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ライトノベル作家、八薙玉造のblogです。 ここでは、主に商業活動、同人活動の宣伝を行っております。
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 ライトノベルをガリガリと書かせていただいている身の上です。

メールはtamazo☆carrot.ocn.ne.jpまで。(SPAM対策で@を☆に変更しています。@に直してお送りください) 
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ぎゃー! 苦戦したー!
どうにかこうにか、夏コミ新刊の入稿完了しました。
ああ……ひと安心。

そんなわけで、告知ですが。
夏コミ参加します。

■コミックマーケット76
8月16日(日) 東ヒ-44b『玉造屋バキューン』

新刊『巫女 対 草野球』

bc701975.jpg










それにともない、いつもの如く、予告編も公開します。
以下、あらすじと予告編です。

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■あらすじ
神をその身に降ろすことで、大きな代償と共に強力な力を得る巫女たちがいる。
それ以外は、おおむねこの世界と変わりない世界。
巫女だが、巫女嫌いの眞中(まなか)あてるは、
河川敷で行なわれている小学生と中学生の試合を見ていた。
どうにも、河川敷グラウンド争奪戦という古式ゆかしい対決らしかったが、
友人の巫女、香(かおり)の乱入により、あてるはその試合に巻き込まれることになる。
小学生たちに加勢することになったあてるたちだが、その乱入は予期せぬ波乱を生むこととなり……!?
野球ものかと言うと、実のところそうでもない気がする巫女野球中篇になっております。

