ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。
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ライトノベルをガリガリと書かせていただいている身の上です。
メールはtamazo☆carrot.ocn.ne.jpまで。(SPAM対策で@を☆に変更しています。@に直してお送りください)
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21日日曜日開催の関西コミティア、新刊出ますー!
……というわけで、書上げることができました。
短編小説『空回りの恋』
恐ろしいことに純正ラブロマンスのつもりで書いています。『泥骨の護神』とは別方向の玉造屋の変化球、お楽しみいただければ幸いです。
慣れない球種なので、うまくいっているのかどうか自信ないのがアレですが。
今回も冒頭部分を予告編として掲載します。
なお、予告編は最終校正前のものであり、本編では変更される可能性がありますので、御了承ください。
■あらすじ
芝里美咲(しばさと・みさき)は告白の決意を固めた。
同じクラスの蔵林達治(くらばやし・たつじ)に想いを告げるべく、彼を追って屋上に上がる美咲。
しかし、そこには先客がいた。そして、その先客に告白したのは達治だった!
空回り気味の青春気味ラブロマンスです。
……というわけで、書上げることができました。
短編小説『空回りの恋』
恐ろしいことに純正ラブロマンスのつもりで書いています。『泥骨の護神』とは別方向の玉造屋の変化球、お楽しみいただければ幸いです。
慣れない球種なので、うまくいっているのかどうか自信ないのがアレですが。
今回も冒頭部分を予告編として掲載します。
なお、予告編は最終校正前のものであり、本編では変更される可能性がありますので、御了承ください。
■あらすじ
芝里美咲(しばさと・みさき)は告白の決意を固めた。
同じクラスの蔵林達治(くらばやし・たつじ)に想いを告げるべく、彼を追って屋上に上がる美咲。
しかし、そこには先客がいた。そして、その先客に告白したのは達治だった!
空回り気味の青春気味ラブロマンスです。
■予告編
芝里美咲は立ち尽くしていた。
彼女の目の前、開いた鉄の扉の向こうに、夕陽で赤く染まった空が広がっている。落下防止用に金網が張り巡らされた殺風景な屋上に二つの人影があった。
黒髪を短く健康的に刈り上げた長身の少年がいる。彼は両の拳を固く握り締めてうつむき、唇を噛み締めていた。頬を染める朱は夕陽の色だけではない。ブレザーを着た長身が小さく見えた。
彼の前に制服姿の少女がいる。彼女は少年とは対照的に、腕を組み、胸を張り、スラリとした長い足でコンクリートを踏みしめて立っていた。長い黒髪をまとめたポニーテールが揺れている。
「せ、せ、せ、先輩!」
少年がどもる。
「俺、先輩の……先輩のこと、好きです! 前からずっと好きでした!」
まごうことない告白だった。顔を上げ、真正面から少女を見詰めて少年が叫ぶように言った。
「え……」
少女が戸惑いを見せる。
「……本気……よね」
少年の頷きに、彼女は照れたように頬を掻いた。そして、赤い空を仰ぐ。
「ゴメン!」
少女が頭を下げ、ポニーテールが大きく跳ねた。
「わたし、好きな人いるのよ……。ほんとにゴメン。勇気出してくれたんだよね」
「……!? ……あ、いや……。それなら……しかたないです」
少年が口だけで笑う。
「じゃぁ、その……。これからも友達でいてください」
「もちろんよ。わたしは無敵先輩だからね。これからもよろしくね、達治」
無敵先輩と名乗った彼女は明るく笑い、達治と呼んだ少年の肩を叩く。
「じゃぁ、一緒に帰る?」
無敵先輩の言葉に達治は首を横に振る。
「……い、いや。今日は……一人で帰ります」
達治の声がわずかに震えていた。
無敵先輩は少しだけ表情を曇らせたが、頷き、踵を返す。
「わかった。じゃ、また明日ね」
あっさりと言ってのけると彼女は屋上の出口へと歩き出した。
目の前で繰り広げられた告白劇に立ち尽くしていた美咲は慌てて階段を降り、彼女が通り過ぎていくのを待った。階段下にある掲示板を見るふりをして歩み去る彼女の表情を追う。無敵先輩は複雑な顔をしていた。美咲の知る限り、いつも自信に満ち溢れている顔には困惑と後悔の意識なのか、陰りが見える。
憂いを帯びた無敵先輩の瞳が美咲を一瞥した。思わず美咲の背中が跳ねる。しかし、彼女は歩みを止めることなく去っていった。
彼女の背中を見送り、美咲は大きく息を吐く。
「……なに、このタイミング……」
美咲の手の中に薄いピンクで彩られた小さな封筒がある。そこには彼女が二枚の便箋にしたためた手紙が収められていた。
