!」
神様なのか、レスラーなのかわからない少女は壁に向かって拳を構え、腰を落とす。
「ふんっ!!」
放たれた正拳が壁にめりこみ、同時に放射状のひびが生じて粉々に砕ける。
後に残ったのは、彼女はおろか、ロクジでさえ楽々通れるほどの大きな壁の穴だった。
「そのパワー! 確かに人間とは思えないけど、他に証明する方法はあったと思う」
「だけど、信じたろう? これでも私はまだ七割の力を残しているぜ」
「得意げに言われても困る! 壁はどうにかなるのか?」
「残念だが、私がかなえる願いはたったひとつだけだ」
「壁……。今日は家族出かけてるからいいけど、どう言い訳したらいいんだ」
「それどころじゃないぜ。私が何の願いをかなえに来たのか、お前にはわかってるだろ?」
「いや、正直、わからないというか、困惑の方が大きいんだけど……。まさか、神様が本当にいるなんて」
「しかも、この美少女さ! 面倒だから、殴子様って呼ぶといいぜ」
「確かに美少女! ちょっときつ目に見えるけど、嫌いじゃない。さらに俺の好みの服装! だけど、その名前! しかも、力瘤作るのはちょっと違 う。……いや、ありか?」
「ありなんだよ! まあ、ともかく。私はお前の恋愛成就に来たわけさ」
「だから、どこまで俺のプライベートに踏み込んでるんだ」
「神様は全てお見通しだからな。なんなら、お前の生き恥十傑をここに明らかにしてもいい。まずは小学生時代の縦笛の事件からか。舐めるとかはよく 聞くけど、まさか……」
「いや、それは御免被るから、話を続けてくれ。いや、続けてください殴子様」
「いいだろう。単刀直入に言うと、お前はクラスメイトの姫川清香を毎日、舐めるように見詰めながら粘着質の欲望を抱く程度に恋焦がれている」
「悪意ある言い回しとお見受けする。超健全。超健全な、青少年特有のアレなんだ」
ロクジは机を叩いて抗議の意思を示した。
「だが、事実だ! だって、何を望んでいるか、神様の私には全部お見通しだからな。具体的には……どれどれ。……姫川さんの髪の匂い嗅ぎたい。い やさ、耳の裏の匂いを嗅ぎたい。できるだけ汗かいてる時に。あと、冬にタイツはいてるのはもちろんとして、夏でも薄手とはいえ、ストッキングはいてるあの 足をああしてこうして……うっ! セーラー服があれほど似合う子はそうそういないけど、そのセーラー服の匂いを……って、お前、匂いのことばっかりか!? 他に考えることないのかよ! そもそも、「うっ!」って、なんなんだ!? どういう欲望だ!」
「やめて! やめてくれ! 俺はもう立ち上がれないほどの精神的外傷を被っている! 女の子に性癖を並べ立てられるこの心の傷……!」
ロクジは床の上に転げ、のた打ち回った。
「いや、しかし、ありか?」
「不死鳥のような男だが、ドン引きだぜ。この線より私に近づくなよ」
殴子様は部屋の真ん中あたりに足で線を引いてみせた。
「さすが神様。俺をここまで成長させるなんて」
「話を続けるぜ」
殴子様はロクジの言うことをあえて無視した。
彼女がロクジを見る目つきが、人間に対するそれというよりも、例えるなら、食事時に飛んで来た小蝿を見る時に近くなっていたが、ロクジはむし ろ、その視線すら春の風を感じるように、心地よさげに受け止めていた。
「話を続けるぜ」
殴子様はあえてもう一度言った。
「ともかく、私たち神様は、お前たちゴミ……いや、違う。人間だ、人間」
「今のは人という種に対する言葉なのか、俺個人への言葉なのか……。正直、期待に胸を膨らませています」
「お前の性癖の拡大はもういいんだよ! ともかく、話を続けるぜ」
殴子様、三度目の同じ台詞は少し上擦っていた。