■予告編
夏休みのある日。
眞中(まなか)あてるが見下ろす土手の下、河川敷に作られたちょっとしたグラウンドで快音が響いた。
白球が青空に舞う。
……草野球か。
夏のむした風があてるの短い黒髪を梳き、彼女が着込んだ巫女装束の袖を揺らしていく。汗で下がった眼鏡を押し上げて、彼女は冷めた瞳でグラウンドに集まる草野球選手たちを見た。
プロでも、巫女野球でもない、学生が趣味でやっているレベルの草野球だからか、彼らが着ているユニフォームは特に目立ったデザインはしておらず、白い色に土の汚れがやけに目立つ。そんな選手たちがグラウンドを走り回っていた。
目を細め、よく見れば、試合をしている選手たちには大きな年齢差があった。
守備側のチームはどう見ても小学生だ。中にはまだ中学年ぐらいの小さな子も混ざっている。草の上に座って応援しているのもことごとく小学生だ。
対して、攻撃側のチームは明らかに中学生の集まりだった。
今しがた快音を響かせ、二塁打を放った選手などは、中学三年のあてると同い年ぐらいに見えた。もちろん、女性であるあてるよりも、ずっといい体格をしている。
小学生が勝てるわけがない。
小さく息を吐きつつ、あてるはそう思った。
あてるも昔、野球をしていたことがある。だから、小学生チームの動きも、見る限り、そんなに悪くはないのはわかる。
だが、スポーツにおいて、身体能力と経験の差は非情だ。巫女野球なら、お互いの選手が宿す神の相性や駆け引きも含まれるが、彼らがやっている普通の野球は純粋に技術の差を競うものだ。
小学生たちが無謀な試合をしているのは間違いない。
練習試合につきあってもらっているのかと思いながら、土手の下を覗き込む。
応援に混じって、小学生たちの会話が聞こえてくる。
「負けたら……。野球できなくなるよ」
「負けなきゃいいんだよ!」
「ここ使えなくなるんだよ   なんで、そんな約束しちゃったの!?」
あてるは納得した。この河川敷グラウンドの使用権を賭けての試合らしい。
もちろん、公共の場だけに、誰が使うのかを、こんな方法で決めていいわけはないが、当人たちは必死なのだろう。自由に野球をする場所があるなら、グラウンドの奪い合いなどしない。
普通のスポーツをする場所が少ないのは、スポーツの主流が巫女スポーツである弊害だろう。
さておいて、小学生に勝ち目がないのは目に見えていた。
試合はまだ二回表だ。
小学生チームの攻撃だが、中学生の投手が放つ速球に、瞬く間にアウトの山が築かれ、攻守交替する。そして、二回裏の中学生チームの攻撃でまた点差が開いていた。
それを眺めていたあてるの後ろでクラクションが鳴った。無遠慮で耳障りな音に、振り向けば、河川敷の道路に、見覚えあるトラックが停まっている。
「あてるー。何してんのさ?」
車から顔を出したのは、あてるの想像どおり八車香(やぐるま・かおり)だった。
何が楽しいのか、満面の笑みを浮かべた彼女はポニーテールにまとめた茶色の髪を振りながら、首を出す。クーラーをかけていない車内が暑いのか、巫女装束の白衣をもろ肌を脱ぐ形ではだけ、その下に着込んだ黒いティーシャツを顕わにしている。ほとんど、巫女装束である意味がない。
「おっ、おおっ! 野球じゃん。今時、河川敷草野球とか珍しい。白熱してる?」
身を乗り出すだけでは飽き足らず、トラックごと寄せてくる。
「香。危ない」
轢かれそうになり、抗議の声を出す。
「あはははは! 危なくねーってば。あたしの運転するトラックなんだよ。あたしでなけりゃ、十五でトラック転がしたりとか絶対許されないっての」
よそ見して適当にハンドルを回しながら、香は笑う。
「って、あれ? あの試合、おかしくね? というか、何あれ。なんか、中学生と小学生でやってね?」
「グラウンド争奪戦みたい」
「なんとこれまた古風な! それで、どっち勝ってんの?」
「見てのとおり」
言っていると、もう一点追加されていた。