蔵林達治に告白するために用意したものだ。握り締めていたため、皺だらけになり、自分の汗で湿った封筒を見て深い溜息をつく。
一ヶ月前の夜に、彼女はその手紙を書いた。胸に湧き上がる気持ちを拙い言葉に乗せようと、ペンを手に、何度も何度も書き直し、朝までかけて完成させたものだ。
美咲は蔵林達治が好きだ。好きで好きでしかたがない。もう、どうしようもない程好きだ。その思いをひたすら書いた。
手紙を渡す覚悟を決めるのに二週間。手紙を渡すタイミングを見つけるのに二週間かかった。タイミングを見つけると言いながら、ただ迷い続け、ふられることを恐れ続けていたんだということは美咲自身わかっていた。
達治とは同じクラスだが、ほとんど話したことがない。彼が自分のことを認識しているという自信すらない。手紙を渡して想いを伝え、楽になりたいという思いと、彼に拒絶される恐怖がせめぎ合い、胸を痛め続けていた。
手紙は持ち歩いていた。彼と二人きりになれたら告白しよう。彼が一人でいるところを見たら告白しようと、覚悟が決まらないまま、自分に言い聞かせていた。
そして、今日、その時は突然訪れてしまった。放課後、些細な用事で職員室に呼ばれていた美咲は、鞄を取りに教室に戻る途中で、達治が屋上へ上がっていくのを見たのだ。
達治は一人だった。美咲の友人、友香も先に帰ってしまい、今日はいない。放課後の校舎には他の生徒たちもいるだろうが、屋上にいるのは彼一人に違いなかった。
迷いはまだあった。ほとんど話したことのない彼が自分を受け入れてくれるとは思えない。
それでも、もう苦しむのは嫌だと、震えて動かない足を無理矢理動かして彼の後を追った。
そこで美咲が見たのが今の光景だった。
そこには達治と無敵先輩がいた。。
そのあだ名で呼ばれすぎているため、本名は思い出せない。しかし、生徒会長であり女子空手部の主将であり、学年トップの優秀な成績とチンピラ十人を十秒でのした武勇伝を併せ持つ彼女を人は無敵先輩と呼ぶ。同学年の生徒は無敵ちゃんと呼んでいる上、彼女自身も上機嫌で無敵先輩と名乗るため、本当の名前を忘れるのもしかたない。
そんな彼女と達治が二人きりで屋上にいる理由がわからなかった。空手部所属の達治と女子空手部の無敵先輩には繋がりがある。二人が話しているところを見たこともある。むしろ、二人が一緒にいる理由を理解したくなかった。達治が告白の言葉を口にした時には逃げ出したくなった。
「……どうして」
目頭が熱くなり、泣き出しそうになる。
気持ちを伝えようとなけなしの勇気を振り絞ったところに、酷過ぎる仕打ちだと思った。
達治に自分の気持ちが通じているとは思っていない。それでも、とにかく気持ちを伝えて、自分を見てもらわなければいけないと、弱い心を叱咤してきた。
しかし、彼はそもそも自分ではない別の人を愛していた。それがあの無敵先輩だ。かなうわけがない。その上、今、彼は目の前でふられてしまった。
どうすればいいのかわからなかった。告白できず、泣くこともできず、渡せないままの手紙を握ったまま美咲は放課後の廊下に立ち尽くす。窓の外の夕陽がまぶしかった。
……帰ろう。
教室に戻り、鞄を手にする。渡すことのできなかった手紙は破り捨てようとしたが、できなかった。しかたなく鞄の奥に押し込んでしまう。
まだ考えがまとまらないまま、美咲は人気のない廊下を歩いていく。屋上に続く階段を前を通り過ぎようとして、彼女は足を止めた。
芝里美咲は立ち尽くしていた。
彼女の目の前、開いた鉄の扉の向こうに、夕陽で赤く染まった空が広がっている。落下防止用に金網が張り巡らされた殺風景な屋上に二つの人影があった。
黒髪を短く健康的に刈り上げた長身の少年がいる。彼は両の拳を固く握り締めてうつむき、唇を噛み締めていた。頬を染める朱は夕陽の色だけではない。ブレザーを着た長身が小さく見えた。
彼の前に制服姿の少女がいる。彼女は少年とは対照的に、腕を組み、胸を張り、スラリとした長い足でコンクリートを踏みしめて立っていた。長い黒髪をまとめたポニーテールが揺れている。
「せ、せ、せ、先輩!」
少年がどもる。
「俺、先輩の……先輩のこと、好きです! 前からずっと好きでした!」
まごうことない告白だった。顔を上げ、真正面から少女を見詰めて少年が叫ぶように言った。
「え……」
少女が戸惑いを見せる。
「……本気……よね」
少年の頷きに、彼女は照れたように頬を掻いた。そして、赤い空を仰ぐ。
「ゴメン!」
少女が頭を下げ、ポニーテールが大きく跳ねた。
「わたし、好きな人いるのよ……。ほんとにゴメン。勇気出してくれたんだよね」
「……!? ……あ、いや……。それなら……しかたないです」
少年が口だけで笑う。
「じゃぁ、その……。これからも友達でいてください」