「私たちはその願望に応えてやってきた。そして、それを……つまりは、お前が姫川清香の匂い……ああ、違う。姫川清香と恋愛関係になりたいってい う、青少年特有のアレをかなえることができるわけだ」
「本当にそんなことが!? 姫川さんの匂い……ああ、違う。姫川さんと俺が恋人に……。ま、まさか、そんな……」
「その、まさかさ!」
「ただ遠くから眺めて想像していただけの、俺を踏みつけてくれたり、時々、ピロートークしたり、一緒に映画を観に出かけたり、手を繋いだり、その 全てが現実に……」
「望んでる順番が、色々どうかと思うが、その、まさかさ! いや、今度は、まさかって言ってないけど、私はこの台詞が言いたくてウズウズしてるん だ」
「わかりました。それでは、お願いします。神様。殴子様」
ロクジはすぐさま土下座した。
その額を床に擦りつける様がまだ十五歳の少年のものとは思えぬほど堂に入っており、殴子様は少しうろたえたが、土下座中のロクジに、その様子は見 えなかった。
「よし。じゃあ、早いとこ行ってくるぜ」
「早いところ? なんか、縁結びの神様的なドタバタが始まるんじゃないのか?」
「縁結びなんて、あれだ。脳を弄って解決に決まってるだろ?」
「親指立てて、恐ろしいこと口走るなよ!? なんか、姫川さんに申し訳ない」
「だが、それもありだと思ってるんだろ? いや、むしろ、なんでお前、興奮し始めてるんだ?」
「さすがは神様。それもお見通しか」
「神様と言えども、時に目を逸らしたくなる現実はあるんだぜ……。私も神様としての性別は女子だからな……」
「なるほど。神様もオンナということか。へへ」
「やめろよ、そういう言い方と笑い方……。お前の願いをかなえに来たんじゃなけりゃ、必殺拳の餌食となるのはお前だ!」
殴子様が拳を振ると風圧だけで、ロクジの髪の毛が千切れ飛んだ。
「これ、当たれば、頭がスイカ割りのスイカになるなあ」
「冷静に言ってるなよ。まあ、お前、殺すと本末転倒だから、やらないけどな。とにかく、私は行くからな。姫川のタイツを舐めるのを楽しみに……っ て、お前!? また、望みが深みに沈んでるから、ちょっとは自重しろよ! 会話するレベルで自動的に聞こえてくんだよ、私には!」
「それは……断る!」
「うるせえ! とにかく、私は行くからな。本当に行くからな!」
そう言い残し、ロクジの返事を待たず、殴子様は殴り壊した壁から夜の町へと姿を消した。
長い黒髪をひるがえして走り去っていく殴子様の後ろ姿をロクジは見送る。
◆ ◆ ◆
「そして、どうしてお前がついてきてんだ? 見送れよ!」
「いや、姫川さんをどうするのか、個人的に興味があって」
夜道を走る殴子様の後を、ロクジが息を切らせながら追っていた。
信じれば夢はかなうんだ。
夢物語のような言葉が、案外事実かもしれない。
ロクジがそう考えるきっかけとなったのは、ある日、気づくと部屋の隅に立っていた見知らぬ少女だった。
「だ、誰だ!? いつの間に、そこに?」
「このとおり神だぜ。そして、今しがたここに来たところだ」
長い黒髪を揺らして、その少女は自分を親指で差す。
「ちなみに、セーラー服を着ているのは、お前の趣味に応えたまでだ。私はサービス精神が旺盛なんだ」
「俺の密かな性癖をそこまで知っているなんて、馬鹿な!? 友達にも言ったことないのに」
「初対面の印象が大切だって知ってる私は、ちゃんと黒タイツも履いているぜ」
「しかも、靴はローファー。舐めるように見詰めることしかしたことがなく、靴箱で悪戯しそうになる誘惑にもいつだって打ち勝ってるのに。お前、い や、貴方は本当に神!? 部屋の中で靴はいてるけど」
「そのとおり、私は神様だ」
「ネットの噂の類じゃなかったのか……。願いをかなえるために、神様がやって来る。週刊誌の広告の類みたいな、都合いい話だって思ってたのに」