グラウンドを見下ろす香の瞳が細くなる。怒っているわけではない。口元は明らかに笑みの形にゆがんでいた。何か思いつかなくてもいいことを思いついてしまった時の顔だ。
「よっしゃーっ!」
一声叫ぶと、香はおもむろにエンジンを吹かせ、ハンドルを回してトラックを坂へと乗り出した。
慌てて距離を取ったあてるの目の前で、鉄の塊が排気音を派手に鳴らして転がるように、坂を下っていく。
当然、グラウンドに集まる選手たちも突然のことに、呆然として、次の瞬間、悲鳴を上げて逃げ出した。
坂を滑り落ちたトラックは石灰で描かれたラインを削りながら、グラウンドに割り込んで制止する。
陽光照り返す川の上にまで砂煙が舞っていた。
遠巻きに見守る選手たちの前に、運転席から香が姿を現す。
胸を張り、腕を組み、彼女は選手たちを睥睨する。
「よっしゃ。あたしがあんたたちの味方をしてやるよ」
小学生たちを指差し、そのまま親指を立てた。
「え……? え?」
当然だが、小学生たちは唖然としている。
中学生たちも彼女が何を口走っているのか、理解できないでいた。
「さて。あたしゃ何番だい? か弱くて、あんまり力ないから、バットは軽めがいいなあ」
「いやいやいや! 何普通に話進めてんだ!」
ようやく中学生がつっこんだ。
「つか、危ねえだろうが! トラック当たったら危ねえよ! 死ぬだろ!? 常識ねえのか!」
「野球どうこうの話じゃないし、そもそも、お前、誰だ!知り合いか、ガキども!」
「え!? こっちに言うのかよ! 知るかよ! マジで誰だ! 誰か知ってるのか?」
小学生も中学生も首を振る。
彼らの訝しげな視線が香に集中した。
「バッカだなあ。あたしは八車香。よろしく。そんで、初対面だから、後でそっちも自己紹介よろしく頼むよ」
「何、当然のように言ってんだよ!」
「バカたれ! あんたこそ何言ってんのさ!」
トラックのドアを叩きながら、ほとんど逆ギレのように問い返されて、中学生がうろたえた。多分、年齢的には、香とほとんど変わらないはずだ。巫女相手なので、腰が引けているところはあるのかもしれないが、香の場合、勢いがものを言っている気もする。
そんなことを思いつつ、あてるは土手の上から香たちを見下ろしていた。
「小学生がまともにやって中学生に勝てるわけないじゃん! だから、この八車香さんが、加勢に入るのは道理ってわけさ!」
「道理じゃねえ!」
「加勢とか、頼んでないよ  」
「うっせえ! あたしを入れないと、トラックのけてやんねえもん! 絶対、のけねえもん!」
そして、地団太を踏んで我儘を言い始めた。
選手たちが敵味方集まって、相談を始める。
遠くから見ているあてるにも、なんとなく「なんかややこしいの来たしどうするよ?」「つか、ガキども、こいつ入れたらいいじゃん。試合進まないし」「押しつけんなよ! あんな変な巫女!」「じゃあ、どうすんだよ! こいつ変だよ。頭とか、服装とかも」「俺、巫女見ると、ドキドキするんだけど、どうしたらいい?」「死ねよ、ボケ」という会話が漏れ聞こえてきた。半分ぐらいは想像だが、あまり間違えていない気もする。
しばらく話し合った後、苦虫を噛み潰したような顔をした小学生が前に出た。彼はわざとらしく溜息をついた後、「じゃあ、うち入れよ。どのぐらいやれるの?」と問う。
「何言ってんのさ。あたしゃ、このとおり、体育会系に見える巫女だけど、巫女野球の選手じゃあないよ。五年ぶりってーとこかな? 前にやったのは、体育の授業で少々」
「素人じゃねえか!」
だが、抗議の声には応えず、香はトラックを邪魔にならないように、グラウンドの隅へ動かすと、あてるの方を見て、白い歯を見せた。
本能的に嫌な予感がして、あてるはその場を離れようとする。
「よっしゃ! じゃあ、子供たち! この八車香と、あそこの眞中あてるが、あんたらの味方だ! 大船に乗った気でいいよ!」
逃げるよりも早く宣言され、振り向けば、選手たちの視線が鋭く突き刺さる。
断りたかったが、香が既にどこを守備するかなど、話を始めてしまっていた。
あてるは深い溜息をつく。