「もちろんよ。わたしは無敵先輩だからね。これからもよろしくね、達治」
無敵先輩と名乗った彼女は明るく笑い、達治と呼んだ少年の肩を叩く。
「じゃぁ、一緒に帰る?」
無敵先輩の言葉に達治は首を横に振る。
「……い、いや。今日は……一人で帰ります」
達治の声がわずかに震えていた。
無敵先輩は少しだけ表情を曇らせたが、頷き、踵を返す。
「わかった。じゃ、また明日ね」
あっさりと言ってのけると彼女は屋上の出口へと歩き出した。
目の前で繰り広げられた告白劇に立ち尽くしていた美咲は慌てて階段を降り、彼女が通り過ぎていくのを待った。階段下にある掲示板を見るふりをして歩み去る彼女の表情を追う。無敵先輩は複雑な顔をしていた。美咲の知る限り、いつも自信に満ち溢れている顔には困惑と後悔の意識なのか、陰りが見える。
憂いを帯びた無敵先輩の瞳が美咲を一瞥した。思わず美咲の背中が跳ねる。しかし、彼女は歩みを止めることなく去っていった。
彼女の背中を見送り、美咲は大きく息を吐く。
「……なに、このタイミング……」
美咲の手の中に薄いピンクで彩られた小さな封筒がある。そこには彼女が二枚の便箋にしたためた手紙が収められていた。
蔵林達治に告白するために用意したものだ。握り締めていたため、皺だらけになり、自分の汗で湿った封筒を見て深い溜息をつく。
一ヶ月前の夜に、彼女はその手紙を書いた。胸に湧き上がる気持ちを拙い言葉に乗せようと、ペンを手に、何度も何度も書き直し、朝までかけて完成させたものだ。
美咲は蔵林達治が好きだ。好きで好きでしかたがない。もう、どうしようもない程好きだ。その思いをひたすら書いた。
手紙を渡す覚悟を決めるのに二週間。手紙を渡すタイミングを見つけるのに二週間かかった。タイミングを見つけると言いながら、ただ迷い続け、ふられることを恐れ続けていたんだということは美咲自身わかっていた。
達治とは同じクラスだが、ほとんど話したことがない。彼が自分のことを認識しているという自信すらない。手紙を渡して想いを伝え、楽になりたいという思いと、彼に拒絶される恐怖がせめぎ合い、胸を痛め続けていた。
手紙は持ち歩いていた。彼と二人きりになれたら告白しよう。彼が一人でいるところを見たら告白しようと、覚悟が決まらないまま、自分に言い聞かせていた。
そして、今日、その時は突然訪れてしまった。放課後、些細な用事で職員室に呼ばれていた美咲は、鞄を取りに教室に戻る途中で、達治が屋上へ上がっていくのを見たのだ。
達治は一人だった。美咲の友人、友香も先に帰ってしまい、今日はいない。放課後の校舎には他の生徒たちもいるだろうが、屋上にいるのは彼一人に違いなかった。
迷いはまだあった。ほとんど話したことのない彼が自分を受け入れてくれるとは思えない。
それでも、もう苦しむのは嫌だと、震えて動かない足を無理矢理動かして彼の後を追った。
そこで美咲が見たのが今の光景だった。
そこには達治と無敵先輩がいた。。
そのあだ名で呼ばれすぎているため、本名は思い出せない。しかし、生徒会長であり女子空手部の主将であり、学年トップの優秀な成績とチンピラ十人を十秒でのした武勇伝を併せ持つ彼女を人は無敵先輩と呼ぶ。同学年の生徒は無敵ちゃんと呼んでいる上、彼女自身も上機嫌で無敵先輩と名乗るため、本当の名前を忘れるのもしかたない。
そんな彼女と達治が二人きりで屋上にいる理由がわからなかった。空手部所属の達治と女子空手部の無敵先輩には繋がりがある。二人が話しているところを見たこともある。むしろ、二人が一緒にいる理由を理解したくなかった。達治が告白の言葉を口にした時には逃げ出したくなった。
「……どうして」
目頭が熱くなり、泣き出しそうになる。
気持ちを伝えようとなけなしの勇気を振り絞ったところに、酷過ぎる仕打ちだと思った。
達治に自分の気持ちが通じているとは思っていない。それでも、とにかく気持ちを伝えて、自分を見てもらわなければいけないと、弱い心を叱咤してきた。
しかし、彼はそもそも自分ではない別の人を愛していた。それがあの無敵先輩だ。かなうわけがない。その上、今、彼は目の前でふられてしまった。
どうすればいいのかわからなかった。告白できず、泣くこともできず、渡せないままの手紙を握ったまま美咲は放課後の廊下に立ち尽くす。窓の外の夕陽がまぶしかった。
……帰ろう。
教室に戻り、鞄を手にする。渡すことのできなかった手紙は破り捨てようとしたが、できなかった。しかたなく鞄の奥に押し込んでしまう。
まだ考えがまとまらないまま、美咲は人気のない廊下を歩いていく。屋上に続く階段を前を通り過ぎようとして、彼女は足を止めた。
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