「はは。だけど、お前は心のどこかでそれを望んで、信じていた。願っていた。だから、私の登場ってわけさ」
「いやいや。でも、常識的に考えて、まだ信じられない。神様じゃなくて、俺のことが好きで好きでしかたなくて、隠密の限りを尽くして侵入した見知 らぬ同級生という線も捨てきれない」
「それは、常識的に考えると、神様が来るよりも、レアなケースじゃないのか?」
「確かに……なんとも言いがたい」
「じゃあ、忍びじゃ……いや、人間如きじゃできないことをやってみせて、私が神様だって、証明してやるよ」
唇の端を上げて笑うと、神様を名乗る少女は床に転がっていた週刊少年ジャンプを手にした。
「ふんぬっ!」
そして、両手で掴み、軽々と縦に引き裂く。
「うわ! その細腕にレスラーの如きパワー!?」
「む。それじゃ、私が神様じゃなくて、レスラーって疑惑も沸くわけか。なら、こうだ!」
神様なのか、レスラーなのかわからない少女は壁に向かって拳を構え、腰を落とす。
「ふんっ!!」
放たれた正拳が壁にめりこみ、同時に放射状のひびが生じて粉々に砕ける。
後に残ったのは、彼女はおろか、ロクジでさえ楽々通れるほどの大きな壁の穴だった。
「そのパワー! 確かに人間とは思えないけど、他に証明する方法はあったと思う」
「だけど、信じたろう? これでも私はまだ七割の力を残しているぜ」
「得意げに言われても困る! 壁はどうにかなるのか?」
「残念だが、私がかなえる願いはたったひとつだけだ」
「壁……。今日は家族出かけてるからいいけど、どう言い訳したらいいんだ」
「それどころじゃないぜ。私が何の願いをかなえに来たのか、お前にはわかってるだろ?」
「いや、正直、わからないというか、困惑の方が大きいんだけど……。まさか、神様が本当にいるなんて」
「しかも、この美少女さ! 面倒だから、殴子様って呼ぶといいぜ」
「確かに美少女! ちょっときつ目に見えるけど、嫌いじゃない。さらに俺の好みの服装! だけど、その名前! しかも、力瘤作るのはちょっと違 う。……いや、ありか?」
「ありなんだよ! まあ、ともかく。私はお前の恋愛成就に来たわけさ」
「だから、どこまで俺のプライベートに踏み込んでるんだ」
「神様は全てお見通しだからな。なんなら、お前の生き恥十傑をここに明らかにしてもいい。まずは小学生時代の縦笛の事件からか。舐めるとかはよく 聞くけど、まさか……」
「いや、それは御免被るから、話を続けてくれ。いや、続けてください殴子様」
「いいだろう。単刀直入に言うと、お前はクラスメイトの姫川清香を毎日、舐めるように見詰めながら粘着質の欲望を抱く程度に恋焦がれている」
「悪意ある言い回しとお見受けする。超健全。超健全な、青少年特有のアレなんだ」
ロクジは机を叩いて抗議の意思を示した。
「だが、事実だ! だって、何を望んでいるか、神様の私には全部お見通しだからな。具体的には……どれどれ。……姫川さんの髪の匂い嗅ぎたい。い やさ、耳の裏の匂いを嗅ぎたい。できるだけ汗かいてる時に。あと、冬にタイツはいてるのはもちろんとして、夏でも薄手とはいえ、ストッキングはいてるあの 足をああしてこうして……うっ! セーラー服があれほど似合う子はそうそういないけど、そのセーラー服の匂いを……って、お前、匂いのことばっかりか!? 他に考えることないのかよ! そもそも、「うっ!」って、なんなんだ!? どういう欲望だ!」
「やめて! やめてくれ! 俺はもう立ち上がれないほどの精神的外傷を被っている! 女の子に性癖を並べ立てられるこの心の傷……!」
ロクジは床の上に転げ、のた打ち回った。
「いや、しかし、ありか?」
「不死鳥のような男だが、ドン引きだぜ。この線より私に近づくなよ」
殴子様は部屋の真ん中あたりに足で線を引いてみせた。