◆ ◆ ◆

「よっしゃー! バッチいくぞーっ!」
声を上げた香の横を白球が転がる。
「おわあっ   しまったあ  」
内野こそ抜けたが、別段いい当たりではない。十分、受け止めて一塁打にできた打球だ。
だが、センターを守っていた香は思い切り見逃した。声を出すのに夢中で反応が遅れたというのは、あまりに酷過ぎる。
「返して。早く!」
あてるの声で、慌ててボールを追いかけ、返球したが、ランナーは三塁のベースを蹴っていた。
打たれた時、既に一塁にランナーがいたのだ。それほど足が速い相手ではなかったが、香のミスは彼が易々と三塁を回る時間を与えてしまった。
球威のない香の返球は二度のバウンドを経てなんとか、セカンドに届いたが、それはとっくに二塁に到達していた打者すらアウトにはできない。当然、返球の段階で三塁を回っていたランナーを仕留めることもできるわけなかった。
追加の一点に中学生たちのベンチが沸く。
対して、小学生チームの空気は限りなく重く、あてるは全身に突き刺さる抗議の視線を感じざるをえなかった。
「あーはは。ドンマイドンマイ。いやほら。あたしゃ、野球初心者でさ」
香の一言がさらに場を凍りつかせる。
あまりのいたたまれなさにあてるはその場を去りたくなるが、まだ中学生の攻撃は終わっていない。辛うじて2アウトを取っているものの、二塁にランナーを背負っている。
小学生チームの年少二人を押しのける形でチーム入りし、そのままこうして守備についたあてるは、バッターボックスに立っているのが何番の打者なのかもまだわからなかった。
重い空気を振り切ろうとするように、ピッチャーが大きく振りかぶり、投球する。
……ちょっと甘い。
球速はそれなりだが、直球は何の工夫もなく、まっすぐにキャッチャーのミットを目指す。
敵チームの打者がバットを振り抜いた。
快い音が響き、白球が大きく舞い上がる。
打たれたと同時に、あてるは動いていた。
あてるの守備位置はライトだ。
大きな当たりが来る可能性は投球の時点で見抜き、走り出していた。
大きく上がった白球が予測どおりライト方向へ軌跡を描く。
川に落ちたり、後方の橋を越えるほどの当たりなら、受ける術はないだろうから、多分、ホームランとして扱われるのだろうが、そこまでの勢いはない。
冷静にボールの落下地点を読み、足を止めると、ムダな力を抜いて構える。
「あてる! 絶対取れー!」
香の無責任な応援には応えない。
ボールはたいした衝撃もなく、あてるのグラブに収まった。
小学生たちから、安堵を含んだ複雑な視線が向けられているのを、あてるは肌で感じる。
香と同じように頼りない助っ人と見られるのは少々心外だった。一応、経験者なのだ。
それはそれとして、とりあえず、急場を凌ぐことはできた。
今のフライで3アウトとなり、攻守が交代する。
ボールを投げ返し、ベンチ代わりとして小学生たちが集まっている場所に向かう。
「さっすが、あてる。やー。あたしも、もうちょっとで取れた気がすんだけどなあ」
「せめて集中して」
あてるの言葉に、香は苦笑しつつ頭を掻いた。
あまり反省していないのはわかっている。
そんな香と一緒にいるあてるにも、小学生たちの視線はやはり冷たい。
点数表には、いまだ二回の裏を終えたところだというのに、既に敵チームに5点が記されている。当然だが、小学生チームはいまだ1点も取ることができていない。
諦めの表情で座り込んでいる者もいれば、苦渋を顕わに、中学生を睨んでいる者もいる。あてると香に強引に交代された低学年の子たちはいじけて砂で遊んでいた。
彼らの表情は一様に暗く、不安に染まっている。
「ところで、次のバッターって誰? あたしら、今、交代したから、何番かわからんのよね」
香が悪びれた様子もなく尋ねた。
「えっと、八車さんだっけ」
「バッカ。香って呼んでいいっての。さんはつけないと殴るけどね。あたしゃ、これでも、礼儀とかにはうるさい方で」
「……八車さんです。次」
溜息交じりに小学生チームの少年が応える。髪を短く刈り込んだ活発そうな少年だが、その顔には似合わぬうんざりとした表情が浮かんでいる。
「で、その次が眞中さん……。で、いいですよね?」
高学年らしく、歳のわりにしっかりとした物言いをする少年だが、やはりどこか疲れたような声をしていた。
中学生を相手に勝ち目薄い戦いをしている上に、突然、変な巫女に乱入されたらそうもなるだろうと、あてるは思う。
とりあえず、頷くとあてるは何本かの金属バットを握り、軽く振って具合を確かめてみた。それほど腕力があるわけではないので、それなりに軽めのバットを選ぶ。
その間に、香がバッターボックスに入る。
「よっしゃー! この八車香がまずは一点、取り返してやるよ!!」