「さすが神様。俺をここまで成長させるなんて」
「話を続けるぜ」
殴子様はロクジの言うことをあえて無視した。
彼女がロクジを見る目つきが、人間に対するそれというよりも、例えるなら、食事時に飛んで来た小蝿を見る時に近くなっていたが、ロクジはむし ろ、その視線すら春の風を感じるように、心地よさげに受け止めていた。
「話を続けるぜ」
殴子様はあえてもう一度言った。
「ともかく、私たち神様は、お前たちゴミ……いや、違う。人間だ、人間」
「今のは人という種に対する言葉なのか、俺個人への言葉なのか……。正直、期待に胸を膨らませています」
「お前の性癖の拡大はもういいんだよ! ともかく、話を続けるぜ」
殴子様、三度目の同じ台詞は少し上擦っていた。
「私たちはその願望に応えてやってきた。そして、それを……つまりは、お前が姫川清香の匂い……ああ、違う。姫川清香と恋愛関係になりたいってい う、青少年特有のアレをかなえることができるわけだ」
「本当にそんなことが!? 姫川さんの匂い……ああ、違う。姫川さんと俺が恋人に……。ま、まさか、そんな……」
「その、まさかさ!」
「ただ遠くから眺めて想像していただけの、俺を踏みつけてくれたり、時々、ピロートークしたり、一緒に映画を観に出かけたり、手を繋いだり、その 全てが現実に……」
「望んでる順番が、色々どうかと思うが、その、まさかさ! いや、今度は、まさかって言ってないけど、私はこの台詞が言いたくてウズウズしてるん だ」
「わかりました。それでは、お願いします。神様。殴子様」
ロクジはすぐさま土下座した。
その額を床に擦りつける様がまだ十五歳の少年のものとは思えぬほど堂に入っており、殴子様は少しうろたえたが、土下座中のロクジに、その様子は見 えなかった。
「よし。じゃあ、早いとこ行ってくるぜ」
「早いところ? なんか、縁結びの神様的なドタバタが始まるんじゃないのか?」
「縁結びなんて、あれだ。脳を弄って解決に決まってるだろ?」
「親指立てて、恐ろしいこと口走るなよ!? なんか、姫川さんに申し訳ない」
「だが、それもありだと思ってるんだろ? いや、むしろ、なんでお前、興奮し始めてるんだ?」
「さすがは神様。それもお見通しか」
「神様と言えども、時に目を逸らしたくなる現実はあるんだぜ……。私も神様としての性別は女子だからな……」
「なるほど。神様もオンナということか。へへ」
「やめろよ、そういう言い方と笑い方……。お前の願いをかなえに来たんじゃなけりゃ、必殺拳の餌食となるのはお前だ!」
殴子様が拳を振ると風圧だけで、ロクジの髪の毛が千切れ飛んだ。
「これ、当たれば、頭がスイカ割りのスイカになるなあ」
「冷静に言ってるなよ。まあ、お前、殺すと本末転倒だから、やらないけどな。とにかく、私は行くからな。姫川のタイツを舐めるのを楽しみに……っ て、お前!? また、望みが深みに沈んでるから、ちょっとは自重しろよ! 会話するレベルで自動的に聞こえてくんだよ、私には!」
「それは……断る!」
「うるせえ! とにかく、私は行くからな。本当に行くからな!」
そう言い残し、ロクジの返事を待たず、殴子様は殴り壊した壁から夜の町へと姿を消した。
長い黒髪をひるがえして走り去っていく殴子様の後ろ姿をロクジは見送る。
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「そして、どうしてお前がついてきてんだ? 見送れよ!」
「いや、姫川さんをどうするのか、個人的に興味があって」
夜道を走る殴子様の後を、ロクジが息を切らせながら追っていた。
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