景気よく叫ぶと、バットを振りかぶった。驚くほどに構えがなっていない。足の並びは乱れ、バットの先は意味もなくぶらぶらと揺れている。
その構えから、どうしてあれほど自信満々の顔ができるのかわからなかった。
小学生たちから諦めの吐息が漏れる。
中学生チームのピッチャーもまた、彼女を鼻で笑っていた。
そして、彼が振りかぶり、ボールを投げる。
いきなり香が構えを変えた。片手をバットの先に添え、膝を落とす。
「バント!?」
「ランナーいないのに!? あの人、そんなに足速いのか!?」
塁に出るためのセーフティバントが目的だとしても、リスクが大き過ぎる。
香の構えたバットがボールを弾く。
しかし、転がったボールの勢いは思いのほか強かった。本来なら、守備から遠い場所へ転がし、捕球までの時間を稼がなくてはならないはずが、あれでは、ピッチャーの真正面だ。
ボールに当てると同時に、香は駆け出していたが、どう考えても間に合わない。
ピッチャーは戸惑うことなく、ボールをつかみ、すぐさま一塁へと投じた。
香はまだ一塁までの距離の半分も走っていない。彼女の足は極端に遅いとは言えないが、セーフティバントを成功させられるほど速くもなければ、技術もない。
だが、一塁へ投じられたボールは、ファースト選手のミットを大きく逸れた。身体も手も最大限に伸ばすが、彼の手はボールに届かない。
「おいっ!?」
完全な悪送球に一塁手が声を上げ、その後ろにボールが転がる。距離が近かったため、それほど球威がなかったことだけは幸いだったかもしれない。
自分の投げた球が信じられないと言うように、投手が驚愕を顕わにしていた。
一塁手がボールを取りに走った隙に、香は一塁を蹴り、二塁へと走る。
香が二塁を踏んだのと、ファーストが遠くまで転がってしまっていたボールを拾ったのは、ほぼ同時だった。
彼女が二塁で止まるだろうと踏んだのか、一塁手は二塁に向き直り、ボールを構えるだけに留めた。
しかし、香は足を止めない。迷いもせず、そのまま三塁へと走っていく。
中学生チームはもとより、小学生チームからも、驚きの声が上がる。
ファーストが彼女を仕留めるために、三塁へボールを投げる。当然だが、香が走る速度よりも、彼の送球の方がはるかに速い。
だが、ボールはまたも、本来の狙いを大きく外れた。とっさに反応したサードの選手だが、グラブはボールを弾き、捕球することができない。
二度目の悪送球を尻目に、香はそのまま本塁まで回りきる。
「んな……そんなバカな!?」
誰が上げた声かわからないが、さっきからの彼らのプレイを見ていれば、ありえるはずもないミスの連続だ。中学生チームだけではなく、それを目の当たりにした小学生も驚きを隠せない。
本塁を踏んで駆け抜けた香が急停止し、唖然としている中学生チームに向き直る。
白く光る歯を剥き出して、彼女は両手を大きく上げて笑った。
「あーっはっはっは! 走り出したあたしを止められるわけがねえのよ! 誰が相手でもさ!」
彼女の言葉に、誰かが息を飲む。
「なんせ、この八車香は見てのとおりの巫女。この身に宿りし神はどこまでも続き、幾重にも別れる道を司る『八岐大神(やちまたのおおかみ)』であらせられますってーことさ! つまりは、あたしの力は絶対無敵の交通安全! 目標定めて動き出したら、どんな力も害することはできねえって寸法なんで、八車運送を皆さんよろしくお願いいたします!」
ゲラゲラと笑った上で、彼女はペコリと頭を下げた。ポニーテールがひょいと跳ねる。
「な……。そ、それって、つまりあれか」
ピッチャーが自分の手を見詰め、震わせる。
「今の悪送球は巫女の力ってことかよ! 汚ぇっ! 汚ぇぞ!」
「普通の人間相手に、何力使ってんだよ!」「実力で勝負しろや!」
罵声が上がる。
しかし、それを、彼女は正面から見返した。
「おやおやおや。何言ってるのさ、この野球ド素人のあたし様によ? 巫女が巫女の力を使うのは、当たり前! 野球やってる奴が野球うまいのを、あたしゃ、ずるいって言ってないのに」
「んな、無茶苦茶な理屈が……!」
「あーっはっはっ! んじゃあ、悔しかったら、あたしらを見事攻略することさ! いやっほー! 次はあてる、よろしくー!」
どうしたものかと困惑している小学生チームの方へ歩きつつ、香がタッチ交代と手を差し出してきたので、あてるは思わず身をかわした。
「ノリ悪っ!? あてる、そりゃないわ」
「それはこっちの台詞」
香のせいでよりいっそう悪意を伴って突き刺さる中学生たちの視線に肩を落としつつも、あてるはバットを手にバッターボックスへ向かう。

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